kiitos.
太陽の季節がやってきて、じんわりと汗ばむ私たちの身体。汗の粒の中には、どんな秘密が隠されているのだろう?ともすると疎まれがちなこの存在は、人類が最も発達させてきた崇高な体温調節システム。さらには心と身体の映し鏡である汗についていま向き合ってみよう。
汗のかき方には女性特有のものも。それを学んでおけば、心身の健康を維持する軸になります。年齢を重ねるにつれ移ろう発汗の特徴を掴み、ライフステージごとの対策を考えてみましょう。
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女性の汗の量は男性より少ないと言われるその理由は?
男性と女性を比較したとき、身体のどの部位においても女性の汗の量が少ないのだそう。これには、体液量の性差が深く関係していると考えられています。
筋肉は脂肪より水分を多く含むため、男性よりも筋肉量が少なく脂肪量の多い女性は、体液量が少なくなります。そのため、なるべく汗を出さずに皮膚血管を拡張させて熱を放散させる体温調節機能により依存していると考えられています。発汗能力は思春期以降に大きな性差が見られることからも、性ホルモンが発汗能力に影響することがうかがわれます。男性ホルモンは発汗反応を促進的に、女性ホルモンは抑制的にする働きを担っています。汗腺のサイズを比べても違いがあり、男性よりも汗腺が小さい女性は、同じ体温における発汗量は男性より少ないのです。
女性ホルモンの分泌リズムにより発汗の仕方が変わる
女性には、男性にはない熱放散能力が変化 るバイオリズムがあります。女性ホルモンの分泌が高まる黄体期(排卵後、月経がはじまるまでの時期)には、発汗能力も皮膚血管を拡張して熱を放散する能力も低下。これは、発汗を抑制する女性ホルモンの濃度が高くなるため。黄体期には体温が上昇するとともに、熱を放散する能力も低下するという現象が起こります。
ただし、長期間の運動トレーニングは女性ホルモン分泌を抑制するため、日常的に運動している女性の場合だと、黄体期であっても熱放散能力は一定に保たれます。しかしながら、女性がどんなに長期的に運動を行っても、運動トレーニングを継続した男性のような発達した汗腺を獲得することはできず、発汗機能の性差はやはり埋まらないままなのです。
汗の量は一生を通して変化していく
「汗腺には眠っているものと働いているものがあります。平均して2歳から3歳くらいまでの間に汗の分泌能力がある能動汗腺の数が決定し、それは生涯変わりません」(井上先生)。よく子どもは汗かきだと言われるが、思春期まで汗腺の能力は未熟。大人と比較したとき同一体表面積あたりでも子どもの発汗量が少なく、皮膚血管の拡張により依存して熱を放散しています。
産後は女性ホルモンの急激な低下に伴い、人によっては更年期障害のような状態に陥り、汗腺機能の調節がうまくいかなくなるケースがあります。そして、発汗能力が衰えはじめるターニングポイントとなるのが40歳頃。「汗って何者?身体の機能を守る汗のメカニズムを紹介|汗って何者?①」で説明したように、脚からその症状が現れはじめます。閉経期を過ぎて高齢になると、もともと開きがあった男女の汗腺機能の能力はその差を縮めていきます。
◾️2〜3歳頃
体温調節に関係するエクリン汗腺は、子どもの頃は未発達。発汗する機会に影響され、能動汗腺数が決定されると考えられている。
◾️青春期
平均して15〜20歳までの間に発汗能力のピークを迎える。
◾️出産後
出産前と比較し出産後に女性ホルモンが激減すると、急に顔が赤くなったり滝のような汗をかくホットフラッシュに近い症状が出る場合も。
◾️40歳頃
20歳くらいから大きな変化がなかった発汗能力が下降。ただし、日常的に運動を取り入れて発汗機会を保てば、能力の低下はゆるやかなものにできる。
◾️更年期
エストロゲンの減少により、血管の収縮や拡張に携わる自律神経が乱れ、多汗などの症状を引き起こす場合も。ただし、個人差がある。
◾️老年期
汗腺の萎縮に伴い発汗能力は大幅に減少。皮膚の温度センサーや体温調節中枢の感度も鈍り、さらに体内の水分量も減り、汗をかきにくくなる。
教えてくれたのは…
「大阪国際大学」 スポーツ行動学科教授・医学博士 井上芳光先生
スポーツ生理学、温熱生理学、生理人類学の分野で発汗について研究。雑誌やテレビで、汗にまつわる企画の監修も手がける。環境省『熱中症環境 保健マニュアル2018』編集委員。著書に『体温II: 体温調節システムとその適応』(ナップ)がある。
[関連記事]
汗って何者?身体の機能を守る汗のメカニズムを紹介|汗って何者?①
汗には3タイプの出方がある!汗の仕組みを紹介|汗って何者?②
いい汗と悪い汗、それぞれが身体にもたらすもの|汗って何者?③
illustration : Misa Itoi edit&text : Ai Watanabe re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.20(2021年8月6発売)より抜粋。
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