kiitos.
季節の移り変わりのタイミングは、変化への対応が苦手な自律神経が疲弊しがちになる要注意時期。四季に寄り添った過ごし方で1年通して元気でいられる対策を。
教えてくれたのは…
成城 松村クリニック院長 松村圭子先生
婦人科専門医。若い世代の月経トラブルから中高年の更年期障害まで、女性の一生をサポートする診療を行う。更年期に入って体調を崩したことをきっかけに、生活習慣を徹底改善。食事や睡眠など「暮らし」の見直しを提案する著書も多い。
せたがや内科・神経内科クリニック院長 久手堅司先生
内科・神経内科・頭痛・脳卒中専門医。2013年に開院。「自律神経失調外来」「気象病・天気病外来」「肩こり・首こり外来」など特殊外来を立ち上げ、多くの患者のニーズに応える。精神面だけではなく骨格から自律神経のバランスを整える方法を提唱。
元気になる整体院代表 原田賢先生
1976年生まれ。会社員時代、過度な労働から自律神経失調症を患い、その後うつ病により休職。自らの経験をもとに、自律神経専門の整体院を日本ではじめて開院。整体施術のみならず、メンタル面や栄養指導まで包括的にフォローしている。
春にしたいこと
気圧配置が毎日変わったり寒暖差が大きい日が続くなど、天気や気温の変動が激しく、生活環境も変わる春は自律神経がゆらぎやすい。
◼️新しい環境にストレスを感じるときは
春ははじまりの季節。環境が変わり、これから構築していく人間関係や仕事などには不安がつきもの。これを面倒なものだとネガティブに捉えず、人生を豊かにするチャンスだと思うとストレスが希望に変化。「仲がよい人ができたら楽しいだろうなと想像したり、知識を増やすよい機会が訪れた、スキルアップができてしあわせだと考えてみましょう」(原田先生)
◼️気圧の変化に注意
高気圧と低気圧が交互にやってきて、気候が変わりやすい春から夏にかけては最も気象病を発症やすい時期に。「女性の場合、雨が降ると頭痛やめまい、全身の倦怠感や動悸などを訴える人が増えます。生活習慣を日々正していくことが唯一の解決策なのですが、4月、5月は新生活やGW明けによくある五月病などでメンタル面も弱りやすくなります。心身のコンディションをよい状態にキープできるよう、いつも以上に気をつけましょう」(久手堅先生)
◼️気温に合わせて着脱しやすい服を選ぶ
気温差が大きいために自律神経が過剰に働き、疲労が蓄積して体調不良が起こることを寒暖差疲労と言います。「冷える朝晩はしっかり着込み、昼間、気温が高くなったらすぐに脱げるような衣類で対策を」(久手堅先生)
また、PC作業やスマートフォンの使用時間が長いと寒暖差疲労を助長することに。
◼️湿度対策に取り組む
梅雨時期のじめじめした環境に自律神経は弱いです。「湿度を感じると脳はストレスを感じます。リネン素材のものや首元や袖が開いた服を着たり、機能性インナーを活用して快適に過ごせるようにしましょう」(原田先生)
サーキュレーターをまわして室内の湿気を取るなど、住環境にも気を配って。
夏にしたいこと
暑さに負けない身体づくりが自律神経のゆらぎを穏やかに整えるカギ。自分の平熱を知り、維持できるように体温調整をしっかりと行おう。
◼️暑熱順化で汗を出せる身体づくりを
暑熱順化とは暑い環境に身体が適応すること。「本格的な暑さが訪れる前に、水分をしっかり摂りつつ、日陰の下でウォーキングをするなどして汗をかける身体になるよう整えていきましょう。汗が出やすくなって熱放散が効率よく働くことで熱中症の予防ができます」(久手堅先生)
◼️夏を楽しむみんなのSNSを見て焦るときは
他人と自分を比べて“自分もアクティブに活動すべきだ”というプレッシャーに苛まれてしまうことも多いはず。「家で過ごしている場合は“涼しいところがいちばんしあわせだ”、ひとりでいることに不安を感じたら“自分の時間を自由に楽しめて最高だ“というように視点を変えましょう。そもそもSNSを見ないという考え方もあります」(原田先生)
◼️エアコンと上手につきあう
室内でも熱中症になる危険があるのでエアコンの活用を。「室内でも水分や塩分を摂りましょう。また、羽織りものを用意するなど、直接風を浴びないようにしてください。公共施設などでは男性の体感温度に合わせた温度設定にしている場合も多いので、冷えすぎにも注意」(久手堅先生)
◼️お天気アプリを活用
台風シーズンはその年によって差があるものの7〜10月がメインに。気圧予報をチェックしつつ、健康状態を記録していき自分が不調に陥りやすい条件を把握しておくと安心。気象病が起こす痛みに着目したアプリなどをインストールするのも手。
秋にしたいこと
台風シーズンの到来や急激な気温の低下など、夏と秋の境目は自律神経がピンチに陥りやすい鬼門。メンタルケアも重要になる季節。
◼️日照時間が減ったせいかもの悲しい気分のときは
にぎやかな夏が終わると、楽しかった反動でやる気も半減し精神的なゆらぎを感じやすいもの。「そんなときは秋のよいところを見つけましょう。素晴らしい紅葉の景色を見に山へ行ったり、光景を想像するだけでも気持ちは上向きになるものです。栗やサツマイモ、サンマや戻りガツオ、柿や梨など、秋の味覚を楽しむのもおすすめです」(原田先生)
◼️炭酸系入浴剤で血行促進
「炭酸ガス入りの入浴剤を入れた38〜40°Cのお湯に15分程度首まで浸かるようにすると、ぬるめのお湯でも血管が拡がります。その結果、末梢神経の抵抗が弱まって血圧が下がるので血流が促されます。疲労回復にも効果的です」(久手堅先生)
全身の新陳代謝も活発な状態に!
◼️鼠径(そけい)部を温めだるさを緩和
身体の浅い部分に太い血管が通る鼠径部を温めれば、効率よく温かい血液が全身を巡り、冷えの症状を和らげることが可能。季節問わず行うとよいが、秋の体調管理にも活用したいもの。「座り作業が多い人には特におすすめの方法。湯たんぽやカイロを太もものつけ根あたりに置くと効果的」(松村先生)
◼️秋の食養生で疲労回復
漢方の視点で食材を選び、夏から引きずった疲れや急激な冷えによる身体への影響をカバーする食事を摂って。「消化酵素を含むヤマイモは胃腸を整えて身体を元気にします。カブも消化を助け、弱った胃腸を温めてサポート。ショウガ・ニラ・ネギなどの香味野菜も古くから漢方に用いられる食材。身体をぽかぽかに温めてくれます」(松村先生)
冬にしたいこと
意外にも、自律神経が安定しやすいと言われる季節が冬。ただし油断は禁物で、元気な状態を保つために寒さ対策は絶対に必要。
◼️忙しい年末。やることがたくさんで乗り切れるのか不安
「年末までに終わらせることにこだわらなくてよいのです。TO DOリストの中には来年に持ち越してもよい仕事も必ず存在するはずなのでスケジュールの見直しを。プライベートの予定も、体調を崩してまでやる必要などないということを自覚してください」(原田先生)
スケジュールはいつ休むかを先に組み込むようにし、心身の健康を最優先に考えて過ごそう。
◼️とにかく身体を冷やさないこと。温活に力を入れて
冷えの解消は血流のアップに直結し、細胞に酸素や栄養を行き届かせたり、老廃物や二酸化炭素を回収する流れを正常なものに。身体を温め、免疫力を高めていこう。
身体を温めたいときに効果的なのが骨盤の中央にある三角形の骨、仙骨。お尻の割れ目の上にあると覚えて。「脳や神経に栄養を運ぶなど重要な役割を担う脳脊髄液は脳から仙骨までを循環しています。この部分をカイロなどで温めると脳や全身の血流が促されるのです」(原田先生)
首や肩が冷えると、コリや頭痛などさまざまな不調が出やすくなりがち。「身体の辛さを感じたら首の後ろに蒸しタオルや温熱シートを貼って血流を促しましょう。ただし冷え性が深刻でない場合は、夜寝る前に温めすぎると体温が下がらず眠りが浅くなるので気をつけて」(久手堅先生)
illustration : Haruhi Takei edit&text : Ai Watanabe re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.23(2022年5月13日発売)より抜粋。
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