CULTURE & LIFE

オリンピック開会式当日。
この日のためにパリのセーヌ川沿いには観賞用の椅子と大きなスクリーン、スピーカーががいくつも取り付けられました。
橋は封鎖され、道路沿いには見た事がないほどの人々が早くから待ち構えています。みんな窓から体を乗り出して旗を掲げています。
モネの絵画『モントルグイユ街、1878年パリ万博の祝祭』みたいな雰囲気!


近所は厳重警戒体制。
午後14時から夜中0時まではサン・ルイ島に入れない、入ったら夜中までサン・ルイ島から外には出られないということでした。そしてサン・ルイ島の住人も17時半以降は外出してはいけないと警察から通達がありました。
私達はパリ市からセーヌ川沿いの無料の席を招待していただいていましたが、選手たちが乗った船を見るのには少し距離があったので、その日1日をサン・ルイ島の友達の家を数軒お邪魔して過ごすことにしました。

夕方知り合いのお宅に伺うと、窓からはノートルダム寺院を目の前にセーヌ川が見渡せます。
テーブル上にはびっしり豪華なお料理とシャンパンが並べられてました。
なんて贅沢な立食パーティー!

前日から巨大なクレーン車が道を塞いでいてセレモニーの何に使われるのか興味津々でしたが、セレモニーが始まってからマスクを付けた男性が登場しました。
そして聖火を持って空中のサン・ルイ島をノートルダム寺院方向に空高く横切るというサプライズ!

屋外から大音響の音楽が流れ、セレモニーが始まりました。
まず1隻目はギリシャの選手団が登場。そして1時間ほど待って、日本の選手団が登場。最後は大きな船でフランス選手団が現れました。
この日はあいにくの雨で折りたたみ傘以外は禁止。川沿いの人々は雨に濡れながも歓迎の声が止みません。

セレモニー後半は早めにアパートからおいとましましたが、橋の封鎖で家に帰れず島の端っこで遠目にスクリーンを見ていました。
そうしてるうちにセレモニーの最後、「愛の讃歌」のメロディーが聞こえてきました。
周りに誰もいないので私達夫婦2人だけで無言で歌に聞き入りました。エッフェル塔からのセリーヌ ディオンの歌声を独り占めできたような魔法のような時間でした。

オリンピック期間中は文化庁で働く日本の友達やイタリアからの家族がパリに来たので、
私は毎日パリのガイドでいろんな場所に連れて行きました。
チュイルリー公園もその一つ。
この公園で1783年にモンゴルフィエ兄弟が熱気球で試験飛行した歴史的実験を紐づけたのか、気球にオリンピックの炎が点火されました。気球は毎晩22時に空中に上がり、それを見ようとルーヴル美術館の周りには毎日人々が集まりました。
夕焼けの色と気球の色が同じ幻想的な光景を何度も見れました。

パリ市庁舎では大きなスクリーンが設置され、オリンピックファンが楽しめるように毎日いろんなイベントが開催されていました。

フランス国内で一番大きなスタジアム、スタッド・ドゥ・フランスには、陸上のチケットをいただいて自宅から自転車で40分で行ってきました。
世界各国から人が集まって服装も顔のペインティングも旗も様々。
棒高跳び、陸上200m、3000m、ディスク投げの日、私達は男子棒高跳びの世界記録保持者のアルマンド・デュプランティスに注目していました。
彼は5m代の高さは低すぎるということで飛ぶのを2回辞退し、地面に寝転がり空を眺めでいました。
多くの選手は6m届かない高さで脱落するなか、アルマンドは6m10cmを一回で成功させて金メダルが決定しました。
さらに彼はもっと高く飛ぶ挑戦を選んで、バーは最高の高さの6m25cmまで引き上げられました。
1回目は失敗、2回目も失敗。
それから全ての競技が終わり、77000人の全観客が彼に集中します。
数曲の音楽が流された後、観客からの手拍子と応援を受けて彼は走り出します。
唸るような叫び声が響き渡る中、彼は飛びました。

世界新記録!
その瞬間、耳の鼓膜が破れそうなくらいの絶叫。こんな絶叫は生まれて初めて聞きました。驚きと感動が混ぜあわさってスタジアムにいた全員が信じられないといった瞬間でした。彼は飛び終えた後すぐに彼女の元へ走っていき彼女へキス!
測定機械は6m25cm、それ以上の高さはないのです。誰がこれを飛ぶと想像したでしょうか。アナウンサーは最後にこの言葉を残しました。
「今日ここにいる皆さんはこの歴史的な世界新記録を自分の目で目撃したと誰かに伝える日がいつか来るでしょう」
行くべき日にスタジアムに行けて本当にラッキーでした。

そして日本は決勝まで行くだろうという予想して買っていた女子卓球決勝戦のチケット。
決勝は中国との対戦でしたが中国の応援がかなり激しく、私と日本人の友達は圧倒されて押され気味。すごいスピードになかなか目がついていかない。
日本の平野美宇選手、早田ひな選手、張本美和選手、よく頑張りました。結果、日本は銀メダルでしたが接戦が見れて大満足でした。

オリンピック期間中、アマチュアランナーがオリンピック選手と同じコースを走れるというイベントも行われました。42kmと10kmのコースは数万人が参加したので、午後9時から数回に分けてスタート。真夜中から朝方まで走るというパリっぽいアイデアです。

サマリテーヌデパートではウィンドゥにメダルが展示されていました。

メダル一つにつきエッフェル塔の鉄の一部がが13gが使われたという、これまた素敵なアイデアです。
メダルを入れるトレーはルイ・ヴィトン、メダルはジュエリーブランドのショーメ、メダルを運ぶスタッフのユニフォームはLVMH が担当。
帽子は小説レ・ミゼラブルの登場人物のガヴロッシュ スタイルです。1920年代のパリへオマージュを捧げたという。
オリンピックのために毎日休まず練習、鍛錬してきた全ての選手たちに拍手を送りたい!
毎日の熱いドラマ、様々な涙を見て感情を揺さぶられ、想像していた以上に素晴らしく刺激的だったパリオリンピックでした。
text:竹内 仁海

パリ在住13年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。
Instagram:@melodiesgraphiques
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