kiitos.
微生物と人間はともに生きています。その理由が理解できたら、今度は菌とどのようにつき合うべきかを考えよう。そのヒントが隠れているのは便の中。目には見えない腸内細菌たちの状態を、身体の中を旅してきた便が教えてくれます。
食べ物はどのようにして消化吸収され、便になるのでしょうか。過酷な旅の道中、7つの関門を潜り抜けて立派な便になったたまごくんの物語。
Index
教えてくれたのは…
腸内環境研究者/「株式会社メタジェン」代表取締役社長CEO・CGDO 福田真嗣先生
2011年にビフィズス菌が腸内でつくる酢酸による腸管出血性大腸菌O157感染予防の分子機構を明らかにするなど、腸内環境分野において最先端の研究を行う。著書に『おなかの調子がよくなる本』(KKベストセラーズ)などがある。
便から得た腸内環境情報で健康維持ができる時代が到来
突然ですが、排泄後に自分の便をじっくり観察した経験はあるでしょうか? 「振り返りもせず、便をトイレに流してしまうのはもったいない!」と話すのは、腸内環境研究者の福田真嗣先生。便の中には腸内細菌の遺伝子や代謝物質など、腸内環境に関する多くの情報が詰まっていて、最先端のテクノロジーを用いて調べれば、現在の健康状態や病気のリスクを評価することができます。便から、「どのような細菌がどのくらいいるか」を調べる遺伝子解析メタゲノミクスと、「どのような代謝物質がどれくらいあるか」を調べる代謝物質解析メタボロミクス、このふたつの解析から得られた情報をバイオインフォマティクスにより統合解析することで、腸内環境のコントロールを見据えた腸内環境の評価と制御が可能な時代になったのです。
しかし、この解析は専門機関に頼らないとできないもの。そこで、誰でも簡単に自分の健康状態を測る習慣として便を見るクセをつけてほしいといいます。
「たとえ一瞬でも便を見る習慣を毎日続けることができたら、いつもと違う便が出たときに、身体に異変が起きたサインとして気づくことができます」(以下、福田先生)
理想的なのは黄褐色をしたバナナシェイプの便。健康状態が良好である証なので、そのとき食べていた食事や生活習慣を維持していけばよいのです。スマートフォンで毎日の食事を撮影したり、ウェアラブルデバイスで生活習慣を記録するのもおすすめ。
「便からの情報を元に生活習慣をあらためれば健康を維持でき、さらには健康寿命を延ばせる可能性もあります。便はまさに“茶色い宝石”なのです」
①食べ物を口の中に入れると、咀嚼により細かく砕かれ、唾液と混じり合います。唾液には消化酵素・アミラーゼが含まれており、この働きによって食べ物は消化吸収されやすい状態に。食べ物が便になるまでの時間は個人差があるものの約24〜72時間。長い旅路はここからはじまります。
②口から胃へと続く通り道。ここでは消化吸収は行われません。
③胃に到達すると、アミラーゼが混ざった食べ物をさらに溶かし消化。胃から分泌された胃液には消化酵素・ペプシンが含まれており、食べ物の中のタンパク質の一部が分解されます。胃液には殺菌効果がありバクテリアなどの侵入を防いでいて、ここで食べ物の中にいた菌や付着していた菌の多くは死にます。しかし、食べ物により薄まった胃液の中では一部の菌が生き残り、下部消化管へと流れ出ていきます。
④胃で溶かせなかった脂肪は十二指腸で処理。ここでは肝臓から分泌される胆汁と膵臓から分泌される膵液が食べ物に混ぜられ、脂肪分は乳化状態に。また、胆汁に含まれる色素・ビリルビンにより便に色づけがされます。
⑤次に向かうのが小腸。食べ物が早く通過する前半部の空腸と、ゆっくり通過する後半部の回路状をした回腸を合わせて6〜7mもの長さが。粘膜にある腸絨毛(ちょうじゅうもう)より、食べ物の栄養素の多くはここで吸収されます。
⑥便をつくる最終段階である大腸へ。小腸で吸収されなかった水分や食物繊維が運ばれてきて大腸前半部の上行結腸では水様状、下行結腸で半流動になり、S状結腸で固まってきて、直腸に到達する頃には完成された便になります。
⑧肛門を経てついに便が外界に放出され、トイレの中で出会うことに。旅は終わります。
こんなうんち、大丈夫?
食べ物が原型のまま出てきた
「スループット食材」と呼ばれるひじきやトウモロコシなどの食物繊維を多く含む食品の場合、そのまま排泄されることも。もともと消化吸収がされにくいだけなので気にしなくても大丈夫。
フワフワ水に浮く
浮く・沈むということもさほど気にする必要はありません。水に浮く軽い便の場合、繊維質の食材を多く摂っている証拠。反対にタンパク質が多い便は、同じ量でも分量が増し、水に沈みやすいのだそう。
緑色をしている
暴飲暴食や刺激物を食べすぎると、胆汁が腸でうまく再吸収されず、滞留時間が長くなることで酸化が進み、緑っぽい便が出ることも。これが続くようならば、専門家の診断を受けてみて。
便は何からできているの?
体調や食べたものなどで割合が変わるが、70〜80%は水分。残り20〜30%の固形物のうち約半分は腸内細菌で、残りが食物繊維をはじめとする消化されなかった食べ物のカスと新陳代謝によって腸の壁から剥がれた粘膜。腸内細菌の約2/3は死骸で、残りの1/3は生きたまま便に含まれています。
毎日観察することが大切〈うんちの種類から読み解く健康状態〉
1. コロコロ状
長時間、腸に滞留していたために水分量が異常に少なく、ウサギのフンのようにコロコロしていて硬い。色は酸化したために黒っぽい。便秘の人に多い便。
2. カチカチ状
ブドウの房のような形状をしていて、ごつごつとして硬い。やはり便秘の人に多い便。
3. やや硬い便
表面がひび割れたソーセージ状の便。水分量はやや少ないが、正常な範囲の便。
4. 快便
黄褐色でバナナのような形をした理想の便。表面がなめらかでキレがよく、トイレットペーパーで肛門を拭いても付着しにくい。
5. 半練り状
はっきりしたシワのある、半固形型の軟便。水分が多く、水に沈んでも崩れない。健康状態を気にするほどではない、正常な範囲の便。
6. ドロドロ状
泥のようにべちょべちょした小片便や泥状の便。腸内に留まっている時間が短いことから水分量が多い。
Illustration : Aki Ishibashi edit&text : Ai Watanabe re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.24(2022年6月30日発売)より抜粋。
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