FASHION
出典:さらりとしたリネンシャツにはハンサムな軍モノを合わせて【本日のFUDGE GIRL-6月3日】
連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。第62回目は「リネン」について。そもそも「リネン」ってどんな素材何でしょう?ルーツはどこに?そんな謎をひも解きます。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!
【用語解説】まずは「リネン」を知ろう。
出典:大人マリンを楽しめる、《コントワー・デ・コトニエ》のリネンセーター【マイスタンダードブック】
「リネン」は、フランス語でリンネルとも呼ばれ、亜麻で作られた布地や製品のことです。亜麻は、西洋の麻ともいわれ、比較的寒い地方で栽培される、一年草の亜麻科の植物です。細く短い繊維は、強度があり、黄色がかった淡い茶色。風合いは柔らかくしなやか、吸水性、放湿性、発散性、清涼感に優れています。原産地はコーカサス(黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈と、それを取り囲む低地化らなる面積約44万km2の地域)から中近東付近といわれていますが、主要産地は北欧、特に旧ソ連や、バルト海地方の東欧圏、ベルギー、フランスなど。
ブラウス、スーツ、ジャケットなどの衣料用、寝具用、資材用など広く使われています。前述のように、糸や布地にするとに「リネン」、繊維の状態は「フラックス」とそれぞれに呼び名がついていますが、厳格な区別はなく、現在では繊維も含め、一般的に「リネン」といわれることが多くなりました。また日本では「リネン」=固く、ザラっとした、ドライな素材感の麻と思われがちですが、実は麻にはさまざまあり、「リネン」に使われる亜麻100%のものは、滑らかで肌触りがいいのが特徴です。
【歴史】「リネン」は人物が作った最古の繊維だった?!
デニムとウールリネン素材の相思相愛な組み合わせ【本日のFUDGE GIRL-1月4日】
「リネン」の歴史はたいへん長く、ルーツをたどっていくと紀元前5000~6000年ごろのエジプトにさかのぼることができ、人類が作ったもっとも古い繊維であるというのが定説です。今では比較的一般的な存在となっていますが、当初、「リネン」は‟月光で織られた生地”と呼ばれるほど、神聖なものでした。というのも、亜麻の糸は伸縮性に乏しく、ちぎらずに織るのには技術が必要。この技術を持っていたのが当時はエジプト人のみだったからです。そんなことから、綿よりも珍重され、聖職者の衣服や遺体にまつわる布として使うなど、聖性を帯びる存在に。エジプト初期王朝時代には、「リネン」のドレスが存在し、高貴な方のミイラを包むのにも「リネン」が使われていたことも確認されています。
その後、金・銀、穀物、パピルス、ロープ、陶器、彩色瓦、牛皮などと並んで、諸外国との交易の場で「リネン」も取引きされるようになり、しだいに「リネン」はヨーロッパに知られていきます。特に、フランス北端部からベルギー西部にあたるフランダース地方は、リネン産業に注力。1337年から始まったフランス100年戦争の間も、リネンの栽培を続け、「リネン」の安定的な供給地として大いに栄えていたとか。ヨーロッパ「リネン」文化の礎となる、シャツや下着、そしてナフキン、テーブルクロスを筆頭に、いわゆる「ホームリネン」「テーブルリネン」なども生み出しています。
18世紀に入ると、ヨーロッパ全域で「リネン」が栽培されるようになり、ヨーロッパにおける要な繊維と位置付けられるまでに発展しました。しかし、18世紀後半から始まった産業革命によって綿織物が普及すると、しだいに「リネン」は庶民の暮らしから少しずつ姿を消していったといいます。一方で、その上質さから上流階級の人々には高級品として愛され続け、その結果として、現代に至っても、「リネン」は価値の高い、上質な繊維であるという認識が一般的です。
日本では、明治時代から北海道で生産された時期がありましたが、現在はほぼ海外からの輸入に頼っているのが実情。‟アンティークの”とか‟刺繍入り”といった付加価値やストーリーがついた海外の「リネン」が重宝がられたりもしています。
【雑学】ヨーロッパの名家では、「リネン」は嫁入り道具のひとつ。
ヨーロッパでは、「リネン」は高級品、上質なものという考え方が浸透しているというのは、上で記しました。その証拠に、現代でも、特に由緒正しい良家などでは、家宝として代々テーブルリネンやベッドリネンが受け継がれたり、女性が結婚する際、嫁入り道具に刺しゅう入りの「リネン」をもたされたりしているそうです。ある種、彼らにとって、「リネン」は家柄を表すものであり、宝物のようなものなのでしょう。
監修:朝日 真(あさひ しん)
文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。
illustration_Sakai Maori
edit & text_Koba.A
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