kiitos.
大人になっても、その響きだけで子どもの頃と同じように心が躍る。遠い場所へ出かけたり、会いたい人に会ったり、まだ叶えられないこともあるけれど、特別な夏休みにするアイデアは、あなたの心の中にきっと眠っているはず。
少し湿った潮風の香り、濃い緑と土のにおい。夏になると思い出すその懐かしい香りに、胸がぎゅっとしめつけられる。暑さとともに運ばれる記憶の断片をたどりながら、さて今年はどんな香りの思い出ができるのだろう。
Index
教えてくれたのは…
東京農業大学 生物産業学部 食香粧化学科 妙田貴生教授
食品や化粧品の製造・品質管理を化学的に研究する、日本で唯一の「食品香粧化学科」の教授を務める。おいしさの決め手やハーブ・薬草の機能性を香りから探求。
TOPIC① 思い出の中の懐かしさと紐づく“香りの不思議”
夏の香りとは何か
「香りは、自分の中にある“懐かしさ”と紐づいています」と、東京農業大学生物産業学部食香粧化学科で香りの研究を行う教授の妙田先生は言います。
香りは、においを嗅ぐことで感じる以外にも過去に経験した“思い出”と紐づくのだそう。そのため、「夏らしい」と感じる香りは、実は人によって異なるもの。夏によくスイカを食べる人ならスイカの香りで夏を思い出すし、毎年キャンプをしている人なら焚き火やバーベキューの煙のにおいや、あるいは自然の中の空気でも、ふと夏を思い出すかもしれません。つまり、これまでに体験してきたことの記憶とその香りを照合して、“夏を思い出している状態”が、その人にとっての“夏の香り”なのです。
また、レモンや梅干しを見ると食べていなくても「酸っぱい」と感じるように、香りも、視覚や味覚が合わさって記憶されるので、香りで夏を思い出すこともあれば、目や舌で感じたものに夏の香りを想起するケースも。「夏と聞いてどんな香りを思い出すかは、人によってさまざま。だからこそ、香りはその人の人生と文化そのものだと言えるでしょう」
香りで“次の行動”に誘導する
香りの効果・効能と言えばアロマテラピーが代表的で、香りによって気持ちが落ち着いたり、眠りやすくなる効果が知られている。また、ひのきのように香り自体が抗菌作用を持つものや、レモングラスのように虫よけになるものなど、暮らしの中で役立つ香りは身近にも多いということもよく知られるところ。しかし香りの効果はそれだけでなく、“次に取る行動を促す効果”もあるといいます。
「香りの効果はリラックスとリフレッシュに大別されますが、例えば、仕事でやる気を出したいときにはすっきりと清涼感のあるミントの香り、落ち着いて本を読みたいときにはリラックス効果の高い柑橘系やラベンダーの香りといったように、次に取る行動に合わせて香りを選ぶといいでしょう」
うだるような暑さをどう乗り切るのか、今年はどんなことをしたいのか。夏休みの過ごし方によって選ぶ香りも違ってきます。まずはスケジュール帳を開いて、夏休みの設計 書を描くことからはじめてみてはいかがでしょう。
TOPIC②夏の香りの選び方
自分の記憶にある“思い出の香り”を、夏をたっぷりと味わってみよう。
✔︎思い出から
いいことがあった日の香りを思い出す
記憶をさかのぼって、ノスタルジックに香りを選ぶのもおすすめ。お気に入りのカフェで飲む少し苦いコーヒーの香り、お日さまにたくさんあたった布団と洗濯物の香り、ラジオ体操後のご飯が炊けるにおいと味噌汁の湯気。いいことがあった日の香りは、思い出すだけで気持ちを満たしてくれます。あの瞬間のすてきなことを反すうしながら同じ香りを楽しむ夏も、いつかの日かまた思い出に。
✔︎好みで選ぶ
好きな香りはずっと嗅いでも飽きない
どんなにいい香りだとしても、好みでなければよい効果は得られません。まずは、どんな香りが好きなのか自分を観察してみること。柑橘系、フローラル系、フルーティ系、オリエンタル系、ウッディ系など、香りの種類は千差万別。また、香水や化粧品で使われる香り以外にも、思い出の中から好きな香りの傾向を考えてみてもよいでしょう。好みの香りが見つかれば、夏を香りで彩る楽しみを味わえるはず。
✔︎気分で選ぶ
効果は気にせず気分が上がるものを選ぶ
行動計画が決まっていても、香りを楽しむ気分にならなければ意味がありません。疲れの溜まり方やストレスのかかり方によっても、心地よく感じる香りは変わってきます。そんなときは、行動に合わせて香りを選ぶのではなく、いま一番気分を盛り上げてくれる香りを選ぶようにしてみましょう。もし気分が乗らなければ無香料だってOK。夏休み気分を高めてくれる香りとは何か、考えてみよう。
✔︎行動で選ぶ
夏休みの行動計画に合わせて香りを選ぶ
夏休みの計画が立て終われば、予定に合わせて香りを選んでみましょう。例えば、どんなに暑くてもアクティブに動き回る日には、レモンやペパーミントの香りで集中力を高めてみる。もしくは、自宅でゆっくりと疲れを癒す日にするなら、ローズやラベンダーの香りといったように、その日の行動に沿った香りで、“モード”を切り替えることが可能。香りを上手に活用すれば、夏はもっと楽しい!
TOPIC③過ごし方別夏の香り
思い出の中の夏の香りは、まるで宝物のようにきらめき、まぶしくて、思い出すだけでドキドキと胸が高鳴るものばかり。夏休みのワンシーンを思い起こすアイテムで、ときめく時間を過ごしてみては?
✔︎海の気分で
海の家でラムネを買って、灼けるような砂浜をビーチサンダルで歩く。スイカの香りの日焼け止めが、潮風に乗って甘くさわやかに鼻孔をくすぐった。太陽を反射して輝く瓶の中、どうやってビー玉を入れるのかは大人になってもわからない。̶ ̶ 海が恋しくなるアイテムで過ごす、夏の一日。
✔︎旅の気分で
車窓の景色がゆっくりと流れていく。ひまわり畑はもう過ぎた。お母さんが「暑いから帽子を忘れないで」と言ったあの日から、夏のおでかけには麦わら帽子が手放せない。大人になってからは、子どもの頃よりも帽子を目深にかぶるせいか、独特の香りをより近く感じる。セミの声を聞きながら駆けずりまわって遊んだあの頃。懐かしい街まで後少し。
✔︎爽快な気分で
汗ばむ日こそ気分がすっきりする香りのアイテムに手が伸びる。気持ちを切り替えたいならリフレッシュ効果の高いミントを、見た目にも涼やかな梅は酸味も一緒に楽しみたい。身体が自然と清涼感を欲しているのか、または苦手と言いながら夏が好きなだけなのか…はてさてどっちだろう?
✔︎夕涼みしながら
遠くで雷鳴が聞こえた。綿あめみたいな入道雲が、夕立を連れてくる。一雨降れば、この暑さもきっと少しはマシになるだろう。こんな日には、縁側や広い畳の上でごろりと寝そべりたいけれど、ここはアパートの一室。せめてベランダで冷えたビールでも飲みながら、読みかけの本でも開こうか。蚊取り線香に火をつけて、今日は都会の夕涼み。
✔︎避暑地気分で
暑さで疲れが溜まりやすい季節だからこそ、リラックスすることは大事。夏の盛りに見頃を迎えるラベンダーの香りには、癒しの効果が高いそう。バスタイムにもぴったりなパウダーは、ゴマージュで使えばもっと香りを感じやすい。ラベンダー畑にいるかのような、濃厚な時間を過ごしてみて。
✔︎地元の河原で
煙に追われて、笑い声が河原に響く。鮮やかに吹き出す闇夜の火花。回転花火に逃げ惑い、水中花火には心奪われ、打ち上がった閃光を仰ぎ見る。久しぶりの火遊びに高揚感を覚えながら、変わらない夏の夜をかみしめて、心はどこか安堵していた。線香花火にこっそり願かけしたあの頃の甘酸っぱさを、煙の香りでいまも思い出す。
photograph:Masahi Konagaya edit & text:Kaoru Bansho re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.20(2021年8月6発売)より抜粋。現在は販売が終了しているアイテムもあります
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