CULTURE & LIFE

毎週テーマに合わせて、「アーティスト」が選曲したプレイリスト、いつの時代も色褪せない「名盤」、そして注目の「新曲」をお届けする、連載《火曜日のプレイリスト》。

今回から話題のラップユニット《chelmico》のインタビューをお届け!CMやアニメのテーマソングに起用され、〈あの子たちは誰?〉と話題を読んだ彼女たち。自由奔放な等身大のリリック、キャッチーなメロディ、息のあったラップが魅力。8月26日に発売する新作アルバム『maze』は人気アニメ『映像研には 手を出すな!』(NHK総合テレビ)のテーマソングを含む、全13曲を収録。公私共に仲の良い2人のガールズトークをお楽しみに!

そして、2人がテーマに併せて選曲した”今年の夏ソング”もお見逃しなく!

 

《chelmico》左:Rachel、右:Mamiko                    photograh_Kobayashi Mariko

RachelMamikoによるラップ・ユニット、chelmico。個性的なキャラクターがそのまま伝わってくる自由奔放なリリック。そして、キャッチーなメロディーと息があったラップが注目を集める2人が新作『maze』をリリースした。思い出野郎Aチーム、長谷川白紙、Aalko aka Akiko Kiyamaなど、様々なアーティストが参加。テレビアニメ「映像研には手を出すな!」の主題歌「Easy Breezy」をはじめ多彩な曲が詰まった本作は、Chelmicoの魅力がたっぷり味わえる最高の一枚だ。そこで出会いから新作まで、RachelMamikoのガールズトークをお届け!

 

一緒にラップやろう!って声をかけたのがはじまり。

——2人は友達の紹介で出会ったそうですね

Mamiko:その友達が趣味でカメラやってて、写真撮りたいからって西日暮里のマックに集合したんだよね。それでトイレで着替えて、暑い中、スナップして。そこから仲良くなってカラオケ行ったり、タパス&タパス行ったり。

Rachel:ドトールとかね。全部、吉祥寺の。

Mamiko:Rachelんちにも行ったりして。

Rachel:そうだね。雨漏りする(笑)

 

——青春ですねー(笑)

Mamiko:ほんとに青春してましたね。

Rachel:お金なかったけど楽しかったね。

 

——お互い、どういうところが気があったんですか?

Rachel:2人とも人見知りで、グイグイ来ないから接しやすいというか。

Mamiko:わざわざ恋バナとかしなくてもすむみたいな。

Rachel:そうそう、話題がない時って恋バナとかしがちじゃないですか。

Mamiko:だけど私たちは〈なんか、ひよこいるよ〉みたいな。

Rachel:〈ひよこいたか〉みたいな。そんな話するだけでも気まずくなかった。

Mamiko:あと、お互いRIP SLYMEが好きってことが判明して、いっきに距離が縮まったね。

Rachel:〈お前も好きか!〉みたいな。しかも、ただのRIP好きじゃなくて、ほんとに大好き。

Mamiko:レベルが違う〈好き〉だった(笑)

 

 

——一緒にラップやろうって声をかけたのはRachelさんだとか。

Rachel:高校の時、ラップがブームになって〈ラッパーになりてー〉と思ってたんですけど、一人でやるのがヤだから友達誘おうと思って。マミちゃんだったら誘いやすそうだし、暇そうだった(笑)

Mamiko:ラップやらない?ってラインが来た時、受験勉強中だったんですよ。だから、やんねーよ、と思ったんですけど、その時一緒に勉強してたギャルっぽい子に〈いいじゃん、やっちゃいなよ。絶対いい思い出になるから〉みたいに言われて〈そうかな〉って(笑)。それで2人でシブカル祭に出た。

Rachel:2週間前とか、結構ギリギリだったよね。

Mamiko:それくらいで大丈夫なノリかと思ってたら、結構、シブカル祭って名の知れた人とか出ててびっくりした。

 

——そういうゆるい感じでスタートして、気がつけばメジャー・デビューっていうのもすごいですね。

Rachel:まわりの人たちが褒め上手だったから、〈これでいいんだ!〉って迷わず来れたんです。最初にトラックをくれた子とか、真剣に音楽をやってる子なんですけど、曲を聞いて〈良いじゃん!売れるかも〉って言ってくれて、〈マジで!?みたいな。

Mamiko:私たち、素直すぎるよね。かわいー(笑)。赤ちゃんズだ。

Rachel:すくすく育ったよね。お客さんも優しかったし。

Mamiko:メジャー・デビュー決まった時は腹くくったけど。

Rachel:レコード会社のスタッフ達と集まって宴を開いたんですけど、〈この人たちを養うのかあ〉って(笑)。そんなわけなくて養ってもらってるんですけど、頑張らなきゃなって思いました。みんな真剣に音楽で食べていこうとしている人たちだから、こっちも中途半端な気持ちじゃダメだって。

Mamiko:なんか就職したって感じだったね。就活とかしたことなかったし、受験勉強も失敗したし。音楽以外、何も出来ないから、これで頑張ろうみたいな。

Rachel:私たちに残された道はこれしかない!

 

 

ラップだけじゃない、歌やバラードもmazeたアルバム。

——そんななか、サード・アルバムとなる新作『maze』がリリースされたばかりですが、いろんなタイプの曲が入ってますね。

Mamiko:最初に〈小さい時の自分に向けて〉みたいなテーマを考えてたんです。〈昔、なんか女2人組いたよね〉って、小さい子たちが大きくなった時に思い出して歌うような曲。私たちにとってのRIP SLYMEみたいな。そこで二人でよく言ってたのが〈トラウマ〉でした。良い意味でも悪い意味でも、聴く人にトラウマを与える曲がいいねって。まあ、良い意味であってほしいですけど(笑)

Rachel:まず、インパクトを与えたかった

Mamiko:だから1曲ずつ、歌詞でも音でもフックとなるようなものは入れたかった。だから怖い曲とかもあるんですけど。

 

——「いるよ」とか「ごはんだよ」はダークゾーンですね

Mamiko:そうなんです。小さい時に体験した不思議な出来事。ほんとに見たのに、お母さんとか友達に言っても信じてくれない。匂いも憶えてるし、感触もはっきり残っているのに……みたいなことが色々あって。〈ごはんだよ〉はそういうことを歌った曲です。でも、そういう曲を書いているうちに怖くなってきて。それに自粛期間に入って気分も落ち込んできた。それでコロナとか全部落ち着いた時に、クラブで爆音でかかったらいいなっていう曲も作ろうって、〈Discoとか〈エネルギー〉みたいな曲を入れたらゴチャ混ぜになったんです。

 

——なるほど、だから〈maze(混ぜ)〉なんですね。ラップだけじゃなく「milk」みたいなヴォーカル曲も入っているところも〈混ぜ〉ですね、

Rachel:ラップしない曲作りたいなって、マミちゃんが前から言ってて。

Mamiko:ずっとバラードを作りたかったんです。音数が少ない静かな曲。ラップもするし、歌も歌う。どちらも音楽に変わりないんだから、自分たちが好きなことを自由に表現したい。

Rachel:曲として良くなることがベストだからね。〈milkも最初はラップ入れようかって話してたんですけど、やっぱりない方がいいから歌だけにしたんです。昔はスタッフと意見が食い違ったりすると、相手に対してムカつくこともあったけど、最近は相手も私もいい曲を作りたいという気持ちは一緒なんだって考えられるようになった。音楽がいちばん大事だということに気づいて一皮むけましたね(笑)

Mamiko:私たち、曲を作るのが一番好きだからね。

 

 

——ちなみに二人はケンカしないんですか?

Mamiko:ケンカはないかなあ。

Rachel:マミちゃんの意見だったらだいたい受け入れますね。自分の意見がある場合は、ちゃんと論理的に伝えるし。一回くらいケンカしてみたい(笑)

Mamiko:どうなるんだろう?

Rachel:一回ケンカしたらさあ、その話で一生笑えるじゃん。〈なんでケンカしたんだろうね、ダサ!〉みたいな(笑)

 

——そういう話を聞くと、アルバム最後の曲「GREEN」は恋人たちの歌にも聞こえるけど、2人の友情を歌っている風にも聞こえますね。

Rachel:GREENは完全に二人の交換日記ですね。あ、交換日記、私で止めてるわ、ごめん!

Mamiko:それ、めっちゃ前だよ。2年くらい前

 

——ほんとに交換日記やってるんですか。仲良すぎる(笑)。

Mamiko:楽しいっすよ、意外と。

Rachel:なんか絵を描いたり。

Mamiko:〈次はRachelって矢印描いたり(笑)。一時期、私がちっちゃいバッグにハマって、日記を持ち帰れなかったから止まったんだね。〈カードキャプターさくら〉の交換日記なんですけどデカいんですよ(笑)。今度、持ってきてよ。

Rachel:うん、また書くね!

 

今年の夏ソング

《chelmico》の二人が「今年の夏ソング」をテーマにプレイリストを教えてくれました!


《chelmico》左:Rachel、右:Mamiko

select: circa waves  『T-Shirt weather』

この曲があう夏だったらサイコーだなって思い【choose:Rachel】

「明るくていいって言うのもあるんですけど、タイトルで勝ちだなって。確かにそういう日、あるわと思って。〈今日ってTシャツ・ウエザーじゃん!〉みたいな。この曲があう夏だったらサイコーだなって選びました。マミちゃんもこの曲好きなんだよね。それをとっちゃった(笑)。早いもんがちで。でも、マミちゃんが選んだ曲もいいよね。」

 

select: Hello Hello Hello 『Remi wolf』

夏といえば明るくて元気!まさにこの曲【choose:Mamiko】

「夏といえば明るくて元気!っていうイメージがあるんですけど、これはまさにそういう感じの曲なんです。レミ・ウルフはシンガー・ソングライターの女の子で、めちゃくちゃ歌がうまいんですけど、ミュージック・ビデオとか超カラフルで、もう存在が夏みたいな人。普段、私は落ち着いた曲とか静かな曲ばかり聴いてるんですけど、久しぶりに明るい曲でハマったのがこれなんです。」

 

chelmico『maze』8月26日発売!

初回限定盤 [CD+DVD] :¥3500、通常盤:¥2800
WARNER MUSIC JAPAN

 

《chelmico》左:Rachel、右:Mamiko

RachelとMamikoからなるラップユニット。 2014年に結成。2018年ワーナーミュージッ ク・ジャパンのunBORDEよりメジャーデビュ ー。 自由奔放な等身大のリリックのおもしろさ、キャッチーなメロディーに乗せる滑らかなフロウが様々な業界から注目を受け、爽健美茶のCMソングやドラマのテーマソング、アーティストへの楽曲提供、客演などオファーが殺到。音楽のフィールドを超え、様々な方面で活動中。 2020年、NHK総合テレビアニメ『映像研には 手を出すな!』(原作:大童澄瞳 監 督:湯浅政明) のオープニングテーマソング 「Easy Breezy」「Limit」「Terminal 着、即 Dance」などを連続リリース。それらの作品を含む 全13曲を収録したchelmicoの3rdアルバム「maze」(読み:まぜ) が8月26日に発売!Website: chelmico.com

 

「今年の夏ソング」をテーマに、いつの時代も色褪せない「名盤」をお届け!

select:TOM TOM CLUB 『Genius of Love』

トロピカルなムード満載の夏ソング

NYのニュー・ウェイヴ・バンド、トーキング・ヘッズのクリス・フランツ(ドラマー)とティナ・ウェイマス(ベース)が結成したユニット、トム・トム・クラブ。当時、二人は結婚したばかりで、バハマ諸島でレコーディングしたファースト・アルバム『トム・トム・クラブ』(1981年)では、二人が楽しみながらいろんな実験をして音楽を作っていることが伝わってくる。ヒップホップやレゲエ、カリブ音楽など様々なリズムと、エレクトロニックなサウンドを融合。夏にぴったりの開放感溢れるダンサブルなポップ・ソングを生み出した。なかでもトロピカルなムード満点の「ジーナス・オブ・ラヴ」は、パブリック・エネミーからマライア・キャリーまで、様々なアーティストがサンプリングした名曲。

 

FUDGE.jpが「Pick up」する、注目のアーティストの新譜を紹介!

select:METAFIVE 『環境と心理 』

ちょっと最近お疲れぎみのあなたへ

高橋幸宏、テイトウワ、砂原良徳、小山田圭吾(コーネリアス)、ゴンドウトモヒコ、LEO今井。世代を超えた6人のミュージシャンが結成したスペシャル・ユニット、METAFIVEが4年ぶりに新曲を発表。これまでヴォーカルは高橋とLEOが担当していたが、今回初めて小山田がリード・ヴォーカルになり、そこに高橋とLEOの歌声が加わっていく。作詞作曲は小山田で、コーネリアスの最新作『Mellow Waves』を思わせるメロウなメロディーと、METAFIVEらしい緻密なバンド・サウンドが融合。コーネリアスの世界を、METAFIVEで肉付けしたような仕上がりに。雨上がりに美しい夕暮れを見て、心が少し晴れる。そんな歌詞と穏やかな歌声が、コロナ疲れした日々に心地好い風を吹き込んでくれるような曲だ。

 

text_Murao Yasuo

design_Koinuma Kenichi

edit_Takehara Shizuka

 

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