CULTURE & LIFE

月の半分は国内外を旅するという多忙なライフスタイルの中で、家は「帰ってきたなと心から落ち着ける場所」。あえて完成度を求めすぎず、アートや本を床置きして「雑多な心地よさ」を楽しむ。フリーランスディレクターWataruさんのお部屋づくりと、旅の記憶が詰まったストーリーのあるアイテムたちについてお話を伺いました。

 

視点を低く。床置きでつくる、ラフで居心地の良いリビング

フリーランスディレクターとして活躍し、ご自身がco-founderであるブランド「Studio Quilto」も手がけるWataruさんが暮らすのは、代々木エリアにある築21年の1LDKマンション。新宿や渋谷へも歩いて行ける距離にありながら、少し落ち着いた静かな環境が気に入っているといいます。

 

窓の外には山手線や中央線など、複数の路線が行き交う都会的な風景が広がります。
「電車の音が聞こえる環境ですが、防音がしっかりしているのでそこまで気になりません。むしろ、どこへ行くにもアクセスが良くて、でも騒がしすぎないこの街のバランス感がすごく気に入っています。実はこの代々木エリアで暮らし始めて、もう13年ほどになるんです」

 

そんな利便性と落ち着きを兼ね備えた都会の拠点で、Wataruさんが現在楽しんでいるのが、肩肘張らない「ゆるさ」のある空間づくりです。以前はコンクリート打ちっぱなしの、少しエッジの効いた洗練された部屋に住んでいたそうですが、年齢を重ねるにつれて、インテリアの好みも少しずつ変化してきたと言います。

 

「ミニマリズムや北欧テイストのような完成されすぎた部屋よりも、モノや色が多くてごちゃごちゃしているけれど、なぜか全体のバランスが良くてかっこいい、という部屋が好きです。イメージしているのは、昔よく観ていた海外の映画に出てくる『売れない作家の部屋』のような空気感ですね。

 

学生時代にニューヨークのマンハッタンに留学していた経験もあり、そうした海外のアパートメントの雑多なバランス感が原体験になっているのかもしれません」

 

そのラフな居心地の良さを演出しているのが「床置き」のスタイル。 家ではダラダラと過ごすことが多いため、ソファに深く腰掛けたり床に座り込んだりしても圧迫感がないよう、目線が下になるようにあえて高いところにモノを置かないように意識されています。

 

床に無造作に積まれた本たちにも、実はWataruさんなりのルールが。
「旅の最中に読みきれなかった本を積んでおく、いわば『後処理』の場所なんです。きれいに背表紙を揃えすぎると、なんだか自分の中で違和感があって。あえてサイズや色をバラバラに積むことで、ラフな絵になるようにしています。きっちり本棚に収めないほうが、僕のような怠け者にとっては簡単に模様替えもできるのでおすすめです(笑)」

 

置かれているのはエッセイや旅に関する本が多く、特に影響を受けたという写真家・星野道夫さんの著書などが並びます。「文章がとても丁寧で、彼に影響されてアラスカへ旅に出たほどお気に入りです」と語る通り、本はWataruさんの行動の源。

 

また、旅のモチベーションを上げてくれるという『MAPS』という青い表紙の絵本や、ファブリックアイテムで取り入れた「ブルー」が、空間全体の爽やかなアクセントとして効いています。逆に、大好きな漫画『HUNTER×HUNTER』は、世界観が揃いすぎてしまうため電子書籍で読んだり、見えない場所に隠したりしているという独自のこだわりも。

 

また、「普通の鏡だと整いすぎちゃうから」と選んだ変形ミラーも、お部屋に奥行きとユーモアをプラス。新年や仕事の転換期など、暮らしの節目のたびに家具の配置を変えたりラグを敷き直したりして模様替えを楽しむのも、Wataruさん流のリフレッシュ方法です。

 

ストーリーのあるアイテムに囲まれた空間づくり

お部屋のあちこちには、Wataruさんがこれまでの仕事や旅先で出会ってきた思い入れのあるアイテムが散りばめられています。一つひとつのモノに語れるストーリーがあることが、この空間の奥深さをつくっています。

 

ダイニングの壁を飾るシグネチャーは、民藝作家・宮入圭太さんの型染タペストリー。百貨店勤務時代にイベントで出会った作品です。
「動画制作の仕事で作家さんのアトリエに伺い、実際に型染めをしている姿を見て素敵だなと思い、衝動買いしました。

 

ポスターもいいですが、布独特の色合いと洗練された雰囲気が、部屋全体を柔らかくしてくれますし、周りに置いている植物との相性も抜群なんです」

 

窓際のスペースには、インテリアブランド「trim」の一点モノのベースライトが優しく光ります。木工作家が手がけた独特な形状の木のベースに、ぽつんと電球が乗ったデザイン。

 

夜になると、この照明の灯りが床や壁にノスタルジックな影を落とし、お部屋の表情をガラリと変えてくれます。「明るすぎず、この抜け感とゆるさがすごく気に入っています」と語る通り、夜のリラックスタイムには欠かせないアイテムです。

 

そして、ご友人と立ち上げたブランド「QUILTO」のスリッパも重要な存在。
「僕は少しだらしないところがあって、ついスリッパを脱ぎっぱなしにしてしまうんですが、そんな放置された姿でも『なんか可愛い、生活感があっておしゃれだな』と思えるデザインです」と話します。

 

ダイニングテーブルはワークスペースも兼ねており、頭上には大阪のショップ「Essential Store」の3層になった和紙の照明が吊るされています。合わせたチェアはファントム・ハンズのピエール・ジャンヌレのリプロダクトとカリモク60のダイニングチェア。名作家具とクラフト感が絶妙にミックスされています。

 

一人暮らしにしては広めのキッチンは、あえて生活感を出したスタイルに。

 

「海外の家庭の、いい意味でごちゃごちゃしたキッチンに憧れていて。色使いにはこだわっていて、木製のまな板などのナチュラルカラーをベースにしつつ、ギリシャのビールの空き缶や海外で購入したのど飴缶」

 

「さらにはデザインの可愛いセロハンテープなどを『緑エリア』『黄色エリア』のように配置して、色が映えるようにしています。普通はインテリアにしないようなものを置くのが好きなんです」

 

普段は週に1〜2回しか料理をしないそうですが、よく飲むというカップ酒の空き瓶を洗ってコップやディスプレイとして活用するなど、大人の遊び心が満載の空間に仕上がっています。

 

旅の記憶を重ね、進化していくこれからの部屋

月の半分は国内外を自由に飛び回り、ディレクターとしての仕事やご自身のブランドの活動など、アクティブな日常を送るWataruさん。最近は国内の知床や直島、海外ではネパールやインドを訪れました。次はメキシコやブラジル、ガラパゴス諸島など南米を巡る予定と生粋の旅好きです。旅先では有名な観光地だけでなく、ローカルな場所に滞在してその土地の空気を感じるのが好きだと言います。

 

「僕は1か月のほとんどを旅に出ている生活をしているので、ホテルライクな非日常空間よりも、帰ってきた時に『自分の部屋だ』と心から安心できる、実家のような落ち着く場所でありたいんです」

 

お部屋の窓際や棚には、自作の粘土のオブジェや、レゴブロックで作った花が並びます。

 

さらには、昔懐かしいIipodやゲームボーイのカセットなどの小さなおもちゃたちも。

 

「大人になると、昔遊んでいたものをノスタルジーとしてインテリアで楽しむ面白さがあると思っています」とWataruさん。愛用しているレコードプレーヤーでお気に入りの音楽を流しながら、ソファでお酒を飲むのが至福の時間です。

 

直射日光が入りにくいお部屋ですが、それをネガティブに捉えるのではなく、あえて外へ出て明治神宮や新宿御苑へ散歩に出かけ、陽の光をたっぷり浴びるなど、周辺環境も存分に楽しむ豊かなライフスタイルを送っています。

 

また、旅先での風景を愛用のカメラで切り取ることも、Wataruさんの重要なライフワーク。将来的にプリントして形に残すことを見据え、その場の空気感や温度まで写し取るような画作りには強いこだわりを持っています。自身で撮影した美しい風景写真たちは、いずれこの部屋の壁を彩る新たなアートピースになるかもしれません。

 

そんなWataruさんのお部屋は、これからも旅の思い出とともに進化していく予定です。

 

「旅先で見つけたオブジェや器、チケットなど、自分へのお土産みたいなものがどんどん増えて奥のスペースがパンパンになってきたので、壁のくぼんだスペースを全面シェルフにしたいなと計画しています。実はもう図面も引いているんです」

 

また、現状は木目のアイテムが多くなってきたため、今後は天板が白のアルミ素材のテーブルなど、インダストリアルな要素を少し取り入れて空間を引き締めたいとも考えています。

 

「いつか、天井が高くて広い海外のスタジオのような空間にも住んでみたいですね」と笑うWataruさん。

世界中を巡る旅の記憶が地層のように積み重なり、自身のライフスタイルや感性の変化とともに、ラフに、そして自由に進化していく。これからの変化もますます楽しみになる、等身大で心地よいお部屋でした。

 

WataruさんのInstagramアカウントはこちら
https://www.instagram.com/wataagram/

 

text & photo : Tsubottle

 

*

出典: goodroom journal 

記事提供元:リノベーション・デザイナーズ賃貸 goodroom(グッドルーム)

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