CULTURE & LIFE

現在パリのガリエラ美術館で開催中の

『La mode du XVIIIe siècle. Un héritage fantasmé

(18世紀のファッション ― 幻想化された遺産)』

会期は2026年3月14日〜7月12日。

そしてコニャック・ジェイ美術館での『Révéler le féminin(女性性をあらわす)』展。
会期は2026年3月25日〜9月20日まで。

今回は2つの美術館で共同開催している18世紀の展覧会をまとめました。

 

18世紀のフランスはヨーロッパ随一の洗練と威信の中心地でした。フランス風の優雅な装いは各国の宮廷を魅了し、ファッションは単なる衣服ではなく社会的地位や教養、美意識を示す言語となります。

 

いつも私の感情を揺さぶり続けるフレンチファッションは淡いパステルカラー、花模様、レース、ヴァトー風の壁!

 

この展示ではロココ時代の衣装そのものだけでなく、19世紀以降の人々が“夢見た18世紀”までを扱っています。

ガリエラ美術館の展示の後半はクリスチャン・ディオール、ガリアーノ、シャネル、ルイ・ヴィトンがこの時代を引用したドレスが並びます。

 

たくさんのドレスを見る中で18世紀の特徴的なものを紹介します。

「Corps à baleines(コール・ア・バレーヌ)」つまりコルセットの前身です。鯨のヒゲや金属で硬く補強され、胸元から胴体を厳格に形づくるこの衣服。シャツの上、ドレスの下に着けられ、身体そのものを理想の形へ矯正しました。

 

16世紀以来用いられてきたこの構造は、胸と腹部を圧迫して自由な動きを制限します。

背中の形は逆三角形に、ウエストはとてもとても細いです。あくびもできないほどウエストを細く圧迫しました。気絶する女性もいたそう。
美しさとは、ときに窮屈です。

 

横へ広がるシルエット ― Panier(パニエ)

18世紀のドレスを見て驚かされるのは、その横幅です。

「パニエ」は、スカートの下に装着する骨組み入りの下着。
籐や金属、鯨骨によって支えられ、女性の腰回りを劇的に広げました。

時には扉を横向きで通らなければならないほど巨大になることもあったそうです。けれどこの誇張されたシルエットこそが、18世紀の“格式”でした。

ドレスの中心を飾る ― Pièce d’estomac(ピエス・デストマ)

「ピエス・デストマ」は、ドレス前面を飾る取り外し式の装飾布。
刺繍やリボン、宝飾で豪華に彩られ、コルセット部分を覆うように取り付けられました。

胸元は視線を集める場所だからこそ、もっとも贅沢な装飾が施されました。

肩を流れるレース ― Barbes(バルブ)

ルイ15世時代に流行した「バルブ」は、女性の頭飾りに付けられた二本の長い布飾りです。
素材はモスリンやレース。髪の高い位置から肩へ柔らかく垂れ下がり、静止していても美しい。歩くたび、振り向くたび、レースが揺れるアクセサリーです。

 

袖口のレース ― Engageantes(アンガジャント)

「アンガジャント」は、袖口に付ける取り外し可能なレース飾り。
リネンやコットンで作られ、ときには二重三重のフリルとなって手首を彩りました。

18世紀の女性たちは手の動きまで演出していたのでしょう。レースはそのすべてをより繊細により優雅に見せてくれます。

 

空気を織り込む布 ― Gaze(ガーズ)

「ガーズ」は、目の粗い織りによって透明感を生み出す軽やかな布地です。
絹や麻、木綿で織られ、18世紀後半のフランスで大きく流行しました。

 

白い布 ― Mousseline(モスリン)

インドからもたらされたモスリンは、軽く、柔らかく、流れるような木綿布でした。

18世紀末、人々は次第に「自然らしさ」に憧れるようになります。その変化を象徴したのが、白いモスリンのドレス。高いウエスト位置、流れるような布、締め付けの少ない身体。王妃が愛したのはこの自然な質感でした。

1783年に Élisabeth Vigée Le Brun がマリー・アントワネットの白いモスリンのドレス姿を描いてスキャンダルになりました。それはそれまでのヴェルサイユ宮廷の常識を覆すもので、王妃が下着姿で描かれていると受け取られたから。

木綿というナチュラルでラフな素材はヴェルサイユの厳格な儀礼、重い衣装からの解放になったことでしょう。

このスタイルは後に訪れる“エンパイア・スタイル”の先駆けとなりました。

コニャック・ジェイ美術館では絵の中の衣装と、実物のドレスが向かい合わせに展示されています。18世紀の肖像画コレクションがたくさんあり、特に肖像画家たちはシルクの光沢、レースの透明感、布の重なり、宝飾の輝きを見事に描いています。

ロココ時代の画家ブーシェ、フラゴナールの作品も4、5点見ることができます。

 

私が20歳になる少し前にブーシェのポンパドール夫人を模写して描いた油絵はこちら。
この展示を見た後に肖像画を見るとドレスの構造がよくわかります。

繊細で優雅な理想像を求めた18世紀のファッション、夢のような儚い美しい世界にうっとりしました。

 

text:竹内 仁海

パリ在住13年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。

Instagram:@melodiesgraphiques

 

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