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「食品添加物は身体によくない」とさまざまなメディアで頻繁に言われているけれど、はたして本当にそうなのだろうか? 食に関するさまざまな情報があふれる時代。翻弄されないためにも、正しい知識を身につけておきたい。そのうえで、自分にとって必要なものと不必要なものを見極めよう。
甘味料や着色料など、食品添加物にはさまざまな種類が。「食品添加物=不要なもの」だと考える前に、まずは使用の目的を知りましょう。
食品添加物を使用するその目的って何だろう?
豆腐にはにがり、中華麺にはかんすいのように、加工食品をつくるうえで食品添加物は欠かせない存在。ここではその種類と用途について解説します。
「まずはじめに“酸味料”から解説します。レモンや梅干しの酸っぱさは“クエン酸”、ヨーグルトやチーズの酸味は“乳酸”によるもの。もともと食品に含まれているこれらの酸味成分を、醗酵や化学合成によって製造したものが“酸味料”です。
次に“調整剤”。例えばいちごジャムの原料となるいちごは、熟成度によってpHが異なるため、ジャムの色味が原料ごとに変化しがち。安定した色味のいちごジャムをつくるために、調整剤を使用します。酸味料として使用される“クエン酸”や“乳酸”、カルシウム強化に使用される“炭酸カルシウム”、重曹として知られる“炭酸水素カルシウム”などで、酸性・アルカリ性の度合いを調整します。
最後に“防かび剤”。外国産のオレンジやバナナなどの果物には、長期間の輸送貯蔵中にカビが繁殖しないように、防かび剤が使われます。防かび剤と聞くと、『食べても大丈夫?』と不安になりますよね。チアベンダゾールという防かび剤を例に挙げると、1日の摂取許容量は食品衛生法で、0.1mg/kg/日とされていますが、研究機関の調査によると、実際に1日に摂取している量は0.000001mg/kg/日との報告が(※)。可食部への残留がほとんど認められないことからこの調査結果になったと考えられます」
※地方衛生研究所「酸化防止剤、防かび剤等の摂取量調査の結果について」(平成29年度)
ほかには、ビタミン・ミネラル・アミノ酸など栄養素補助のための“栄養強化剤”、水と油を均一にする“乳化剤”、苦味をプラスする“苦味料”、カット野菜などの食中毒予防に使用される“殺菌剤”などがあります。
たとえ安全だとしても自由に使用できない食品添加物
品質が確保され、安全性が確認されている食品添加物であっても、多量に使用された場合や、異なる食品から同じ食品添加物を摂取した場合は、1日の摂取許容量を超える可能性もあります。いろいろな食品を摂取しても、添加物の合計が1日の摂取許容量を超えないように、使用できる種類、使用量、使用目的、使用方法などが制限されているのです。
食品添加物の種類と特徴
①甘味料
健康志向の高まりとともに、砂糖の数百倍の甘味度を持つ甘味料のニーズも高まっていることから、さまざまな甘味料が、低カロリーの清涼飲料水や加工食品などに活用されています。指定添加物として開発されている甘味料の成分は、そのほとんどが身体に吸収されずに、尿や便とともに排泄されます。
指定添加物
- アセスルファムカリウム
- スクラロース
- アスパルテーム
- ネオテーム
など
既存添加物
- ラカンカ抽出物
- L-アラビノース
- カンゾウ抽出物
- ステビア抽出物
など
甘味料はごく少量で甘みを出すことができるため、砂糖を控えたい人向けの清涼飲料水やお菓子などに使用されます。甘味料によってはほんのり苦味があることから、複数を混ぜることで、より砂糖の味に近づけています。
②着色料
食品は加熱処理を行うと、変色したり褐色に変化したりするため、本来の色を復元するために着色料が使用されます。指定添加物に分類されている、いわゆる合成着色料は、大量に使うと濃すぎて商品になりません。食品重量の1/10000〜1/200000程度と、ごく微量しか使用されていないのです。
指定添加物
- β-カロチン
- 食用赤色2号
- リボフラビン
- β-アポ-8’-カロテナール
など
既存添加物
- アナトー色素
- ウコン色素
- カラメルI〜IV
- クチナシ黄色素
など
近年市販されている加工食品において、着色料は既存添加物を使用することが主流になっています。代表的なものが上の通り。栗きんとんなど、加熱してそのままだと黒ずんでしまうがクチナシ色素を使用することによって、鮮やかな色味をキープ。
③保存料
保存料は、食品中のカビや細菌といった微生物の繁殖を抑え、食中毒を予防したり、腐敗を防いで保存性を高めたりするもの。フードロス削減にもひと役買っています。指定添加物は以下に示したものが一般的。体内に入った後は、呼気から二酸化炭素として排泄されたり、尿や便と一緒に排泄されます。
指定添加物
- 安息香酸
- ソルビン酸
- プロピオン酸
- デヒドロ酢酸
など
既存添加物
- カワラヨモギ抽出物
- ペクチン分解物
- しらこたん白抽出物
- Ε-ポリリシン
「保存料無添加」と表示されている商品において、保存料は使用せず食品添加物の酸味料を入れて、保存性を高めている場合があります。つまり、保存料は使用しないけれど、同じ添加物である酸味料の量がアップするという、逆転現象が起きていることも。
④増粘剤・安定剤・ゲル化剤・粘料
食品になめらかさを与えたり粘り気をつけるためのもので、ゼリーやプリン、タレやジャムなどに使用。既存添加物を使用することが多い。商品への表示は「増粘剤(グァーガム)」のように用途と物質名を記載。ただし2種類以上使用した場合は、「増粘多糖類」と、物質名は省略されます。
指定添加物
- カルボキシメチル
- セルロースナトリウム
- カゼインナトリウム
- アルギン酸ナトリウム
など
既存添加物
- グァーガム(種子由来)
- キサンタンガム(微生物由来)
- ペクチン(植物由来)
- キトサン(甲殻由来)
グァーガムは増粘剤として、アイスクリーム・スープ・ソースなどに広く使用されている既存添加物。インドやパキスタン地方に自生する、グァーというマメ科の植物が原料となっており、種子の胚乳部分を粉砕してつくられます。
⑤調味料
食品にうま味を与えるために使用。アミノ酸系、核酸系、有機酸系、無機塩類があり、L-グルタミン酸ナトリウムは昆布、5’-イノシン酸二ナトリウムは鰹節、5’-グアニル酸二ナトリウムはしいたけ、コハク酸は貝類と同じうま味成分を持ちます。広く一般に知られているグルタミン酸は、サトウキビの醗酵により製造されます。
指定添加物
- L-グルタミン酸ナトリウム(アミノ酸系)
- 5’-イノシン酸二ナトリウム
- 5’-グアニル酸二ナトリウム(ともに核酸系)
- コハク酸(有機酸系)
- 塩化カリウム(無機塩類)
既存添加物
- タウリン
- L-ロイシン
- L-アスパラギン
- 粗製海水塩化カリウム
タンパク質は、約20種類のアミノ酸が結合したもので、人間の身体のおよそ20%を占める組成する成分であるとともに、さまざまな食品の成分となっています。タンパク質に味はないものの、アミノ酸になるとさまざまな味が現れます。
⑥発色剤
生肉を調理したり放置すると、筋肉中の赤い色素であるミオグロビンやヘモグロビンが酸化して褐色に変化。発色剤はこれらに作用して、肉が本来持つ色味を安定化させてくれます。また、ボツリヌス菌による食中毒を防ぐ役割も。ハムやソーセージ、すじこやたらこなどの色調や風味の改善にも使用。
指定添加物
- 亜硝酸ナトリウム
- 硝酸カリウム
- 硝酸ナトリウム
古来よりハムやソーセージに岩塩を使用すると、風味や色がよくなることが知られていました。これは、岩塩に含まれる硝酸塩が食肉中の微生物と反応して亜硝酸塩に変化し、肉の色味を保ち保存性を高めるため。このことから、発色剤として亜硝酸ナトリウムが使われるように。
⑦漂白剤
食品の色調を整えるために使用されるもので、かんぴょうや水あめなどを白くしたり、フキやサクランボを着色する前に使用したりします。酸化型と還元型の2種類があり、酸化型は亜塩素酸ナトリウムで、カット野菜の殺菌にも使われ、食品の完成前に分解または除去することが使用の条件になっています。
指定添加物
- 亜塩素酸ナトリウム
- 亜硫酸ナトリウム
- 二酸化硫黄
など
かんぴょうや水あめの漂白に用いられることが多い、還元型漂白剤。亜硫酸ナトリウムや二酸化硫黄がこれにあたります。酸化防止・変色防止・保存・防かびなどの効果も あることから、酸化防止剤(亜硫酸塩)と表示されていることもあります。
⑧酸化防止剤
食品が変質するのは、微生物による腐敗と酸素による酸化によるもの。一度油で揚げたものは、油が酸化すると食品中に過酸化物質やアルデヒドなどの有害物質が生じ、生鮮食品は皮を剥くと変色。酸化防止剤には、油脂の酸化防止と食品の色素の酸化(変色)防止の役割があるのです。
指定添加物
- ビタミンE(dl-α-トコフェロールなど)
- ビタミンC(L-アルコルビン酸など)
など
既存添加物
- カテキン
- カンゾウ抽出物
- コメヌカ抽出物
- ヤマモモ抽出物
水溶性の酸化防止剤として使われるのが、ビタミンCとして知られる、L-アスコルビン酸。変色防止の目的で使用されるほか、栄養強化剤として、サプリメントにも使われており、食品添加物に使用されるものもサプリメントに使用されるものも成分は同じ。
教えてくれたのは……
武庫川女子大学 食物栄養科学部教授 財団法人日本食品化学 研究振興財団評議委員
松浦寿喜 先生
薬学博士・薬剤師。大手製薬会社に研究員として勤務後、現職。食品添加物や食品成分について調査・研究する、食品衛生学のエキスパート。「MOTTO!食品衛生」と題したウェブサイトで情報を公開している。
illustration:Fumie Maejima edit&text:Masayo Okegawa re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.21(2021年9月21日発売)より抜粋。
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