CULTURE & LIFE
連載「週末アジア」は、アジアに精通している女性たちが、おしゃれなショップやカフェ、おすすめスポット、旬のニュースなどをピックアップして、まだまだ知られていないアジアの魅力をお伝えしていきます。いますぐに旅立つことはできないけれど、また旅ができる日々を楽しみに。
みなさん、ビデオゲームはお好きですか?
わたしは、かつてはもう夢中でやったものでした。RPGでひとたび冒険に旅立てば、夜通しプレイしてしまうこともしばしば。ほかのことが手につかなくなってしまうので、社会人になってからは自主的にビデオゲームとは距離をおいてきました。が、いま、ゲームやりたいな〜!、という衝動に駆られています。
そのきっかけとなったのが、2021年6月12日にアートサイエンス・ミュージアムではじまった『Virtual Realms: Videogames Transformed』展。有名ゲームデザイナー、水口哲也さんをゲストキュレーターに迎え、ビデオゲームの世界観を21世紀のアートに進化させる試みの企画展です。
本展では、世界で活躍するゲーム開発者とメディア制作スタジオ6組がペアを組み、彼らに1つずつテーマを与えて制作された、6点の没入型インスタレーションが展示されています。
ビデオゲームから遠ざかっていたため昨今の作品に疎く、はたして楽しめるのだろうか、と不安に感じていたものの、結論から言うと、知らなくても大丈夫。ゲームに詳しくなくても、デジタルアートが好きな人なら、間違いなく楽しめます。
たとえば最初のテーマ「SYNESTHESIA(シナスタジア・共感覚)」のセクションでは、水口哲也さん率いるゲーム開発者・Enhanceと、メディアデザイナー・Rhizomatiksがコラボレートした『Rezonance(2021)』というインスタレーションが展示されています。
部屋の中央の床に円形のスクリーンが敷いてあり、観覧者は球体を手に、その上を「旅人」となって動くのです。
旅人の動きに呼応して足元のスクリーンはきらめき、手中の球体も輝きを放出。光と、脈打つようなリズミカルなビートに包まれ、自分がその一部となったかのように感じる作品です。
特に具体的なストーリーが示唆されているわけではありませんが、音楽が時に穏やかに、時に激しく壮大に変化するため、観覧者それぞれが心の中に物語を描くことができ、ビデオゲームの冒険をしているかのようなドキドキ感が味わえました。
ちなみにこのイスタレーションは、水口さんが共感覚的な体験の可能性を追求して生まれたものだそう。
一度に参加できる旅人は4人までで、私が参加した際、この4人は一緒に観覧に来ていた者同士ではなかったため、最初は非常によそよそしく、互いに距離をとって動いていました。
が、音と光を追いかけ、夢中になるうちに打ち解け、4人で動きを合わせて光を集中させたりすることもあり、作品との一体感だけでなく、旅人間での一体感というか、きっと我々は今、同じことを感じているんじゃないかな? という確信にも似た感情が芽生えました。
オンラインゲーム上でパーティ(仲間)に出会うのって、もしやこんな感じなのではないしょうか。
またテーマ「PLAY(プレイ)」のセクションでは、観覧者はトラッキングヘルメットと呼ばれる黒いヘルメットをかぶり、三角錐や四角柱など幾何学型のツールを抱えてゲームに参加します。
動き回り、ツールを振り回すと、壁に映し出される映像が連動して動く仕組み。映像内の高いところにある光の点にタッチすべく、参加者同士で協力プレイをするなど、ビデオゲームらしい遊び要素にあふれています。
と、このように、どのセクションにも「体験」が伴うため、ビデオゲームに造詣が深くなかったとしても、遊びに興じることで満喫できるはず。本展は2022年1月上旬まで開催され、会期後は世界各地を巡回予定。
お披露目地にシンガポールが選ばれたことがうれしいですし、本展が開催されるアートサイエンス・ミュージアムの別の展示室では、デジタルコンテンツを制作する集団・teamLabの常設展が展示されているのですが、アートと文化、科学技術の融合を目指す同ミュージアムらしい企画展でもあるなと思い、皆さんにぜひともおすすめしたい! と思ったので、ご紹介させていただきました。
にしても、あ〜、ゲームしたい。夜な夜な、ピコピコする日が近く訪れそうです。
『Virtual Realms: Videogames Transformed』展
会期:〜2022年1月9日
場所:アートサイエンス・ミュージアム(6 Bayfront Avenue, Singapore 018974)
時間:10:00〜19:00(最終入館時間18:00)
料金:一般チケット 大人SGD19(シンガポール居住者は大人SGD16)
WEB:https://jp.marinabaysands.com/museum/exhibitions/virtual-realms.html
text:Ayako Tada
編集&ライター。2006年、マガジンハウスに入社。雑誌『Hanako』『GINZA』編集部に勤務し、ビューティ、ファッション、グルメなどを担当。結婚を機に2016年よりシンガポールに移住。現在はフリーランスとして「Hanako.tokyo」やシンガポールのローカル誌などで活動中。
Instagram : @tadaayako
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