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珈琲にあう飴があるってご存知ですか?
サクッ、パリッとした食感でついつい珈琲に手が伸びてしまう。舐める飴というより食べる飴。
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「ひと粒なめたら踊り出す」
そんなコンセプトの元、飴の製造販売をしているお店が飯田屋飴店です。長野県松本駅から徒歩7分、市内を流れる女鳥羽川を渡ったその先です。1796年創業、225年間愛され続ける松本を代表するお店です。
まず紹介したいのがピーナッツカップ。黒糖の中に落花生が入っていて、パリパリとした食感。これが濃いめの珈琲とよくあうんです。一度口に入れたらとまらない。
「飴とは究極の嗜好品と考えております。これはマンデリンにあうなとか思っただけでも人生豊かになるじゃないですか。そんな楽しみをしても面白いかな」と店主の伊藤さん。
左 初恋まめいた(信州りんご入)432円 中央 ピーナッツカップ黒糖486円
お次は看板商品、板状の「あめせんべい」
サクッとした食感、そして次の瞬間、口の中でとけていきます。あぁ、なんというとけ心地。そんなに早くとけていかないで〜と思ってしまうほど。定番の他、塩、和三盆、珈琲味があります。
あめせんべい 540円
飯田屋の飴は他にも、にっき飴、はっか飴、新春限定で販売される縁起菓子・福飴などがあります。福飴は12月から2月にかけて販売されます。ちょうどその時期松本ではあめ市が開催され、福飴や縁起のだるま、神輿のお練りなど多彩なイベントが行われます。
松本は空気が乾燥していて風通しが良い為、古くから木工と同時に、飴作りも盛んに行われてきました。明治時代には飴を製造しているお店が20軒を超え、日本一の生産量を誇っていた時期もあるそうです。飴造りは乾燥した気候が不可欠で、湿気が多いと作れない日もあるとのこと。そんな繊細で美しい飴を、職人ひとりひとりが手作業によって作っています。
パッケージへの愛が詰まっている
飯田屋の飴にはパッケージの魅力もあります。 二枚目の写真左、初恋まめいた(信州林檎入り)もその一つ。民芸作家、故宮田嵐村先生へのオマージュでイラストレーターの金井三和さんが製作。パッケージについてお聞きすると「りんごといえば初恋だろうと。島崎藤村の一節から、初恋に合うデザインはどういうのがいいかと考えたときに、恋はいつでもfirst loveだという裏テーマでやったんですよ。どなたでもあなた方の初恋の味を思い出してくれと。そういう感じで作っています」
この日は完売で残念ながら店頭にはありませんでしたが、松本パンダという胡麻と落花生を使用したまめいたは珈琲にも、そして、お酒のあてにもなる! おすすめの飴です。他にもナイトパンダという落花生が通常より多く入っているまめ板や、毎年期間数量限定でナイトパンダにチョコレートがかかっている飴が販売されますが、そちらも大大大スイセンです。パンダシリーズのパッケージデザインはイラストレーターの山崎美帆さんによるもの。是非店頭でみていただきたい一品です。
品があるけど気負わない、軽やかな飴
店主持ち前のフットワークの軽さから、これまでさまざまなコラボレーションや取り組みを行ってきました。変わらない安心感と新しい試みの両方が同居している。まるで、店主の人柄を表しています。
「変えないことは考えたことないんですけど、今まで通りやるということです」そんな店主の言葉から飴作りへのプライドを感じました。
9代目店主 伊藤雅之さん
日常に根付いた、寄り添った飴
多くの人にとって老舗のお店でものを買うということは、非日常になっていると思います。少し身構えてしまうような所もありますが、店主伊藤さんは日頃から「飴と日常」を謳っています。
「そもそも飴というのは伝統云々ではなく日常なんですよ。どうのこうのという品ではないんです。世の中進化している、伝統というものは下手をすれば取り残されたものとも言い換えられるんですよ。それが時代によって見直されていく。だから現時点での飴と日常でいこうじゃないかと。今を生きるということ」
伝統に執着をせず、現時点でやることをやるという姿勢を感じました。市井の生活に溶け込んで、日常づかいと同時に思わず誰かにあげたくなってしまう。味はもちろんのこと、見た目も美しい。まるで宝石のような飴です。
紙箱作家 梅川茜さん製作の紙箱 3,300円
松本の街
松本のおすすめの場所を聞いてみました。
「(カレーとおやきの店)something tenderさんですね。松本に来た人にはおすすめしています。美味しいカレー屋はたくさんあるけれど、他とは違う何かをいつも感じます。意外と考えつかないものをカレーの副菜に合わせてきてびっくりします。店主本橋さんは見たまんまの人。そして物を知っていてリスペクトできる存在です。
あとは、松本の街はどこと決めずにぶらぶら散歩すると、何か発見があると思います。身近な楽しい所かもしれないですね。それと店をやってる人たちの人柄がいいです。個店の店主さんのね」
松本おっとぼけ美術館館長 相澤和典さん製作の招き猫面 2,500円。伊藤さんセレクトの雑貨も楽しみの一つ。風情を感じるが、どことなくアバンギャルドを感じるものが多い。
秋も深まり、飴と珈琲を片手にほっと一息つける時間もお土産にできるのではないでしょうか。飴と珈琲を片手に音楽や読書、映画に浸るのもいい時間だと思います。
忙しい中でも、珈琲をテイクアウトして公園で飯田屋の飴をつまめば、現実の鬱陶しいことも一瞬忘れることができるかもしれません。
フットワークの軽さからさまざまなことに興味を持っている伊藤さん。若い頃から好きだという音楽についても聞いてみました。
「マイルス・デイビスかボブ・ディランが好きだね。マイルスはほんとかっこいいんですよ。かっこいいことしかやらない。好きな言葉があってね。”他人が何か言ってきても重要なことでなければ勝手にしやがれということにしたと。それからというもの俺の人生スムーズに転がり始めた”というマイルスの言葉があるんですよ。僕にとって、マイルス・デイビスの音楽から次に踏み出す勇気をもらうってことですね。」
この話から伊藤さんの姿勢を感じ、今後に目が離せそうにありません。何か面白いものがありそうだと期待させてくれるお店です。
「飴と日常」をテーマに現在新しいホームページを製作中とのこと。ちらっと見せていただきましたがとても可愛らしいホームページで、完成したら是非みていただけたらと思います。そして12月まで松本まちなかアートプロジェクトと連動して一点展示というのもしているので、そちらもチェックしていただければと思います。詳しくは飯田屋飴店のインスタグラムをご覧ください。
飯田屋飴店
長野県松本市大手2-4-2
不定休/9:00〜18:00
0263-32-1983
Instagram/@807iidaya
Text:眞嶋敬介
松本市在住、会社員。好なものは喫茶店と音楽と焚き火。
Instagram/@keisuke_mashima_
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