CULTURE & LIFE

クリエイティブチーム Do it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第83回目のテーマは「家族愛を感じる映画」です。

Do it Theaterの郡司恵(ぐんじめぐみ)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。

朝、布団からなかなか抜け出せない季節がやってきましたね。季節の変わり目は体調を崩しやすいので、温かい飲み物片手に映画を観て、心も身体もゆったりと過ごしてみてはいかがでしょうか。
今回は、「家族愛を感じる映画」というテーマで、『コーダ あいのうた』、『湯を沸かすほどの熱い愛』、『リトル・ミス・サンシャイン』と、涙無しには観られない、家族のかたちを描いた3作品をセレクトしました。映画を観たあと家族のために何かしたくなるような、心温まる家族の物語をご紹介します。

 

耳の聴こえない家族に贈る、とっておきの歌

©︎2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

title:『コーダ あいのうた』

【story】
田舎の小さな港町で漁業を営み暮らす仲良し4人家族。両親と兄は難聴で、家族の中で1人だけ耳が聴こえるルビーは、“通訳係”として、高校に通う傍ら家業を手伝っていた。歌うことが大好きなルビーは学校で音楽の先生に見染められ、都会にある名門音楽大学へ進学することを勧められる。しかし、歌のレッスンと家業の両立は難しく、ルビーの歌声を知らない家族からは理解を得られない。葛藤の末、家族を支える事を選んだルビーだったが、娘の才能に気づいた父はとある決心をする。

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2021年公開の本作は、第94回アカデミー賞の作品賞・脚色賞・助演男優賞の3部門にノミネートされ話題になりました。アカデミーの前哨戦と言われるサンダンス映画祭で史上最多の4冠を受賞し、さらに史上最高額となる約26億円で落札されたとか。最終的に権利を勝ち取ったのはAppleで、劇場とApple+で公開されました。現在は他のサブスクでも解禁されていて、観ることができます。
原題の「CODA」は「Childlen of Deaf Adults」の略で、耳が不自由な親に育てられた健聴の子どものこと。ルビーの家族役は実際に“ろう”の俳優さんが演じているそうです。劇中ではたくさん手話のセリフが出てくるのですが、手話は素敵な言語だということに気づかされます。主人公のルビーは、普段は英語を喋るのですが、心の底から自分の気持ちを表現する場面になると自然と手話が出てくるんです。表情や手振りに彼女のありのままの感情が乗っていて、ストレートな表現が心地よく感じられます。先日、公式Twitterで公開されたルビーの歌シーンを電車に乗っている時に観たのですが、その場でボロボロ泣きました。みなさまはぜひおうちでタオル準備の上、ご鑑賞くださいませ。

 

衝撃のラスト。果てしない愛のゆくえを目撃せよ


©︎2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会

title:『湯を沸かすほどの熱い愛』

【story】
銭湯「幸の湯」を家族で営んでいる幸野家。主人の一浩が家を出て行ってから1年、銭湯は休業し、母の双葉はパートをしながら中学生の娘と暮らしていた。明るくパワフルな双葉だったが、ある日突然倒れ、末期癌であることが判明、余命宣告を受ける。その日から双葉は、生きているうちに“絶対にやっておくこと”を決め、これをやり遂げるために奔走する。夫を連れ戻し銭湯を再開させる、娘を独り立ちさせる、娘を“ある人”に会わせる。彼女が、命を削りながらも必死に動き続けるのには理由があった。

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2016年に公開され、日本アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など6部門で受賞。その年の国内映画祭でも圧倒的な評価を受け、さまざまな賞に輝きました。監督は『長いお別れ』や『浅田家!』など、心に響くヒューマンドラマを世に送り出してきた中野量太で、なんと本作が商業映画のデビュー作だとか。公開された当時、主演の宮沢りえの演技がすごい!と話題になりました。優しくて強い肝っ玉母ちゃんの生き様がカッコ良すぎて、レビューには「私もあんな母になりたい!」との声が続出。物語が進むにつれて、その時々の行動の背後に潜む母の想いが明らかになっていき、後半にもなれば涙が止まりません。宮沢りえに引けを取らないほど迫真の演技を見せてくれた杉咲花、公開当時9歳だった伊藤蒼も末恐ろしいと感じるほどの演技力で目を見張るものがあります。悲しくも愛に満ちたストーリーに、自然と勇気が湧いてくる熱い映画です。タイトルの意味がわかるラストシーンにもご注目あれ!

 

デコボコ家族の、はちゃめちゃ! ハートフルロードムービー


Illustration_YUKO MATOBA

title:『リトル・ミス・サンシャイン』

【story】
全米美少女コンテストに出場することになった9歳のオリーブ。ボロボロの黄色いミニバスに乗り込み、田舎町からカリフォルニアのコンテスト会場を目指す。母の他に同行するのは、家族に成功者メソッドを押し付けるモラハラ父親、哲学者を気取って一言も話さない兄、自殺未遂の叔父、素行の悪い祖父。そんな崩壊寸前の家族がぶつかったり、いざこざに遭遇したりしつつも、それらを乗り越える中で家族の絆を深めていくロードムービー。

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こちらも、2006年のサンダンス映画祭で絶賛され話題になった作品。第79回アカデミー賞でも2部門で受賞しています。家族全員でコンテスト会場を目指すという単純明快なストーリーなのですが、とにかく出てくるキャラのクセが強い! 終始ハプニングだらけで自分も一緒に旅をしているような感覚になり、ドキドキハラハラを楽しめます。好きな映画は?と聞かれてこの作品を挙げる人が大勢いるのも納得です。ちょっとぽっちゃり主人公のオリーブが超絶キュートでずっと観ていたくなるし、最後のいたたまれないオチもどうしようもなく愛しく思えてしまうので、何度も見たくなる、何度も繰り返し観たくなる映画です。作品に登場する黄色いワーゲンバス・タイプⅡは北米で大ヒットした車で、日本でも多くの愛好家が存在するそう。家族の関係性を象徴するかのようなボロボロのクラシックカーも作品に良い味を出してくれています。誰もが完璧じゃないし弱いところもある。それを認め合えるのが素敵な家族の形なのかも。そんな風に思わせてくれる一作です。

 

今回は、「家族愛を感じる映画」をテーマに3作品をご紹介しました。
日常の中で家族と自分の関係を考えることはあまりないですが、観終わった後に家族が当たり前にいることのありがたみを感じたり、改めて「家族とはなんだろう」と考えたりするきっかけになる映画たちです。どの作品も温かく前向きな気持ちになれるのでおすすめです。ゆったりリラックスしながら、ぜひ観てみてください。

 

『コーダ あいのうた』

監督・脚本:シアン・ヘダー
出演:エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァー、マーリー・マトリン
2021年 アメリカ映画 112分
発売・販売元:ギャガ
Blu-ray¥5280/DVD¥4180

『湯を沸かすほどの熱い愛』

脚本・監督: 中野量太
出演:宮沢りえ、杉咲 花、松坂桃李
2016年 日本映画 125分
発売元:クロックワークス
販売元:TCエンタテインメント
Blu-ray¥5280/DVD¥4180

『リトル・ミス・サンシャイン』

監督:ジョナサン・デイトン、バレリー・ファリス
出演:グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーブ・カレル
2006年 アメリカ映画 100分
Disney+で配信中

 

text :郡司恵(ぐんじめぐみ)
(Do it Theater)

学生時代にミニシアターでアルバイトをしていました。新卒でマネージャーとして映画館に勤めたのち、
現在はDo it Theaterでシアタープロデュースに携わっています。『あん』『人生フルーツ』『パターソン』など、日常にある幸せを思い出させてくれる作品が好き。
最近朝布団から出るのに1時間くらいかかってしまいます。

●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com

 

design_Koinuma Kenichi

Illustration_YUKO MATOBA,MARU

edit_Takehara Shizuka

 

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