CULTURE & LIFE
最近、目まぐるしくお店が入れ替わっているパリのマレ地区。
近所でも古いお店が閉まったり新しいお店がオープンしたり。
それで私たちのお店、メロディグラフィック2店舗とも看板を新しく書き替えてもらうことにしました。
看板を外すと、60年ほど前に書かれた文字が現れました。
”La poussière d’Or”とは“金の塵”という意味。時間の経過によって文字がいい感じにかすれて魅力的になっています。
金箔で塗られたためにこの文字は消せないとのこと。仕方ないですが、昔の文字の上から黒のペンキで塗ってから文字を書いてもらいました。今回も金箔で仕上げてもらって、時間の経過と共に文字がかすれていってほしいな…と思いながら。
アンリさんというペンキ屋さんにお願いしたのですが、偶然にも、36年前にもメロディグラフィックの看板を書いてくださった方だったのです。これにはびっくり。
そして、世界は狭いと思った出来事がまた続きました。
ある日数分だけ用事で家から出た時のこと、向かいからやってくる人たちに「Hitomi?」と声をかけられました。
懐かしい顔が3人、目の前に現れて、そのうち1人はにニーヨークに住んでいるはず。???
聞けば、アメリカ人の友達はニューヨークからイギリスに引越しておりパリに奥さんと旅行に来ていて、その日がパリに到着したばかりの夜でした。韓国人の友達は7歳と5歳の女の子がいて3人目がもうすぐ産まれるとのこと。その昔、フランス語のクラスで一緒になり、当時毎日一緒に過ごしていた仲間たちです。
アメリカ人の友達はコルドンブルー(パリで設立された料理教育機関)で料理、お菓子、ソムリエの資格をとって週に3回は私たちを呼んで食べきれない程の料理、デザートを作ってくれていたのでした。
当時からマレ地区に住んでいた友達の家では、窓から屋根に登ってアペロしたり、セーヌ川沿いでピクニックしたり、レストランを色々試したり…楽しい思い出ばかり。
話が止まらないので、以前一緒に行っていたバーにアメリカ人の友達とその奥さんと一緒に行くことに。
昔と変わらない場所があるのも嬉しい。
バーの中にはアブサン(安価でアルコール度数が高いので中毒性があり、ゴッホやトゥールーズが身を滅ぼしたお酒)の名残が。昔の公衆電話も店内に設置されたまま。こちらのオーナーは近所に古いカフェ3軒経営されてますがずっと続けていってほしいお店の一つです。
当時と変わらない、友人たちの優しい眼差しと明るい笑顔に癒されます。
人生、出会うべき人に出会っているのだな…と確信した美しい夜でした。
text:竹内 仁海
パリ在住11年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。
Instagram:@melodiesgraphiques
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