CULTURE & LIFE

 

昨年のハロウィーンのこと。

いつものように、ふらっと近所のコーヒーショップに立ち寄ると、顔なじみの店員たちがみんな仮装姿で働いていました。

 

その中に、完璧なドラァグ・クイーン(Drag Queen)姿のバリスタがひとり。

それがジョーダン・ギリーズ(Jordan Gillies) こと、エセル・ルヴァイン(Ethel LaVain)でした。

 

「とってもきれいね」

思わず彼にそう伝えると、

「ありがとう。これは僕の夜の姿。昼間はバリスタで、夜はプロのパフォーマーなんだよ」

とジョーダンは言いました。

 

なんと、そうだったのか。

以来、私たちはお店で声を掛け合うようになり、私は次第に彼のことをもう少し聞いてみたいなと思いました。

 

 

ジョーダン・ギリーズ(Jordan Gillies)は週5日、朝5時に出社して午後1時まで、

ブルックリンのパークスロープにあるブルーボトルコーヒーでバリスタとして働いています。

 

彼が淹れるコーヒーは「人によってこんなに差があっていいの?」と

ファンが本社に手紙を書いたほど、特に美味しいと評判。

 

仕事が終わると、続けて週4〜5回はドラァグ・クイーンとしてパフォーマンスするという多忙の日々。

 

―ジョーダン、歳を聞いてもいい?

「いいよ。僕は今19歳。スコットランド出身で、16歳からブルックリンで暮らしている。

叔父と父、義母と一緒に6年前にスコットランドから移住したけど、

みんな僕が16歳の時にカリフォルニアに引っ越した。僕は独りでニューヨークに残ったんだ。

家族は僕を気持ちでサポートしてくれているけど、ずっと仕送りなしで暮らしているよ。

家賃も滞ったことがないし、誰かにお金を借りたことも、一度もないよ。」

 

物価の高いニューヨークで、しかも家賃の高いブルックリンで、16歳から一人暮らし。

それがどんなに大変なことか。私は彼をギュッとハグしたくなりました。

 

 

―ドラァグ・クイーンになったきっかけは?

「僕がドラァグ・クイーンに興味を持つようになったのは、

スコットランドの育った環境のせいだと思う。

女性が周りにたくさんいたんだ。彼女たちは毎朝欠かさずきれいにお化粧をして仕事に出かけた。

They looked so Fabulous!彼女たちはとっても素敵だった。

その様子を眺めるのがとても好きだったんだ。

僕は、ドラァグ・クイーンの歴史にも引き込まれた。

今はエンターテイメント色が強いけれど、先人たちの屈強な時代があって今がある。

性別では女性でないからこそ、極端なカツラやメイクアップで自身をパロディ化しながら、

フェミニンで美しい女性像=夢を、そこに投影する。

ドラァグ・クイーンの世界は自己表現の場でもあるんだよ。

自分らしく生きる。僕はその道を選んだんだ」。

 

 

―It’s all on you. すべてがあなた次第―

「僕に『まだ若いんだから、学校に行くべきだよ』という人がいるけど、

僕にはやりたいことが別にある。僕にとっては、働く時間のほうが大事なんだ。

だから(学校の)勉強は独学してる。It’s all on you. すべては自分次第。

夢を追うばかりで生活をないがしろにするのは、(生きる)努力が足りないと僕は思っている。

だから生活のためにバリスタをしている。衣装やフェイクネイルにもお金がかかるしね!」

 

―10年後の自分は、どうなっていると思う?

「変わらずに自分らしく生きている。

有名になって、フルタイムでステージの仕事をしている。きっとね!」

 

 

ジョーダンへのインタビューは3月の終わりだというのに冬のコートが必要なほど寒い日でしたが、

彼のニューヨークライフは、私の想像をはるかに超えた胸が熱くなるストーリーでした。

 

16歳で自立なんて。しかも、すでに夢を見つけて働いていたとは。

 

 

マンハッタンまでジョーダンのパフォーマンスを見に行きました。

堂々と(19歳とは思えない!)観客を大いに笑わせ、魅了するジョーダンを見ながら、

私は、この仕事は彼の天分なのだと思いました。

 

10年後、彼は本当に大スターになっているかもしれません。

 

 

ニューヨーカーは、皆がそれぞれに個性的で面白いストーリーを持っています。

これからも、ニューヨークの暮らしを通して出会う人々や、出来事を

ここに書き留めておきたいと思っています。

 

 

Photo : Moeka Nakamura

 

 

text:上野 朝子

 

 

◆こだわり女子のモノコトWebマガジン「PeLuLu」より

 

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