FUDGENA
ある時、それは電車に乗っている時やウィンドウショッピングをしている時、突然にやってくる。
耳から流れる音楽に身体中が熱くなり、次の瞬間にはこの出会いに喜びの舞まで踊り出しそうになるのだ。
ジャズに出会ったのは、私の人生において大きな出来事だった。
演奏中に観客と心が通じた瞬間の歓喜や、魂あふれるアーティストに出会った瞬間の喜びは何にもかえがたい、ジャズからの最高のギフトである。
ニーナ・シモンの歌声を聴いて、泣き出しそうなほどの感情の渦に巻き込まれたのは私だけではないはずだ。
多くの人に愛されてもなお、孤独に生きたジャズシンガー。
20世紀という激動の時代に、アフリカ系アメリカ人女性として生まれた彼女が世界に何を訴えたのか。
今こそ、彼女の歌やメッセージが世界に再び必要になっている。
私たち日本人も無関係ではない、彼女の歌を聴けば私たちも考えなければならないことに気づくだろう。
「自由であること」ニーナ・シモンとの出会い
1967年『I wish I knew how it would feel to be free』がニーナ・シモンによってカバーされ有名になった。
直訳すると、「自由であるってどんな気持ちだろうか」。
ニーナは1968年のインタビューで”自由”についてこう答えている。
自由とは感覚なのよ
説明するのは難しい
人を愛したことがない人にどうやって愛を説明する?
物事は説明できても、こういう感覚はそうなった時にわかる
それが”自由”よ
引用:『ニーナ・シモン 魂の歌』NetFlix
大学3年生の冬、ジャズ研のライブで何を演奏しようか曲探しをしていた私は
この曲を聞いた途端、虜になった。
爽やかな和音と軽快なリズム、そしてニーナ・シモンの魂溢れる歌声に魅了されたのだ。
すぐに次のライブで演奏すると、聴いていた友人たちが「それは何の曲だ」とたちまち集まり、この曲が彼らの心をも動かしていることに気がついた。
演奏していても、どんどん自分が熱くなっていくのを感じた。
ニーナ・シモンの魂の音楽が、多くの人の心を動かしているのを目の当たりにした瞬間だった。
そして今、世界中がこの歌の歌詞に注目するべきではないだろうか。
彼女の歌声が、多くの人を勇気付け”自由”に導いていくのを黙ってみているだけでいいのだろうか。「遠い国の出来事」ではなく、私たちも同じように感じて考えていかなければならない。
[歌詞の一部]
「分かち合えたらいいのに、私の心にある愛を
全ての垣根を取り除けたらいいのに
今も私たちを隔てている垣根を
あなたにわかってほしい
私と同じ立場になるという意味を
そうすれば理解して同意してくれるはず
人は誰もが自由になるべきだと」
引用:『ニーナ・シモン 魂の歌』NetFlix
『ニーナ・シモン 魂の歌』 彼女に何があったのか
こんにちは、ファッジーナのSAKURAです!
今回紹介する映画はネットフリックスドキュメンタリー『ニーナ・シモン 魂の歌』です。
ジャズだけではなく、ポップスやフォークなどあらゆる分野で活躍し、キング牧師らと公民権運動にも参加、自分の使命と才能に生きたニーナ・シモン。
彼女にゆかりのある人物の証言や残されたインタビュー、そしてライブ映像から彼女の素顔に迫っています。
彼女が活躍した1960年代、ベトナム戦争を皮切りにアメリカが激動し、フェミニズム運動やアフリカ系アメリカ人を中心とする公民権運動が盛んに行われました。
その世界の中で、彼女が全てのものに影響を受けアーティストとして活躍する一方、その感受性ゆえに苦悩も抱え続けていたのです。
1968年、彼女は生まれ育ったアメリカから姿を消します。
キング牧師の暗殺や、共に公民権運動を行なってきた友人の死が
国への憎しみに拍車をかけたのでしょう。
身の回りに起こる全ての物事に影響され、それを芸術という形で表現したニーナ・シモン。
友人であるキング牧師が亡くなった三日後演奏した『WHY? (THE KING OF LOVE IS DEAD)』はそんな彼女だからこそ生まれた名曲です。
公民権運動や自由を求めた彼女は、アーティストとしても過激になっていき、それが彼女を苦しめるのでした。
その後再び舞台に上がり、世界中を圧巻するまでの彼女の苦悩も含めてドキュメンタリーは追っていきます。
ニーナ・シモンについて
本名:ユニース・キャスリン・ウェイモン
1933年 アメリカ南西部ノースカロライナ州生まれ
4、5歳の頃からピアノを始め、黒人女性初のピアニストを夢に見る
お金のため、バーで演奏し始めた際に芸名をニーナ・シモンにする
その際にピアノの演奏だけでなく、歌も歌い始めのちの成功につながっていく
音楽の力を信じて
時に音楽の力は人知をはるかに超えて発揮される。
それは個人的なものだったり、多くの人を巻き込んでいたり様々な形で。
ニーナ・シモンはアーティストになるべくしてなった人物だと感じた。
彼女は感受性豊かで、身の回り全てのものに影響を受け表現していた。
というか、「生きていくためにはそうせざるを得なかった」というべきだろうか。
歌うことや音楽をすることが時に彼女を苦しめたが、
それ以上にそれらは彼女を励まし、癒し、彼女を通じて多くの人が励まされ癒された。
彼女の音楽は今日も世界の誰かの心を癒し続けている。
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