CULTURE & LIFE
クリエイティブチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。
第61回目は「年末は泣けるミステリー映画でデトックス」がテーマです。
Do it Theaterのやべさやです。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式で紹介しています。
2021年も残りあとわずか。今年はどんな一年でしたか?映画はたくさん観れましたか?今回は、年末にゆったり観たいミステリー映画3作品『ルーム』『重力ピエロ』『ワンダーストラック』をセレクトしました。年末年始はおうちでゆったり過ごす予定という方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
Index
緊張感と解放感、そしてその先に。
(C)Element Pictures/Room Productions Inc/Channel Four Television Corporation 2015
title:『ルーム』
【story】
ジョイは長い間、ある男によって薄暗く狭い部屋に監禁されていた。そこで生まれ育った息子ジャックにとっては、閉じられた小さな部屋こそが世界の全てだった。ある日ジョイは、ジャックに外の世界を教えるため、奪われた人生を取り戻すために部屋から脱出することを決心する。
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第40回トロント国際映画祭で観客賞、第88回アカデミー賞でブリー・ラーソンが主演女優賞を受賞するなど、さまざまな映画祭で評価された本作。あらすじのとおり物語はとても衝撃的な内容で、前半は部屋の中でも外でもとにかく緊張感あるシーンの連続です。そして本作のポイントは、中盤から後半にかけての外の世界に出てからの時間。ニュースでもドラマでも、何か1つの物語に触れるとき、「その先に続く時間があるのだ」ということを思い知らされます。ジョイ役のブリー・ラーソン、ジャック役のジェイコブ・トレンブレイの芝居がとにかく素晴らしく、気が狂いそうになる感じから、環境が変化していくの戸惑いが苦しいほどに伝わってきます。ジャックが外に出て、恐怖ながらもはじめて空を見たときの解放感や感動のシーンも必見です。
想い合うほど切なく苦しい、感動ミステリー。
©2009「重力ピエロ」製作委員会
title:『重力ピエロ』
【story】
遺伝子を研究している兄の泉水と、芸術的な才能を持つ弟の春。二人の住む街では謎の連続放火事件と、火事を予見する謎のグラフィティアートが出現していた。二人は事件に踏み込んで、平穏に陽気に過ごす家族を巻き込んでいく。そして少しずつ、家族が抱える過去に近づいていくのだった。
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伊坂幸太郎さんの原作を『Laundry』などの森淳一監督が映画化した本作。連続放火やグラフィティアート、過去の事件や遺伝子など、いろいろな要素が伏線となったミステリー作品でもあり、家族の真実が明らかになっていくヒューマンドラマでもあります。加瀬亮さん演じる兄・泉水と岡田将生さん演じる弟・春の仲の良さ。そして、小日向文世さん演じる父親の三人が作り上げる家族の関係や絆が素晴らしく、三人が明るく振る舞い、互いを想い合う絆が見えれば見えるほど、苦しく切ない気持ちに……。それと同時に「家族って何だろう?」と、改めて家族と向き合いたくなる作品でもあります。「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」「楽しそうに生きていれば地球の重力なんて消してしまえるんだ」「自分自身が見たいと思う変化になりなさい」というセリフも印象的。
音と色の演出が素敵なちょっと不思議なミステリー。
Illustration_MARU
title:『ワンダーストラック』
【story】
事故で母親を失い、おばさんに引き取られた少年ベンは、母の遺品から実父につながる手がかりを見つける。そしてその50年前。両親が離婚し、厳しい父親と暮らしていた聴覚障害のローズは、憧れの女優の記事を集めたスクラップブックが宝物だった。ある日、それぞれ二人はニューヨークへと向かい…。
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ブライアン・セルズニックの小説を『キャロル』などのトッド・ヘインズ監督が映画化した本作。ベンは父を探しに、ローズは憧れの女優に会いに、異なる時代を生きる二人はそれぞれニューヨークへと旅に出ます。この作品は、モノクロとカラーの切り替わりや音の演出が独特。その面白い演出が、物語や映像に引き込まれる要素になっているように感じました。そして、子供たちが扉を開けて新たな世界を見たり、新しい何かに出会ったりするときの音楽の使い方もとても魅力的。驚きや焦り、喜びや感動といったさまざまな心の動きを、鑑賞しながら一緒に楽しめます。ベンとローズの不思議な巡り合わせと、アドベンチャー的な要素もあり、新しい一年のはじまりにピッタリのハートウォーミングな作品です。
今回は「年末は泣けるミステリー映画でデトックス」というテーマで、『ルーム』『重力ピエロ』『ワンダーストラック』の3作品をご紹介いたしました。どれもヒューマンドラマな要素が描かれている作品なので、年末年始、家族や恋人や旧友などの大切な人と一緒に鑑賞するのもおすすめです。既に観た作品でも、久し振りに鑑賞することで、捉え方や注目するポイントが変わってくることもあるので、きっとまた新鮮な気持ちで楽しめるはず。2021年を締めくくる映画の1本にいかがでしょうか?
『ルーム』
セル販売元:ハピネット・メディアマーケティング
『重力ピエロ』
販売元:TCエンタテインメント
『ワンダーストラック』
text :やべさや(Do it Theater)
音楽会社、映画会社などを経て、現在は編集・ライター・宣伝業。
好きなジャンルはヒューマン、青春、音楽系で、90年代後半~2000年代前半の邦画が大好き。
2021年は新作と旧作を同じくらい鑑賞した気がします!
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出されたしいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
Illustration_MARU
edit_Takehara Shizuka
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