立ったり座ったりするだけなのに疲れを感じるのはなぜだろう。それは、万有引力と地球の自転による遠心力により、負荷をかけ続ける重力という存在のせい。身近にあるこの力とうまくつき合い、軽やかな身体を手に入れよう。

 

毎日のルーティンもラクして乗り切ろう！

ルーティンの一つひとつは激しい動作でなくても、毎日行えばその分疲れも蓄積するもの。仕事や趣味、おっくうになりがちな家事の時間も、疲れない身体の使い方で切り抜けよう。

SPECIAL TEACHER

メディカルトレーナー
夏嶋 隆先生
動作解析専門家。バレーボール実業団チームの指導者を経た後、トレーナーに。サッカー元日本代表の中山雅史氏をはじめとし、多くのアスリートのメディカルサポートを行い、パフォーマンスを向上させた実績を持つ。

RECOMMENDED BOOKS

『疲れないカラダ大図鑑』 夏嶋 隆（アスコム）

動作解析とは
人間の動作を観察・記録して、運動学や解剖学、物理学に沿った“人体構造に合った正しい動作”を検証し、スポーツの現場やリハビリテーションなどに還元していく研究のこと。日常生活の中で行う、家事や仕事、効率的な身体の休め方などにも生かすことができる。

 

1. 自転車通勤が快適に

サドルの後方に左右の坐骨で座り、自転車を傾けたとき、片足がつく程度の高さに設定。かつ、ハンドルを握る手はまっすぐに。腰を丸め、骨盤を立てている姿勢になるので身体が安定し、足首も鋭角になりにくくなるため、重たいと感じていたペダルもスイスイこげるように！

2. 電車で座席に座れなくても平気

吊り革をしっかり持たないことで、立ったままでもラクラク移動。吊り革をつかむとき、手首を曲げながら輪をつかむため腕の筋肉を緊張させてしまいます。中指と薬指の2本を輪に引っ掛ければ自然に手首が伸びるので、無駄な力を使わずに済みます。

3. たくさん買い物しても歩いて帰れる

重い荷物を運ぶときは、荷物を持った手を身体の後ろのお尻あたりに持っていくのがコツ。さらに腕は胴体に密着させ、手首は伸ばしたままの状態をキープ。こうすることで上から見たときの面積が小さくなり、重力のダメージを軽減することが可能。

4. 乗り物の強い揺れにも負けない

電車がカーブを曲がるときや急ブレーキが踏まれたとき、バランスを崩しそうになるのを回避。左から右側への揺れを感じたら、右足を倒れかけている右方向に開き、つま先も右側に向けます。このとき、右足の足首が鈍角になっていればOK。

5. 長時間のPC作業もOK

スタンディングワークの場合は「本当に正しい？「立つ・座る・歩く」動作｜ラクする身体の使い方③」の疲れない立ち方を維持したまま、前かがみにならないようデスクの高さを調整。キーボードを打つときに手首が曲がらない角度になるか確認を。長時間同じ姿勢でいないことも疲労を溜めないコツなので、座ることもおりまぜながら行いましょう。

6. 大量の伝票作業もお任せ

書き仕事で疲れるのは、手首を甲側に曲げた状態で、前傾姿勢でペン先を覗き込んでいるせい。小指の骨でペンを持つ手を支え（小指の下の膨らみを紙につけない）、手首を伸ばし、前傾しなくてもペン先が見えるようにすれば、伝票作業も苦にならない！

7. 硬い食材もすんなり切れる

右利きの場合は左足を前に出し、キッチン台に対して身体を斜めにします。遠位置を使うことを意識しながら、右肩から動かすイメージで包丁を使うと硬い食材も簡単にカット。ひざを柔軟に動かし、重力のパワーも利用しながら行いましょう。

8. 食器洗いも楽しくなった

食器を持つ位置を身体の正面から横にずらし、骨盤の前あたりで洗うイメージを持ちます。右利きの場合スポンジを持つ右手が近位置で遠位置は左のお尻。近位置の手を動かすだけでなく、遠位置のお尻を揺らしたり軽く振ることで疲れ知らずに。

9. 庭仕事にも没頭できる

正しいしゃがみ方をガーデニングの時間に活用。立っているときに腰を少し丸くするよう意識すると、自然に骨盤が後傾する。この状態で腰を下ろすと、地面を足の裏全体でキャッチできるので足の筋肉を軽減した姿勢をキープできます。

10. ビンの蓋も力まず開けられる

ファイティングポーズをとり、右利きの場合は左手でビンの蓋を持ち、右手で本体を持ちます。両ひじを胴体につけ、左手を腰骨のあたりに置き、そのままひざを曲げてしゃがみ重心を下に集めて。それと同時に左手は固定したまま、本体側を回します。左手は支点、右手は力点になる梃子の原理に則ると、作用点である蓋に力が入りやすくなるので試してみましょう。

11. 洗濯物干しも時短で完了

洗濯カゴにファイティングポーズでできるだけ近づき、身体の斜め前に置きます。ひざを曲げると、腕を伸ばさずとも洗濯物を取り出せる姿勢がベスト。洗濯物は垂直に持ち上げ、片方の足を軸にして身体を物干しの方に反転させながら干せば移動の手間も省け、効率よく作業ができます。

12. お気に入り動画も連続再生

のんびりYouTubeで動画鑑賞をするときは、座椅子の背もたれをなるべく垂直に立てて深く腰掛けよう。リクライニングする場合は、耳・腰・骨盤が斜め一直線になる姿勢をキープ。浅く座って背もたれによりかかると、腰に負担をかけてしまうので気をつけて。

TIPS① ブラジャーの紐がゆるいと腰痛に？

ブラジャーの肩紐がゆるいまま身につけていると、腰痛を引き起こす原因になることがあると言います。これにはセルフチェックできるポイントがあり、ワキの下から指3本分ほど内側にある胸のつけ根の靭帯、クーパー靭帯を押してみるとわかります。強い痛みを感じたなら、クーパー靭帯が弱り、乳房を支えることができなくなっている可能性が。その重みで身体に負荷を与えてしまうのです。下着のフィッティングをマメに行うのも、ボディメンテナンスにおいて大切。

TIPS② 噛みグセを直して身体のバランスを整えよう

人間の顎関節の動きは、口周辺だけでなく、かなり広い範囲の筋肉と連動。そのため、噛みグセにより左右に差が生じると、偏頭痛・肩こり・腰痛などの原因になることも。5秒間顔を上に向け直立したとき、噛みグセがあると左右の腕の長さが異なります。腕が短い方の側の奥歯で思い切り割り箸を噛めば、矯正できるので試してみて。

illustration : Nobuco Uemura　edit&text : Ai Watanabe　re-edit:Yuri Iwata［press lab］
※kiitos. vol.21（2021年11月7発売）より抜粋。

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