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食べたいと思うものを、つくる。
「ひとりがパンを焼き、もうひとりが洋菓子をつくっています。」
シンプルで、潔いリズムが心地よいこのキャッチコピーは、双子の店主が思いつきでつけたものだという。
出張販売からはじめ、地元高知にお店をかまえて10年以上。双子の姉妹が営むこのお店では、姉のさおりさんがパンを焼き、妹のようこさんが洋菓子をつくる。
パンを担当する姉のさおりさん(左)と、洋菓子を担当する妹のようこさん(右)は、双子の姉妹。そっくりな笑顔のふたりのお出迎えに、しあわせな気分に。
素材にこだわったベーシックなものをはじめ、南国高知の旬のフルーツを楽しめる季節限定のメニューまで。
常時20種類以上のパンと洋菓子がならぶ店内は、訪れるたびに目を輝かせてしまう。
もっちりやわらかなパンから、天然酵母をつかったハード系パン(水・土限定)まで豊富なラインナップがたのしい。
洋菓子は、定番のチーズケーキと、旬のフルーツをつかったローランが特に人気だそう。
そして、これだけの品数を製造から販売、カフェの接客や発信まで、すべてふたりきりで切り盛りしているというのが、このお店のすごいところ。
仕込みをしながらの接客は、やはり大変なこともあるけれど「わたしたちが食べたいと思うものをお客様にも食べて欲しい」そんな想いで、日々つくり続けているという。
芯の通った確かな美味しさと、ふたりだからこその世界観でつくられたお店は、県内にとどまらず、県外から訪れるファンが多くいるのも頷ける。
ふたりのせかいを、のぞき見たい
ふたりの世界観をつくるアイテムのひとつ、ターバン。
明るくカラフルな色柄のアフリカ布のターバンは、からりとした笑顔のふたりによく似合っている。そして、このターバンには、意外なルーツがあった。
お店のテーマカラーでもある緑とピンクのターバンは、お店をはじめた当初からの愛用品。
「実は、わたしは元々テキスタイルデザイナーを目指していたことがあって。美術短大を卒業して、21歳まで京都嵐山の友禅工房で働いていました。そういった経緯もあり、テキスタイルの布生地が大好きで、ターバンも沢山もっています。」と、ようこさん。
転職を決断したのは、姉のさおりさんから「いつかふたりでお店をしよう」と誘われたことがきっかけだったという。さおりさんは、小さな頃から料理が好きで、栄養専門学校を卒業し料理の道を一直線に進んでいた。
偶然にも同じく京都で働いていたふたりは、それぞれ京都のパン屋さんと洋菓子屋さんで修業を積んだのち、高知県内のカフェや雑貨店での移動販売を経て、2010年に今の場所へお店をかまえた。
お店の名前「mongomongo」は、ミクロネシア語で「食べて食べて~!」という意味なのだとか。
京都に住んでいた頃から、カフェや雑貨店をたくさん一緒に巡ってきたというふたりは、趣味や嗜好も似ているという。
アンティークの家具や照明から、お店の包装紙など細部にまで、共感し合いながら築いたふたりの独自のセンスが光っている。
「わざわざ」訪れる、たのしさを
お店は、高知市内から35分ほど離れた緑に囲まれた静かな場所にある。
のどかな空気感、南国を象徴するヤシの木、そして倉庫リノベーションの外観を目にすると、どこか遠くへ来たような旅気分に。
友人の紹介で出会ったこの物件は、元々建築会社の資材倉庫として使われていた。
はじめて物件を訪れたとき、道中の静かな農道の景色に、姉のさおりさんが心奪われ直感で決めたのだとか。
偶然通りすがることの少ないこの場所に店を構えたのは「わざわざ」訪れる非日常をたのしんでほしいという想いから。
道中の農道は山際。片側には、雑木や竹などの緑が広がっている。
お客様からは「ほんとにお店があるのか不安になっちゃいました」「お店へ来るために、今日は軽自動車で来ました」と笑って話す声もあるというが、そうしてわざわざ訪れてくれることは、ふたりのモチベーションにも繋がっているという。
カフェスペースには、外の空気を感じられるテラス席も。店内にはベンチ席や子供椅子もあり、子連れでも過ごしやすい。
また、父養寺あじさい街道や、のいち動物園・龍河洞・アンパンマンミュージアムなど、高知の名だたる観光地ともアクセスが良い立地がうれしい。
「わざわざ訪れる立地からこそ、その過程もめいっぱいたのしんでほしい」と、ふたりは話した。
高知のおいしい旬に、追い追われ。
南国高知は、美味しいフルーツの宝庫。
母親が大のフルーツ好きだったこともあり、幼いころからフルーツから旬を感じる暮らしがふたりにとって身近なものだったという。
仕入れについて尋ねると「仕入れは大体、産直に行っています。じぶんたちが食べたいと思うものを選んでいますね」
「次々と美味しそうな旬のフルーツがでてくるので、追いつかなくて。でも、旬に追われるのもたのしみのひとつです」
フルーツの話をするふたりは、少女のように無邪気な表情をみせた。
取材に伺った5月末は、小夏や苺、梅が旬。
生はもちろん、ジャムに加工し、パンに入れ込んだものや、自家製ジャムを使ったソーダも人気がある。
青梅ジャムのソーダ(写真左)と、ストロベリーベリーソーダフロート(写真右)。
毎年7月からは、自家製のフルーツシロップを使ったかき氷も登場する。
季節の果肉の自家製ジャムシロップと、自家製のアイスクリームが中にはいったかき氷は唯一無二の美味しさ。
一年を通してふたりのアンテナを通して出会えるさまざまなフルーツが楽しめることは、おいしくてたのしいお店の魅力のひとつだ。
シンプル、だからこそ。「白パン」の魅力
ふわふわ柔らかい食感の白パンは、こども受けもよい定番商品。
シンプルな白パンは、アレンジ自在。人気のミートチーズバーガーサンドなど、お店にも白パンを使ったアレンジメニューがたくさん並んでいる。
ただふたりのいちおしは、そのまま、その日のうちに。
やはり当日だからこその、やわらかさやおいしさを味わってほしいという。
他にも、縦に切り軽く焼いて、料理と一緒に。切り込みにチーズを挟んで焼く簡単アレンジもおすすめ。
そして、ふたりもよく朝食に食べるという「キャベツマヨネーズチキンのサンドイッチ」を、実際につくってみた。
サラダチキンと細かく切ったキャベツをマヨネーズで和えて、黒胡椒をかけるだけの簡単アレンジ。
素材にこだわってつくられたシンプルな白パンだからこそ、好みのアレンジをくわえたひと味ちがうおいしさも、格別なものに感じられた。
この白パンは、パンメニューのなかでは唯一オンライン購入が可能。県外からもぜひ、お取り寄せして味わってほしい。
しごとも人生も、ふたりらしく。
お店をはじめてからの10年は、とにかく必死で力んでいたが、近頃ようやく肩の力がぬけて自由になれた感覚があるという。
数年前には、子育てを優先し日曜営業をやめる決断も。上は中学生、下は2歳の子育て中のふたりを、両親がサポートしてくれているというのも、アットホームで親しみが持てる。
明るく前向きに見えるふたりだが「日々お店を営んでいると、いいときもあったりそうでないときも。たまに不安になることもあります。」と漏らした。
それでも、お客さんがきてくれて食べてくれるのがなによりうれしいと感じるのだとか。
これからについて尋ねると「とにかく続けていたい」と、口をそろえた。
大変な状況も、双子の姉妹のふたりだからこそ支え合い、補い合いながら「わたしたちらしくやっていこうか!」と、前を向けるという。
—ふたりだからできること、ふたりだからできないこと。
変化を恐れず、楽しみながらお店に立つふたりは、輝いている。
おばあちゃんになっても、ふたりのお店がつづきますようにとこころから願う、わたしのまちの自慢のお店だ。
mongomongo
add:高知県香南市野市町父養寺5−4
tel:0887-56-0250
open:11:30~17:00/イートイン12:00~16:30(L.O16:000)
定休日:日、月曜日
オンラインストア:https://mongo-mongo.stores.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/mongo_mongo_/
photograph:Mitsu Maeda(Instagram:https://www.instagram.com/mitsumae/ )
text:Ai Ishikawa(Instagram:https://www.instagram.com/aotoai.kurashi/ )
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