CULTURE & LIFE
クリエイティブチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第73回目のテーマは「雨のシーンがいい!雨の日にみたい映画」です。
Do it Theaterの洲崎真紀子(すさきまきこ)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
雨の季節がやってきました。「また雨かぁ」とため息が出てしまうこともありますが、傘を新しくしてみたり、色とりどりの紫陽花を見ながら散歩してみたり、おうち時間を充実させてみたりと自分に合った方法でこの時期を楽しみたいものですね。
さて、今回は「雨のシーンがいい!雨の日にみたい映画」をテーマに、『小さな恋のメロディ』『ラブストーリー』『シェルブールの雨傘』の三作品をセレクトしました。多彩な雨を感じられる作品たちです。ぜひ雨の季節に、チェックしてみてください。
全力で応援したくなる!少年と少女の初恋物語

Illustration_MARU
title:『小さな恋のメロディ』
【story】
ロンドンのパブリックスクールに通う少年ダニエル。引っ込み思案ながらも、自分とは対照的にやんちゃな同級生トムとは大の仲良しで、いつも一緒に遊んでいた。ある日、女子生徒がバレエの練習をしている部屋を見つけて、のぞき見したダニエルは、一人の美しい少女に心を奪われる。彼女の名前はメロディ。二人は惹かれ合うようになり、やがて結婚の約束をするが…。
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70年代のイギリス映画で、日本で大ヒットを記録した少年と少女のピュアな初恋物語です。なんといっても、ダニエルとメロディがお互いを意識しはじめたころの初々しいやりとりが、可愛らしくてたまりません。まるで大人のように愛について語り合う場面には、くすぐったい気持ちにもなります。
そんな気恥ずかしさを抱えつつ「まだまだ子どもだなぁ」と大人ぶって観ていたら、雨のシーンで急にドキっとさせられますので要注意。雨の中、落ち込むメロディの肩をそっと抱き寄せるダニエルの姿に、頼りなげだった少年の確かな成長を感じました。単なる子ども同士の恋愛ごっこだと思っていたところに差し込まれる、その大人びた雨の中のワンシーンはインパクトが強く、名シーンとの呼び声高いのも納得です。
ビージーズの名曲や街中を走るレトロなロンドンバスなど、イギリスらしさ満載なところも本作のポイントです。女の子たちが着ているギンガムチェックのシャツワンピースの制服と白のハイソックスの組み合わせも最高でした(ハイソックス世代です)。
母娘二代で紡ぐ、奇跡の純愛物語

© 2003 Cinema Service Co., Ltd., EGGFILM. Co., Ltd, All Rights Reserved
title:『ラブストーリー』
【story】
演劇部の先輩サンミンに恋する女子大学生・ジヘ。その胸の内をなかなか伝えられずにいたある日、彼女は自宅で古い木箱を発見する。中に入っていたのは、手紙の束と1冊の日記帳。興味本位で読み始めるジヘだったが、そこに綴られていたのは、母の秘めたる初恋だった…。
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主演は、大ヒット韓国ドラマ『愛の不時着』で日本でも高い人気を誇るソン・イェジン。本作では、主人公ジヘと母ジュヒの二役を見事に演じています。
過去と現代を交差して描く母娘二代の純愛ストーリーで、「雨」は過去と現代、母と娘それぞれの恋を繋ぐ共通点の一つとなっています。そのため作中たびたび雨のシーンが出てくるのですが、中でもジヘとサンミンが、一枚のジャケットをふたりで分け合うようにして雨を避けながら走るシーンは必見。キラっと光る雨粒と二人の嬉しそうな笑顔があまりに清らかで、心が洗われます…。
ネタバレになってしまうので多くは語れませんが、母ジュヒの恋の結末を知っているからこそ、現代パートの主人公ジヘの恋の結末には尚更胸が熱くなります。ラストシーンでは、過去と現代の様々なシーンが一気に思い出されて、思わず涙してしまいました。
カラフルな色使いがおしゃれ!フランスの傑作ミュージカル映画

©Ciné-Tamaris 1993
title:『シェルブールの雨傘』
【story】
フランス北西部の港町シェルブール。自動車修理工場で働く青年ギイと傘屋の娘ジュヌヴィエーヴは、結婚を誓い合った恋人同士。ところがある日、ギイのもとにアルジェリア戦争の召集令状が届いて、二人は離れ離れになってしまうのだった…。
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フランスを代表する名監督ジャック・ドゥミ(『ロシュフォールの恋人たち』ほか)が手掛けたミュージカル映画の傑作で、主演は名優カトリーヌ・ドヌーヴ(『昼顔』ほか)、音楽は巨匠ミシェル・ルグラン(『女は女である』ほか)という、語るべきことがたくさんある有名な作品ですね。
描かれているのは、戦争によって引き裂かれた男女の悲恋物語です。舞台となるシェルブールは雨の多い地域で、そのどんよりとした暗い雰囲気が、時代背景や悲しい恋の行方を暗示しているかのよう。そしてその“暗い雨の街”という演出が、ジュヌヴィエーヴとギイの儚くも美しい恋をより印象的にしています。目を引くカラフルな雨傘も引き立つし、もはや雨も名脇役です。
とても切ない物語ではありますが、セリフが一切なく歌のみで展開していくミュージカル形式のため、娯楽性が高く、悲しい話が苦手という方にもおすすめです。色使いが特徴的なファッションやインテリアは今観てもおしゃれで、古さを感じさせないあたりもさすが不朽の名作です。
今回は、「雨のシーンがいい!雨の日にみたい映画」をテーマに、『小さな恋のメロディ』『ラブストーリー』『シェルブールの雨傘』をご紹介しました。
ドキッとしたり、キュンとしたり、切なくなったり…雨のシーンといっても色々あるものですね。すでに観たことがある方も、表情豊かに描かれる雨のシーンに注目して観てみたら、新しい発見があるかもしれません。ぜひ雨の季節に、チェックしてみてください。

Illustration_MARU
『小さな恋のメロディ』
U-NEXT等で配信中
『ラブストーリー』
『シェルブールの雨傘』
Blu-ray: ¥5170
text :洲崎真紀子(すさきまきこ)(Do it Theater)
これまで興行会社やNPOで映画関連事業に携わる。現在は小さな娘と一緒に映画を楽しむ方法を模索する日々。遅ればせながら(?)、ティモシー・シャラメにハマってます。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出されたしいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
Illustration_MARU
edit_Takehara Shizuka
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