CULTURE & LIFE
「おしゃれな人のルームツアー」企画では、FUDGEにまつわる素敵なあの人の部屋にお邪魔して、ルームツアーを開催!「部屋」はその人の好みや性格を表す場所でもあり、普段見ることのできない場所だからこそ気になるところ。インテリアのこだわりや収納術、生活のアイデアなどをぜひ参考にして、あなたも自分だけの心地よい暮らしを叶えて!

第19回目ではフランスに移住し、ラングドック地方のミネルヴォアで家族と生活を送るエディターの八坂波奈子さんのご自宅を拝見。夫と共にワイナリー〈Pas de trois(パ・ドゥ・トロワ)〉も立ち上げた彼女が暮らすのはどんなお部屋?
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夢を追いかけ始まった、フランスでの生活

八坂さんがフランス移住をしたのは2023年夏。1年目はボルドー、2年目はリヨン郊外の町・コンドリュー、そして昨年5月からミネヴォワで生活を送っています。
「代々木上原にあるビストロ〈le cabaret(ル・キャバレ)〉で働いていた夫とフランスでワインを作るために移住を決めました。そこから現在の家に引っ越したのは、昨年ミネヴォワにぶどう畑を購入したから。最初の数ヶ月はコンドリューから毎週末車で片道7時間ほどかけてミネヴォワに通っていましたが『ぶどうを育てるために本格的にここで暮らしたい』と家を探し始めたんです」

「フランスで外国人が部屋探しをするのはとても大変」と八坂さん。不動産会社を通すと、内見さえさせてもらえないことも多いのだとか。
「それもあって、私たちはひたすら物件サイトのコンタクトページから連絡を送り続けていました。フランスでは個人間で直接やり取りをして家を借りる方法も一般的ですが、詐欺も多いため注意が必要。巧妙な手口のものも多く、内見してお金を支払ったものの実は詐欺だったという友人の話なども聞いたことがあります」

現在の家のオーナーとは偶然の出会いだったといいます。その築年数は100年以上。石造りでタイル張りの物件で、それは暑さの厳しい南仏でも快適に過ごせるためのもの。夫と0歳の子どもと八坂さんの3人で暮らしています。
部屋づくりは備え付け家具&家電とのバランスがカギ

八坂さんのお部屋づくりのインスピレーションとなるのは、旅先でふと目にした風景や、訪れた古い教会、美術館、レストランやホテルの内装。色の使い方や花の飾り方に特に影響を受けるのだとか。ただ、フランスでは家を借りる際に、家具家電付きも一般的。冷蔵庫、洗濯機、ベッドはもちろん、カトラリーや装飾品まで、八坂さんの家は家具家電付きの物件です。

「だからこそ、いちから部屋作りをするのは難しくて。もともとあった家具や家電をうまく使いつつ小物などでバランスをとって自分好みのテイストになるよう調整しています。こだわりはガラスや木のものを取り入れて、あたたかみはあるけれどほっこりしすぎないようにしているところ。また、床のタイルがすでに派手なので色選びには気をつけています。飾っているものは日本や世界を旅して見つけたものが多く、どれも思い出がありますね」
そうやってお部屋に取り入れているアイテムとして、プレゼントでもらった花器や〈TOO WOOD(トゥーウッド)〉のランタンスタンドを紹介してくれました。

「幡ヶ谷のフラワーショップ〈Forager(フォレジャー)〉の花器は、透き通ったブルーがきれいで、どんなお花を生けても受け止めてくれる器の広さが魅力です。〈TOO WOOD〉は、“あるけどない木のもの”を提案するプロダクトブランド。パナソニックのLEDランタンにフィットする設計になっていて、無機質なランタンも素敵なインテリアになるんです。その曲線が美しいですよね」
週末のフリーマーケットで宝探しを
旅先以外では、週末に開かれる〈Vide-greniers(ヴィッド・グルニエ)〉や蚤の市で掘り出し物を探すこともあるそうです。


「Vide greniersはVide=空、greniers=屋根裏部屋という意味で、家の中にある不用品を販売するフリーマーケットです。蚤の市はプロによる出店ですが、〈Vide-greniers〉は一般の方の参加が多いためあたりハズレも大きく、宝探し感覚で楽しめます。以前『うちのあばあちゃんが購入したんだよ』という古いアイスクリームメーカーを購入したこともありました。レトロな見た目とシンプルなつくりが気に入っています」
お気に入りは、階段の本棚とキッチンの小窓
好みのテイストをセンスよく散りばめている八坂さんのお気に入りスポットは「階段にある本棚」。フランス語の勉強のためにもここから本を選んで読むことが多いのだとか。

そして、キッチンにある小さな窓もお気に入りだと続けます。
「窓辺に飾ったイッタラ×ミナペルホネンのガラスバードは夫からの贈りもの。ガラスを通した光もとてもきれいで、目に入るたびうれしくなります」


そんなキッチンは、作業スペースが広々で驚きの4口コンロが付き。そのため「日本で暮らしていたときに比べて料理が楽しくなりました」と八坂さん。キッチンの白い棚にはよく使うティーポットやお弁当箱、胡椒ミル、鍋敷などが飾ってあります。
料理で季節を感じ、素材の味を噛み締める
八坂さんが食材を購入するのは、新鮮な野菜や果物がたくさん並ぶ地元のマルシェ。

「野菜や果物がとてもおいしいので素材の味を生かしたシンプルな料理ばかり。オーブンでグリルするだけでも、オリーブオイルと少しの塩をかけてサラダにするだけでも驚くほどおいしくいただけます。そこにマルシェのお気に入りのパン屋さんで買ったパンを合わせたり、チーズを加えたりしています。だんだんと、マルシェに並ぶ野菜や果物を見て季節の移ろいを感じられるようになりました」

料理をする上で欠かせないアイテムを聞くと「日本から持ってきた〈照宝〉の蒸し器とプレゼントでもらった木の胡椒ミル、数年間愛用している木工作家・山口和宏さんのカッティングボードですね。自然素材のものが好きみたいです」と八坂さん。他にも、お気に入りのアイテムとして長野県のガラス工房〈STUDIO PREPA(スタジオプレパ)〉のガラスのティーポットや、木工作家、田澤祐介さんのコーヒーキャニスターを見せてくれました。

「ティーポットは見た目もお気に入りでキッチンの棚に飾っています。端正なガラスのポットにあけびの取手が合わさりあたたかみのある印象です。同じ棚に田澤祐介さんコーヒーキャニスターも置いています。ふたにはノミで斫った跡が残り、人の手で作られた手触りを感じられるんです」

フランスの街で見つけた美味しいごはん
美味しいものを作るだけでなく、街の美味しいものにも目がない八坂さん。移住してからフランスで食べたフードメニューの中で印象に残っているものを教えてもらいました。

「ひとつは、隣に暮らすおばあちゃんの家で食べたサラダです。畑の野菜を使ったサラダで、いつも季節の花を最後にのせてくれます」


「南仏の小さな村パデルヌにあったビストロ〈cafe des sports(カフェ・デ・スポーツ〉で食べたひと皿も忘れられません。夏の夕方、テラス席でワインを飲みながらいただくのにぴったりな料理でしたね。グリュイッサンという海辺の街にあるレストラン〈La Cranquette(ラ・クランケット)〉で食べたオマール海老のグリルも美味しかった。ぷりっと弾力があり、口いっぱいに海老の甘味が広がって。堪らなくおいしかったです」

「バスク地方の港町サンジャンドリュズの〈Bocata(ボカタ)〉というカフェで食べたサンドイッチは、バンカという山間の村で採れたマスを使っていて白ワインにもぴったりでした。この地域の食材を使ったメニューというのも嬉しかったです」
マイベストアート3
また、この連載恒例のお部屋にまつわるマイベスト3も教えてもらいました。
レイモン・サヴィニャックのポスター

「フランスのポスター画家、レイモン・サヴィニャックのポスターです。夫が渡仏する際にお世話になっている先輩からいただいたもの。くまがビールを飲んでいる姿が可愛らしくてお気に入りで、リビングのよく見える位置に飾っています」
レイモン・サヴィニャックのポスター2

「こちらは夫がワイナリーで働きはじめた年にプレゼントしました。ぶどうがモチーフになっています」
尾形愛さんの壺の絵

「現代美術家・画家の尾形愛さんの作品です。フランスの新居に飾ろうと渡仏前に購入しました。さまざまな壺の絵が描かれていて、今の家の壁に似合うなと思い飾っています。早く額装したくて、木の額を探し中です」
お昼寝の合間に、魚型のビスケットとコーヒーを
エディター業やワイナリーの仕事と並行しながら、0歳児の親としても奮闘する生活では「子どものお昼寝の合間にリビングでさくっとお茶する時間が何よりもしあわせです」と八坂さん。

「お気に入りのカップでいただくお茶やコーヒーのお供は、読みかけの本とおいしいおやつ。この日のおやつはウエハースで有名なウィーンの〈Manner(マンナー)〉が販売している『Glücks-Fische』という魚型のビスケット。さくっと軽く、コーヒーに合います。カップは19世紀、フランスのカフェやビストロでコーヒーを飲むために使用されていたブリュロというカップで、肉厚でずっしりとした重みがあります。本は詩人・大崎清香さんのエッセイ集『いいことばかりは続かないとしても』。冬はこのセットを持って暖炉横のソファが定位置になります。365日、いつでもお茶していたいです」
東京とは正反対の暮らしで見つけた、しあわせの数々
八坂さんにとってミネルヴォワはどんな場所なのでしょうか。街のお気に入りのスポットも一緒に教えてくれました。

「私にとってミネルヴォワは暮らしのたのしみを教えてくれる場所です。住んでいるのは田舎の小さな集落で、車がないと生活できず夜にはイノシシがでるようなところ。東京では日々カフェやおかし屋さん、本屋さんを訪ねて街を歩き回っていたのに、いま住んでいる場所にはお店は一軒もありません。最初はないものばかりに目がいってしまっていたけれど、少しずつ自分が食べたいクッキーやケーキを焼いてみたり、パンをこねたり、お花を買う代わりに育ててみたりしているうちに、自分の手を動かし生活するよろこびを知りました。まわりにはレモネードづくりを教えてくれるおばあちゃんや摘んできた花を使ってケーキをかわいく装飾する友人など、暮らしをたのしむヒントを教えてくれる先生もたくさんいます。わたしもみんなのように季節の移ろいをたのしみ、日々の小さなしあわせを感じながら暮らしていきたいです」

「好きな場所は水辺です。車で少し走ると豊かな海や川にアクセスできます。今の時期はサンドウィッチやお弁当を持ってよく川沿いピクニックへ。そこにいる人たちもみんな家族や友人とリラックスして過ごしていて穏やかな時間を過ごせます。去年は日本から遊びに来てくれた友人家族とワインを川で冷やしてタコスランチをしたりもしました」
そしてもちろん、日本にはない大変なことも経験しているようで……。

「フランスの家には基本的にクーラーがないんです。この地域は夏は40度以上になる日もあるため、みんなにどうしているのか聞くと『夏は太陽がのぼる前に窓を開けて冷気を取り込み、太陽が登ったら鎧戸を閉める。そうすれば家の中に入ってきた冷気で1日快適に過ごせる』と教わりました。ただ、鎧戸を閉めるため外の景色が見えないのは憂鬱だし、エアコンに慣れていた体には外から取り込んだ冷気だけでは全く物足りない。去年の夏は凍らせたペットボトルを抱き抱えて眠りました……。それでも暑さで夜中に目が覚めることも多く、これからやってくる夏に今から怯えています。ほかにもAmazonが届くのに2週間かかったり、郵便物が消えたり乗る予定だった電車が急になくなったりと、日本では考えられないようなトラブルだらけです。今は昨年10月に頼んで以来一向に進まないWi-fiの契約を催促する電話を週に1度かけています」
まずは、美味しいワインを届けることが目標
最後にこれからこの地でやっていきたいことをお聞きしました。

「昨年、夫とともに〈Pas de trois(パ・ドゥ・トロワ)〉というワイナリーを立ち上げ、3ヘクタールの畑で育てたぶどうを使ったナチュラルワインをつくっています。今年から日本やフランスでの販売も始まるため、まずはおいしいワインを届けられるよう日々の畑仕事に取り組みたいです。ちなみにロゴや最初にリリースするキュベのエチケットはアーティスト・山瀬まゆみさんによるものです」
「個人では、編集業と並行してフランスで出会ったかわいい雑貨やおもちゃ、絵本を紹介する場をつくりたいと考えています。部屋づくりに関しては、子どもがもう少し大きくなったら、今は空き部屋になっている子供部屋をカラフルで楽しい空間にしたいなと妄想する日々を送っています。イームズ夫妻が子どものためにデザインした象のオブジェ『イームズエレファント』や〈Artek(アルテック)〉の子ども用スツールなど、ほしいものがたくさんあります!」

八坂波奈子
エディター、ワイナリー〈Pas de trois〉オーナー
1995年大分県生まれ。大学卒業後、出版社に入社。 月刊誌の編集部に所属したのち渡仏。独立後は旅やさんぽ、フランスのカフェやおかしをテーマに執筆中。2025年、ラングドック地方にて夫とワイナリー〈Pas de trois(パ・ドゥ・トロワ)〉を立ち上げる。
@yasapippi
text_Hasagawa Nozomi
edit_Yanase Rei
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