CULTURE & LIFE
クリエイティブチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第93回目のテーマは「やさしい気持ちになれる映画」です。
Do it Theaterの洲崎真紀子(すさきまきこ)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
4月に入り、新しい生活がはじまった方も多いのではないでしょうか。この時期は、初めてのことや慣れないことの連続で、知らず知らずのうちに頑張りすぎてしまうこともありますよね。そんな時は肩の力を抜いて、映画に身を委ねてみるのも、いいものです。
さて今回は「やさしい気持ちになれる映画」をテーマに、『悲しみに、こんにちは』『すれ違いのダイアリーズ』『クレアモントホテル』の3作品をセレクトしました。新生活でちょっと疲れた方におすすめしたい作品です。ぜひ、チェックしてみてください。
Index
邦題が秀逸。少女の涙に胸を打たれる感動作
Illustration_skpn
title:『悲しみに、こんにちは』
【story】
ある病気で両親を亡くした少女フリダは、叔父夫婦のもとで暮らすため、バルセロナからカタルーニャへと引っ越すことに。母親の入院中、祖母たちに甘やかされていた彼女を、叔父と叔母、そしていとこのアナは温かく迎え入れるが、“家族”になるにはお互い時間が必要で…。
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最初にご紹介するのは、スペインの女性監督カルラ・シモンが手がけた、監督自身の幼少期の体験をもとにしたヒューマンドラマです。
作中でとても印象的なのは、観察するように周囲をじっと見つめる主人公フリダの眼差し。慣れない環境の中で抱える寂しさや緊張、不安をひしひしと感じることができます。優しい叔父夫婦にもなかなか心を開くことができず、気持ちをうまく表現できないもどかしさや苛立ちといった心の機微が、とても丁寧に描かれています。同じ時間を過ごしていく中で、少しずつ打ち解けて笑顔が増えていく様子と、ラストでフリダの感情が溢れ出した瞬間、穏やかな感動に包まれます。
環境が変わると、誰でも不安を感じてとまどうもの。馴染むのに時間がかかるのはあたりまえで、焦る必要はない。自分のペースでいいんだということに気づかせてくれますよ。
会えなくても、恋ははじまる。
©2014 GMM Tai Hub Co., Ltd.
title:『すれ違いのダイアリーズ』
【story】
都会から離れて、水道も電気もなく、携帯電話もつながらない田舎の水上学校に赴任したソーン。失敗ばかりで自信を失っていたある日、前任の女性教師エーンが残した日記を見つける。そこには、自分と同じように僻地の学校で寂しさを感じ、子どもたちや遠距離の恋人との関係に悩む心の内が綴られていた。
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続いてご紹介するのは、タイの首都バンコクだけで100万人を動員する大ヒットを記録した感動のラブストーリーです。
舞台のメインは、田舎の水上学校。もし自分の新しい職場が、同僚はおろか先輩も上司もおらず、携帯も繋がらない、水道も電気も通っていなかったら…考えただけでも心細すぎますが、本作はそんな環境の中、日記を通してプラトニックな恋を育む男女の物語となっています。大切な人や夢中になれるものがあると、ちょっと落ち込んでいても元気になれたりしますよね。ソーンにとって、日記はまさにそんな存在。単なる興味から「なくてはならない大切なもの」に日記が変わっていく過程で、エーンに惹かれていきます。会ったことのない相手を想う純粋な恋心に、やさしい気持ちにさせられること間違いなしの一作です。
主人公とヒロインの視点が交互に描かれているのもポイント。それぞれに抱える事情や決断に思いを巡らせながら迎えるラストシーンは、グッときます。
人生とは、出会いと別れの繰り返し。
Illustration_skpn
title:『クレアモントホテル』
【story】
ロンドンの街角にある長期滞在型ホテル「クレアモント」にやってきた老婦人パルフリー。ある日、婦人はロンドンに住む孫をホテルの食事に誘うが、一向に返事がこない。ホテル仲間たちは、いつ孫が訪ねてくるのかと興味津々。困った婦人は、ひょんなことから出会った小説家志望の青年ルードに、孫のふりをしてほしいと頼む。
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ラストはイギリスの女性作家エリザベス・テイラーの小説が原作で、出会いと別れをテーマに、老婦人パルフリーと青年ルードの心の交流を描いたドラマをご紹介します。
パルフリーを演じたのは、イギリスのベテラン女優ジョーン・プロウライト。優しく気品溢れるパルフリーをチャーミングに演じています。彼女が教えてくれるのは、一生忘れることのできない出会いがある喜び。そして、別れは悲しいばかりではなく、共に過ごした時間は記憶の中で生き続ける…といった人生における大切なこと。ともすると説教くさい映画になりそうなものですが、心優しき青年ルードとホテルに滞在する個性豊かな仲間たちとの可笑しなエピソードのおかげで、散りばめられた不偏的なメッセージの一つ一つが、じんわりと心に優しく響いてきます。そして何より、ルードのイケメンぶり(笑)。観終わったら、きっと幸せな気持ちで満たされるはずですよ。
新しい出会いを心から楽しもうとするパルフリーの姿勢も、見習いたいものです。
今回は「やさしい気持ちになれる映画」をテーマに、『悲しみに、こんにちは』『すれ違いのダイアリーズ』『クレアモントホテル』の3作品をご紹介しました。忙しない日々の中で、つい忘れてしまう大切なことや自分の気持ちに気づかせてくれる作品たち。心に余裕がないときこそ、おすすめです。ぜひ、チェックしてみてください。
『悲しみに、こんにちは』
『クレアモントホテル』
2005年 アメリカ・イギリス 108分
text :洲崎真紀子(すさきまきこ)
これまで興行会社やNPOで映画関連事業に携わる。現在は小さな娘と一緒に映画を楽しむ方法を模索する日々。グザヴィエ・ドランの初テレビドラマ『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』を見たくて仕方がないのですが、まずは彼の出演作『幻滅』(2023年4月14日公開)を見ることにします。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
edit_Takehara Shizuka
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