
雨が降ったら、本屋さんに行こう。なんだか心が落ち着くこんな日こそ、書店へ出向いて特別な一冊と向き合いたい。雨音をBGMに、窓の向こうの雨粒で目を休めながら、ゆっくり本と向き合う時間は何より贅沢な時間だと思うんだ。今回は雨の日にこそ訪れたい、個性あふれるブックストア6店をご紹介。

今年2月、南阿佐ヶ谷にオープンした5坪ほどの小さなブックストア。カルチャーやアートを通して、社会や政治をもっと身近に感じられる場を目指すプロジェクト「Candlelight(キャンドルライト)」が手がけているお店です。棚には社会学やフェミニズム、アート、小説、絵本まで、ジャンルを横断した本がずらり。
並ぶ本を見て、「少し難しそう」と感じる人もいるかもしれません。でも、いつもより心穏やかになる雨の日ならそんな一冊ともじっくり向き合えるはず。試し読みも大歓迎だそうなので、気軽に訪れてみて。

せっかくなら、大切な一冊にオリジナルのブックカバーを。イラストレーター・Yasuko Todaさんが同店のイベントフライヤーのために描いてきた作品を再構成したデザインは、この店で本を選んだ日の気持ちまでそっと包み込んでくれるはず。

『コンバヒーリバー・コレクティヴ宣言』
キアンガ=ヤマッタ・テイラー 編著
〈キャンドルライト〉を廣松直人さんと共同で営むアリサさんのおすすめは、ブラックフェミニズムを代表する声明をはじめ、社会や自分自身を見つめ直すための言葉が収められた一冊。
「60〜70年代の革命的ブラックフェミニスト集団『コンバヒーリバー・コレクティヴ』を取り上げた読み物です。少しハードルが高い内容に感じるかもしれませんが、雨の日って立ち止まって、いろいろ考えてみたくなるタイミングだと思うんです。そんな時にぜひ手に取ってほしくて。“自分とは遠い話”と思っていたことにも、少しだけ目を向けるきっかけになればうれしいです。」
〈Candlelight〉
住所:東京都杉並区成田東5丁目35-7
営業時間:13:00〜20:00
定休日:火・木
Instagram:@_candlelight_pj_

三軒茶屋駅から歩いて5分ほど。本屋、ギャラリー、カフェ、出版社という4つの顔を持つ〈twililight(トワイライライト)〉は、本と一緒についつい長居したくなる場所。店内には、店主がセレクトしたさまざまなジャンルの新刊や、同店から出版されたオリジナルブックが並びます。
購入した本は、カフェスペースでドリンクやフードとともに楽しめます。雨の日に腰をかけてほしいのが、カフェスペースの窓際の席。窓をつたう雨粒をぼんやり眺めながらページをめくっていると、不思議と心が落ち着きます。いつもより少しだけ、物語の世界へ深く入り込めそうです。

ページをめくる手を少し休めたら、名物「たそがれのクリームソーダ」を。大窓の外に広がる雨模様とグラスの中の淡いピンク色がとってもお似合い。読書の時間にやさしく彩りを添えてくれます。

『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』
坂口涼太郎 著
店主の熊谷充紘さんが教えてくれたのは、俳優・坂口涼太郎さんの初エッセイ。「自分の弱さや迷いまでまるごと肯定してくれるような一冊です。雨の日って、少し気持ちが内側に向く日でもあると思うんです。そんな日に坂口さんの言葉に触れると、自分にも周りの人にも、少しやさしくなれる気がします。本書に出ててくる、“あきらめる”ことをポジティブに捉えた“らめ活”の話。ぜひ知ってほしいです。」
〈twililight〉
住所:東京都世田谷区太子堂4丁目28−10 3F
営業時間:12:00〜21:00
定休日:火・水
Instagram:@twililight

吉祥寺の閑静な住宅街に佇む〈book obscura〉は、写真集を専門に扱う本屋さんです。店内には、国内外から仕入れた古書や新刊、ZINEなどが並び、ページをめくりながら、その一枚に込められた空気やアーティストのまなざしに思いを巡らせることができます。
脳や心が疲れて活字を読む気分ではない時に、マイナスイオンが出ているような自然風景写真で編まれた写真集を迎えれば、雨の日でもお家の中で簡単に森林浴が出来るかもしれません。

店主の黒崎由衣さんにとって、写真集は“読みもの”なんだそう。写真そのものについて語る人もいれば、写真だけで感情や思想を伝えてくる人もいて、言葉数は少いけれどもグラフィックデザインのように美意識を話し出す人もいるのだとか。写真だけで表現する写真家という人間がこれまで何をしでかして来たのかと、人類学と宗教学の観点から写真を読み解く研究者に。現在は〈book obscura〉で本屋業の傍ら写真集にまつわるワークショップも開いているのだとか。
「写真集は文章を読む本とは少し違って、開くたびに受け取り方が変わるもの。同じ一冊でも、最初にフィーリングで読んだ時と、解説や背景を知ってから見返した時とでは、きっと感じ方が違うはずです」

『FLYING FRYING PAN』 普後均 著
黒崎さんのおすすめは、惑星の縁をなぞるようにちりばめられた流星群、はたまた凹凸の質感が美しい月の表面など、まるで宇宙の世界をモノクロで撮影したかのようなフォトブック。でも実は宇宙とは遠いお家にあるものを室内で撮影しており、外にいかなくても写真作品を制作出来るのかと驚きを隠せない1冊なのだとか。雨の日は、お家にあるもので写真撮影を楽しむ日にしてみるのも良いのかもしれません。
〈book obscura〉
住所:東京都三鷹市井の頭4丁目21-5 フジパークマンション 103
営業時間:12:00〜19:00
定休日:火・水
Instagram:@bookobscura

西太子堂駅近くに店を構える〈Cat’s Meow Books(キャッツミャウブックス)〉。店内でのびのびと過ごす元保護猫たちも、お店の大切な店員で、売り上げの10%を猫の保護活動へ寄付することで、“猫と本屋が助け合う”というコンセプトを形にしています。店内に並ぶのは、小説やエッセイ、写真集、絵本など、どこかに必ず猫が登場する本ばかり。
雨の日は、猫たちもいつもに増してのんびり気まま。静かな店内で本を探していると、ふと隣でくつろぎ始めることも。猫と一緒に雨音に耳を傾けながら過ごす読書時間は、この店ならではの贅沢です。

店内には、猫店員の「あおい」と「なつめ」が。本とドリンクを購入すれば、2匹がいるエリアのテーブル席でゆっくり楽しむこともできます。お店のロゴを配したオリジナルのブックカバーも、猫好きさんなら見逃せません。

『複眼人』 呉明益 著
店主・安村正也さんがおすすめしてくれたのは、台湾文学を代表する作家・呉明益さんによる長編小説。海から流れ着いた少年や、世界のあらゆる出来事を記憶する”複眼人”の存在を軸に、自然と人間の関係や環境問題を幻想的な世界観で描いた作品です。
「雨が降るシーンが印象的な作品で、表紙の絵も相まって、雨の日に読んでほしい一編です。もちろん、この物語にも猫が登場しますよ。」
〈Cat’s Meow Books〉
住所: 東京都世田谷区若林1丁目6−15
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月・火
X:@CatsMeowBooks
国分寺に店を構える〈胡桃堂喫茶店〉内に併設された〈胡桃堂書店〉。ブックストアがカフェを併設するケースはよくありますが、ここはその逆。喫茶店を営むなかで、人との出会いをきっかけに出版レーベル「クルミド出版」を立ち上げ、さらに「本屋もあったらもっと面白い場所になるかもしれない」という発想から、この小さな書店が生まれました。喫茶店が軸だからこそ、店内の本はどれもコーヒーとともに自由に楽しめます。

雨の日にぜひ座りたいのは、すりガラス越しにぼんやりと雨粒を眺められる窓際の席。曇りががった景色を横目に本を開けば、日常から少しだけ切り離されたような気分に。時間を忘れて、物語の世界へ浸れる空間です。

『はてしない物語』 ミヒャエル・エンデ 著
オーナーの影山知明さんがおすすめしてくれたのは、世界中で愛されるファンタジーの名作。主人公が一冊の本をきっかけに不思議な世界へ迷い込み、現実と物語の境界が少しずつ溶け合っていく物語です。
「雨の日は、現実から少し離れて物語の世界へ入り込みたくなるもの。タイトルの通り長いお話ですが、雨の日なら、その長ささえ心地よく感じられるはず。時間を気にせず、当店でゆっくりページをめくってほしい一冊です。」
〈胡桃堂書店〉
住所:東京都国分寺市本町2丁目17−3
営業時間:11:00〜18:00
定休日:木
Instagram:@kurumidoshoten

絵本を中心に、アートブックや作品集などを扱う中目黒の中古書店〈dessin(デッサン)〉。国内外の古書が並び、子どもの頃に親しんだ一冊から、大人になった今だからこそ新しい発見がある絵本まで幅広く揃います。
雨の日は、少し憂鬱な気分になることもあるもの。そんな日こそ絵本を一冊。読み切るまでにそれほど時間はかからないけれど、そのぶん読み終えたあとの満足感は意外と大きいものです。小さな達成感が、その日の気分を少しだけ軽くしてくれるかもしれません。

子どもの頃は物語に夢中だった絵本も、大人になった今読むと、絵のタッチや色使い、余白の美しさに目が留まるもの。短い物語だからこそ、その一冊に込められた世界観をじっくり味わえます。〈デッサン〉には、アートやデザイン、文化などをテーマにしたアカデミックな絵本も多く揃い、大人だからこそ楽しめる一冊との出会えるのも魅力。

『ON THE TABLE』 安西水丸 著
店主・大和田悠樹さんが雨の日におすすめしてくれたのは、イラストレーター・安西水丸さんの作品集。食卓に並ぶ身近なモチーフを、軽やかな色彩で描いたシルクスクリーン作品をまとめた一冊です。雨の日は、家で過ごす時間が長くなるからこそ、普段は見過ごしてしまう食卓の風景にも自然と目が向くもの。何気ない日常のワンシーンを描いた安西さんの素朴でチャーミングなイラストを眺めていると、自分の暮らしももっと愛おしく感じられるはずです。
〈dessin〉
住所:東京都目黒区上目黒2丁目11−1
営業時間:13:00〜18:00
定休日:火
Instagram:@dessin_books

チャーミングで頼もしい相棒がいれば、もっと雨が好きになる。
書店巡りを心地よくしてくれる、雨の日のおともをご紹介!

01. 紙袋をモチーフにした《テンベア》のトートバッグ。タフなPVC素材だから大切な本も気兼ねなく持ち歩ける。チェック柄を選べばラフになりすぎず上品なムードに。¥19800/TEMBEA(テンベア トウキョウ) 02.湿気で広がる髪は《アウラ》のチャーミングなヘアクリップでさっとまとめて。遊び心のあるデザインが雨の日の気分を晴れやかに。¥2200〜/AURA(アウラ) 03. 雨の日の髪悩みをケアしながら、心地いい香りも纏える《ウカ》のヘアミスト&ヘアミルク。ボサボサさんにもペチャンコさんにも、髪質に合わせて選べるのもうれしい。¥2420/uka(ウカ) 04.どしゃぶりな日にも迷わず頼れる《靴下屋》の撥水ソックス。一日中快適な履き心地で、水たまりだってもう怖くない! ¥1100/靴下屋(tabio) 05. モデルで文筆家の小谷実由さんとコラボレーションした《アクビ》のブックカバー。PVC素材でお気に入りの一冊を雨から守ってくれる、心強い存在。¥3850/Aquvii(アクビ) 06.意外と指先が乾燥しやすいこの時季は《アールエムケー》のネイルオイル(¥2200)でケア。梅雨に似合うネイルカラー(¥1650)で爪先を彩れば、本をめくる手元が美しく整う。/RMK(アールエムケー)

photograph_Tanaka Narumi
design & illustration_Kuramoto Akari
edit & text_Yanase Rei
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