FASHION
トレンドを追いかけるのもいいけれど、やっぱり定番アイテムが1番使えて1番好き。気がつくといつもクローゼットにある……そんな永遠のスタンダードを紹介します。第3回目は《オーシバル》のマリンTシャツ。ロイヤルブルーとホワイトのラインが作り出す、爽やかなコントラスト。フレンチカジュアルといえば、そんなボーダー柄のトップスを思い浮かべる人は少なくありません。中でも《オーシバル》のマリンTシャツは着続けるほどに風合いが増し、長く付き合っていける1枚としてフランスだけでなく世界中の人々に愛されています。1939年の創業からブランドが紡いできた長い歴史とともに、多くのこだわりが詰まったマリンTシャツの魅力をお届けします。
海軍の制服から私たちのワードローブに姿を変えた、フレンチカジュアルの代表格
海や空を想起させるような、ブルーとホワイトのボーダー柄。そんな爽やかなイメージのためか《オーシバル》のアイコンであるマリンTシャツは、リゾートアイテムとして認識されることも多くあります。しかし、海は海でもフランス海軍のミリタリーウエアが起源であることは意外と知られていません。フレンチカジュアルを語る上で欠かせない、蜂のエンブレムが目印の《オーシバル》がフランスのリヨンに誕生したのは、1939年のこと。創立者のチャールズ・バルトはマリンTシャツのブランドに、フランス中部の小さな村の名前を付けました。その名が広く知れ渡ったのは1950~60年代。フランス海軍が《オーシバル》のマリンTシャツをユニフォームとして採用したことがきっかけでした。タフに使える厚手の生地と肩口の補強マチ、袖まくりをしなくても水に濡れにくい短めの袖、パンツインしやすい裾のサイドスリット、海に転落した際も脱ぎやすいボートネック…といった、海兵にとって実用的なディテールは、マリンTシャツがミリタリーウエアから国境や世代を越えて愛されるファッションアイテムへと変化しても受け継がれています。
《オーシバル》が支持される理由は、何と言ってもその生地にあるでしょう。洗濯や激しい運動に耐える、ミリタリーウエア時代から変わらないラッセル生地は、一般的なカットソー地より非常に多くの糸を使用する複雑な構造。着るほどに味わいが増して体になじむため、デニムのように変化の過程を楽しむことができます。新品のがっしりとした肌触りでも、長年連れ添ったくったり柔らかな肌触りでも、変わらずワードローブであり続けるのも納得です。今やフランス国内に数台しかない旧式の縦編み機で、時間をかけて1枚1枚丁寧に作られる《オーシバル》のマリンTシャツ。大量生産・大量消費という時代の流れに逆らいながらも、ブランドが守り続けてきた“本物”へのこだわりに思いを馳せることで、クローゼットの中にある洗いざらしのマリンTシャツがより特別な1枚に感じられるはずです。
シーズナルカラーも充実したもうひとつの人気定番
ラッセル生地のマリンTシャツとともにブランドを代表する、「コットンロード」生地のバスクシャツ。スペインのバスク地方の船乗りが、16世紀から愛用していたシャツが起源という説もあります。太番手のオープンエンド(空紡糸)という糸を使った生地は、軽量ながら厚手で丈夫。《オーシバル》では’70年代に登場しましたが、当時から変わらないベーシックなデザインはそのままに、現在はシーズナルカラーを加えた豊富なカラーバリエーションも人気の理由です。
夏のパリを舞台に広がる、揺れ動く13歳の少女の世界
《オーシバル》の人気をさらに高めた、映画『なまいきシャルット』。主役の少女をあのシャルロット・ゲンズブールが演じ、オーバーサイズのマリンTシャツを着た姿は、多くの人々の心を掴みました。自分でも理由の分からないイライラや憂鬱を抱えた13歳のシャルロットは、同い年の天才ピアニスト、クララとの出会いをきっかけに何かが変わりそうな期待で心をときめかせます。思春期の少女ならではの複雑な感情、そして成長の様子を甘酸っぱく描いた作品です。
『なまいきシャルロット』1985年/クロード・ミレール監督
photograph:Serizawa Shinji(model)、SasakiTakeshi(item)
styling:Takaue Mina
hair&make:Onishi Akemi
model:Coco
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