FASHION

出典:「歩く以前にずーっと見つめていたくなる。真っ白な《トッズ》ローファー【FUDGE GIRLのためのアクセサリークリップス】」

 

連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。第12回目は「ローファー」について。どこで生まれ、どのようにして世界じゅうに広まっていったか、その歴史をひも解きます。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!

 

【用語解説】

まずは「ローファー」の意味を知ろう

「ローファー」とはひもやストラップを使うことなく足をすべらせて脱ぎ履きできるスリッポンタイプの革靴のこと。英語で「Loafer」は怠け者といった意味をさすことから、手間なく履くことが出来るこの靴に「ローファー」という名がついたと言われ、そもそもはカジュアルなシーンで履くために作られていました。なかでも甲のベルト(ストラップ)に切れ目(スリット)があって、そこにコインを挟めるデザインのものはコインローファー、またはペニーローファーと呼ばれています。ちなみにペニーとは1セント銅貨の通称です。ほかにもタッセルローファーやビットローファーなどがFUDGE GIRLにはなじみ深いのではないでしょうか。

 

【種類】

甲の形や縫い目、サドルのデザイン違いでいろいろ……

「ローファー」にはフレンチローファーとイングリッシュローファーの2つのタイプがあります。

フレンチローファーとは甲の部分が幅の広めなU字形で、モカシン縫いが外側に縫われているタイプのことで、どちらかといえばカジュアルな印象です。対してイングリッシュローファーとはノーズは長く甲の幅が狭い、スマートかつエレガントな印象です。

また甲を横断するように乗る帯状のサドル部分のデザインもいくつかあり、大きくは「ハーフサドル(上のイラストでは左)」と「フルサドル(上のイラストでは右)」に分けられます。

 

【歴史】

アメリカで、はたまたイギリスで、カジュアルに履く靴として誕生

「ローファー」が誕生した経緯については、いくつかの説があります。

ひとつにはイギリスで、1920年代にイギリス・ロンドンの《ワイルドスミス社》が作った靴に端を発しているという説。当時王室や貴族階級御用達だった《ワイルドスミス社》が彼らに依頼され、狩猟中の休憩用の靴として、はたまた室内履きとして、今で言うモカシンに通じるデザインの靴を作ったそうなのですが、それが1930年代に外履き用として広まったのが後の「ローファー」だと言われています。

ふたつめはノルウェーの農民や漁師が履いていたモカシン靴である「ノルウィージャン・フッシャーマンズ・シューズ」をベースにデザインした靴を、アメリカの《A.E.ネットルトン社》が「ローファー」という名称で売り出したのが始まりとする説。

もうひとつは、1836年にアメリカ・メイン州で設立され、キャンプやアウトドア用のモカシンなどを手がけていたシューズブランド《G.H.BASS(ジー エイチ バス)》が1936年に発表した「Weejuns(ウィージャンズ)」という名のついた靴が、世に「ローファー」として広く認識されたという説。ちなみにウィージャンズは「Norwegian(ノルウィージャン)」に由来しています。

いずれの説も誤りはない印象ですし、国や地域によっては野原などで履くことを想定しているなど、レースアップシューズよりは気軽に履くためにデザインされた靴であることは共通していますね。ちなみに、とくに《ジー エイチ バス》の「ウィージャンズ」については、1960年代以降、日本国内でもアイビールックの定番としてよく知られる存在です。

 

【雑学】

アメリカントラッドスタイルを世界中に広めたアイビーリーガーとペニーローファーの親しい関係

トラッドスタイルを作るマストアイテムはボタンダウンシャツ、チノパン、トートバッグなどいくつか挙げられ、「ローファー」もそのひとつであることはご存知ですね。でもなぜローファー=トラッドアイテムなのでしょう? その話は……1950年代にさかのぼります。

それは上で触れた《ジー エイチ バス》の作った「ローファー」、「ウィージャンズ」がアメリカのアイビーリーグと呼ばれる上流階級の子息たちが通う大学の学生たちの間で流行したからなんです。彼らのファッションは1960年代に入ると「アメリカントラディショナルスタイル」「トラッド」「アメカジ」「アイビーリーグファッション」として日本にも知れ渡り大流行。アイビーリーガーやアイビールックを好んだ人々の履いた「ローファー」も流行し、今もなおお洒落さんたちに支持される存在です。

 

出典:『「汚したくない。でも絶対に履きたい」のはざまで、憧れはいつだって《ジーエイチ バス》の真っ白なローファー【FUDGE GIRLのためのアクセサリークリップス】』

 

ところで「ウィージャンズ」はサドル部分にダイヤ型のスリット(切れ込み)が入ったタイプの「ローファー」の走りですが、アイビーリーグに通う学生たちはそのスリットにお守りのように1ペニーコインを入れて履いていたのだとか。そんなことから、ダイヤ型のスリット入りの「ローファー」だけは、コインローファーあるいはペニーローファーと呼ばれています。

さいごに《ジー エイチ バス》のローファー「ウィージャンズ」に関する、こんなエピソードをお届けします。

1983年に公開された、マイケル・ジャクソンの『スリラー』のミュージックビデオを見ると、マイケルが白いソックスに「ウィージャンズ」の黒を履いて華麗に踊る姿を見ることができます。これを機にアイビーブーム、トラッドブームに勝るとも劣らない「ウィージャンズ」ウエーブが世界中に広がり、と同時に「ローファー」の人気も不動のものになりました。

 

 

監修:朝日 真(あさひ しん)

文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。

 

illustration_Sakai Maori
edit & text_Koba.A

 

 

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