kiitos.
細く長くのトータルケアが改善の道につながる自律神経由来の不調。呼吸や姿勢、食事の仕方といった「日常」に無理なく取り入れられるアレコレを、積極的に習慣づけよう。
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教えてくれたのは…
せたがや内科・神経内科クリニック院長 久手堅司先生
内科・神経内科・頭痛・脳卒中専門医。2013年に開院。「自律神経失調外来」「気象病・天気病外来」「肩こり・首こり外来」など特殊外来を立ち上げ、多くの患者のニーズに応える。精神面だけではなく骨格から自律神経のバランスを整える方法を提唱。
呼吸と自律神経の関係
無意識下での呼吸では、吸うときは交感神経が、吐くときには副交感神経が優位に。緊張したときなど「ふぅーっ」と大きな息を吐くと気分が落ち着くのはそのため。
息を吸う→横隔膜が収縮することで、気道から肺に酸素が送られる。このとき胸郭が広がり肋骨が上がる。
息を吐く→収縮していた筋肉(横隔膜)や広がった胸郭が元に戻る作用で、息を吐くことができる。
自律神経が司るものの中で唯一、コントロールできるもの
普段から呼吸を意識して生きている人は、ほとんどいないのでは? 意識するしないに関わらず、自律神経のおかげで呼吸は自然に繰り返され、酸素を体内に取り込んで新鮮な空気を供給する運動を心臓などの器官同様、自動的に続けています。
ただし、生命維持機能を自動的に制御している自律神経系の中で唯一、自分の意思でコントロールできるのがこの“呼吸”。なぜなら、“吸って吐く”という呼吸運動を行う筋肉は、骨格筋に分類される横隔膜や外肋間筋だから。
「骨格筋は自分の意思で動かせる『運動神経』の支配を受ける筋肉。息を吸うときに横隔膜や外肋間筋が収縮すると肺を包む胸郭が広がって、肺に酸素が送り込まれます。横隔膜の収縮で行う呼吸を腹式呼吸、外肋間筋の収縮で行う呼吸を胸式呼吸と言います」(久手堅先生)
早い呼吸となる胸式呼吸は交感神経を、ゆっくりとした呼吸となる腹式呼吸は副交感神経を優位に。日中の活発に動いている時間は筋肉をしっかりと動かす胸式呼吸、夜寝るときは、ゆったりしたリラックスの腹式呼吸で身体を回復させるというのが正しい呼吸法。しかし、自律神経のバランスが乱れて交感神経が優位になっているときは、回復モードの呼吸が有効。胸がざわざわしたり不安に襲われたら、腹式呼吸を多めに取り入れるようにするとカームダウンすることが可能に。
「胸式、腹式のどちらも息は吐き切ると自然に吸い込めるので、吸うよりも吐くことに意識を向けてください。正しい呼吸方法を身につけ、深く呼吸ができるくせをつけるというのが大切です」
正しい姿勢で呼吸することを意識すれば、身体まで整う。
ストレスや緊張状態で自律神経が優位になると筋肉が硬くなり、呼吸は速く、浅くなるもの。浅い呼吸は一度に多くの酸素を取り込めないため呼吸の回数が自然と増え、酸素と二酸化酸素のガス交換の効率がダウン。結果、血液中の酸素が不足し、脳をはじめ体内環境にさまざまな悪影響を及ぼすことも。
さらに、呼吸は骨格とも密接な関係が。
「成人は1分間に12〜20回程度の呼吸をするので、平均15回とすると1日での呼吸回数は何と21,600回!
呼吸を意識すると肋骨や横隔膜などの動きが感じられて、これは骨格と呼吸が連動している証拠。1日2万回以上が、骨格と連動して動いている。ということは、悪い姿勢で呼吸をすればそれだけ、骨格にも影響を与えることになりますね。しかし逆に言えば、正しい姿勢で正しく呼吸するだけで、骨格を整えることもできる、ということになります」(久手堅先生)
呼吸が深くできるときは……
睡眠中や入浴中など副交感神経が優位になっているときは、無理なくゆったりとした腹式呼吸に。浅い呼吸のときは気づくと口呼吸になっていることが多く、リラックスしているときは無意識のうちに鼻から吸って口から吐く形ができているはず。
呼吸が浅くなるときは……
心配事や不安、ストレスを感じるとき(交感神経優位)は無意識に呼吸が浅くなっていることが。これは呼吸に必要な筋肉がこわばって硬くなりうまく動かなくなるため。呼吸の浅さは不安を増幅させる悪循環に陥ることもあるので、ゆっくりと腹式呼吸をすることで副交感神経を優位にして落ち着きを取り戻したいもの。同様に猫背になることでも、胸やお腹が圧迫されて浅い呼吸になりやすく。特に長時間のパソコンを使用するときなどは、集中して同じ姿勢になりがち。定期的に休憩を取り、ストレッチなどして身体をゆるめて。
深い呼吸の仕方をマスターしよう
寝る姿勢が難しいときは、座ったままでも行える、簡単な深呼吸のエクササイズ。「吸う」より「吐く」を意識すると、自然に深く吸うことが可能に。
【腹式】
①おへそのあたりに手を添える。お腹を膨らませるように意識しながら、3秒かけて鼻から軽く息を吸い、3秒止める。
②お腹と背中がくっつくようなイメージでお腹を凹ませるように意識しながら、6秒かけて口から息を吐き切る。
【胸式】
①仰向けになってひざを立て、肋骨の下に手を添える。肋骨が上がるのを意識しながら、3秒かけて鼻から軽く息を吸い、3秒止める。
②肋骨が下がるのを意識しながら、6秒かけて口から息を吐き切る。
illustration : SIMASIMA DESIGN edit&text : Kei Yoshida re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.23(2022年5月13日発売)より抜粋。
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