CULTURE & LIFE
友人の織作家・上杉浩子さんが、多治見の「ギャルリ百草」で展示会を開催するというので、名古屋から多治見まで足をのばすことに。展示会初日は、写真や映像を交えて織りの工程を浩子さん自らが教えてくださるギャラリートークがあり、丁寧で愛のある手仕事に惚れ惚れ見入る。尊敬する友人の作品が現代美術作品のように並ぶ景色は美しく誇らしい。ギャルリ百草のオーナーで、陶芸家の安藤雅信さんとは、植草甚一氏のはなしで花が咲き、植草氏が愛聴していたレコードを聴かせていただいたり、中国茶を淹れていただいたり。
木々の中にあるギャルリ百草で過ごした時間が、あまりにゆったりしていたため、何日分かの休息を得たような心持ち。しかし現実の時間には限りがある。多治見に滞在できる時間は残りわずかになりながら、行かねば長らく後悔するだろうからと、駆け足で訪ねておきたい場所を巡った。
その一つが、2016年に開館した「多治見市モザイクタイルミュージアム」。「ラムネ温泉館」や「ねむの木こども美術館」など、建築史家・建築家の藤森照信氏が手がけた、おとぎ話の世界のような建築物のファンとして、どうしても体験したかった。多治見駅からはかなり距離があるため、車を借りて目指すことに。地図が目的地へ近づくに連れ、胸の高鳴りは増すばかり。
見えた、見えた!すり鉢状に傾斜した地面の中にうずくまる、太ったラクダのコブのような土壁の建物。それはタイルの原料を掘り出す彩土場に見立てた形で、今にものっそり動き出しそう。
美術館がある多治見市笠原町は、施釉磁器モザイクタイル発祥地にして、日本一の生産地。10年ほど前に一度、大型スーパーのノベルティを作る仕事で、同地のセラミック工場を訪れたとき、最盛期には100を超えるタイル工場があったと教えてもらった。昭和の時代は、かまど、流し台、銭湯から一般家庭の浴槽まで、モザイクタイルは豊かでモダンな暮らしの象徴だった。それがいつしか斜陽産業にかわり、タイル工場は次々姿を消していったという。
けれども最近では、「昭和的な可愛らしいもの」として再びモザイクタイルに光が当たり、若い書き手による専門書が出版されるまでに。多治見市モザイクタイルミュージアムも計画時には、タイル専門の施設にわざわざ誰がやってくると、反対の声があがったそう。しかし、開館してみれば予想をはるかに超える来場者数。平成産まれの若者には新鮮で愛らしく、昭和産まれ世代には懐かしく、みな目を細める。展示・収蔵されるタイルも建物も、写真に撮っても絵になると、SNSでも話題らしい。
4フロアの内部には、3つの展示室と、ミュージアムショップなどが。モザイクタイルの製造工程や歴史を辿る展示はもちろん、浴槽や洗面台など、藤森氏が選んだモザイクタイルコレクションが並ぶ半屋外型の展示室は、幼い子どもでも楽しめる。
最後にのぞいたミュージアムショップで、ピアスやブローチなどのアクセサリーに加工されたタイルが目に留まる。どれも飴細工のような艶があって、思わず「おいしそう」と独り言。そうだ、この甘やかな後味。多治見市モザイクタイルミュージアムは、子どもの頃、画用紙いっぱいに描いた、お菓子の城にとても似ていた。
すり鉢状に傾斜した前庭の、くねくね道を通って、ミュージアムの入口へ。
4階展示室のモザイクタイル画。
4階展示室に並ぶ、洗面台とかまど。昔ながらのかまどの台は、タイルを貼ったものが多かった。
半屋外の4階展示室には、タイルのパーツで飾ったオブジェが。
タイルの見本帳も展示物。
ガラス瓶の中身は、色鮮やかな顔料。
ミュージアムショップでは、タイルのアクセサリーをおみやげに。
多治見市モザイクタイルミュージアム近くの和菓子店「陶勝軒」で見つけた、ねりきり製の和菓子。
モザイクタイルをイメージしたもの。
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