FASHION
『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでお馴染みのファッション用語についてわかりやすく解説します。第2回目は「ベレー」について。フランスで生まれたベレーが海を越え、世界中でブームになった歴史を紐解きます。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!
Index
「ベレー【beret】」
【用語解説】
丸く平らなフォルムが最大の特徴。かぶり口が内側へ段々と狭くなりフィットする、フェルト製で縁なしの帽子。ベレーのつまみは本来、編み上げたり縫い上げたりした最後のまとめ部分になっている。
【ベレーの歴史】
聖職者がかぶった帽子が農民に広まったのがバスク・ベレー誕生のきっかけ
ベレーの歴史は古く、古代ギリシャやローマ時代の「ピレウス(pireus)」と呼ばれる頭にぴったりしたかぶり物が起源とされています。現在のベレーの形になったのは15~16世紀頃。当時、カトリックの聖職者がかぶっていた「ビレッタ(biretta)」という角帽が、フランスとスペイン国境近くのバスク地方に伝わり、農民の間に広まりました。19世紀、この地を訪れたナポレオン3世が「バスク・ベレー」と呼んだことをきっかけに、世界中に広まっていきました。
フランス軍が取り入れたことでアーミー・ベレーが誕生
ベレーの種類は、前述のバスク・ベレーと軍帽として広まったアーミー・ベレーに大別されます。ベレーを軍帽として取り入れたのは、20世紀初頭、フランス軍のアルプス山岳部隊が最初だと言われています。
その後、第2次世界大戦中にイギリス軍の軍帽に《カンゴール》のベレーが採用されたことをきっかけにして広がりました(下記で紹介しているモンゴメリー将軍がかぶっていたベレーがカンゴールのもの)。以降、アメリカのグリーンベレーやオーストラリア、ベルギー、オランダなど、世界各国の軍隊がベレーを軍帽に採用しました。
【ベレーの雑学】
意外にも、ベレーブームに火をつけたのはイギリスの国王と将軍?
イギリスのエドワード8世(のちのウィンザー公)がベレーを愛用していたことによって、イギリス国内でブームに火がつきました。これを機にファッションアイテムとしてベレーが人気になったという説も。
余談ですが、ウィンザー公は国民に愛された稀代のファッションリーダー。ネクタイの「ウィンザーノット」やシャツの「ウィンザーカラーシャツ」はもちろん、フェアアイルニット、グレンチェックのスーツ、ダブルモンクを愛用するなど、20世紀のメンズファッションに多大な影響を与えた一人です。
第2次世界大戦のイギリス軍の英雄・モンゴメリー将軍(のちの元帥)が、ベレーとダッフルコートを愛用したことでベレーブームが再燃。フランスで生まれたベレーが海を越え、イギリスでブームになったのは、意外な人物たちが影響していたようです。
ダブルのスーツにバスク・ベレーをさらりと合わせるウィンザー公。
フランスと日本では、ベレーは芸術家の愛用品だった
フランスでは、ピカソやロダンなどの著名な芸術家がベレーを愛用していた時代があります。一方日本でも、パリに留学した芸術家がその影響を受け、昭和初期から画家や文学者が好んでベレーをかぶるようになりました。手塚治虫や藤子・F・不二雄はトレードマークになるほどベレーを愛用していたことで有名です。
ベレーのお洒落なかぶり方はフランス映画をお手本に
ベレーを素敵にかぶりたいなら、フランス映画を参考にするのがオススメです。中でも1966年公開「ロシュフォールの恋人たち」のカトリーヌ・ドヌーヴとフランソワーズ・ドレアック姉妹のベレー姿は必見! ベレーにチェックシャツを合わせたフレンチカジュアルな装いが今すぐ真似したくなるほどキュート。髪型によってベレーのかぶり方が異なるところもポイントです。
ベレー初心者にオススメなのは、伝統的な《ロレール》のバスク・ベレー
1840年創業の《ロレール》はフランスで唯一残っているベレー帽ブランド。表は均一でやわらかなフェルト生地に、裏は高級感のあるサテン生地を縫い付けた上質な一品。カラバリエーションも豊富なので、大人っぽくモノトーンにするもよし、ヴィヴィッドな色を選んで差し色にするもよし。かぶるだけでパリジェンヌ気分を満喫できるFUDGEガール必携のアイテムです。
ロレールのベレーの詳細はこちらから
監修:朝日 真(あさひ しん)
文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。
illustration_Sakai Maori
text_Akiyama Taori
※写真はFUDGE.jp「アクセサリークリップス」、PeLuLu「名品図鑑」より
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