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金沢21世紀美術館で来年の2月末まで開催している、ミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースの「ダブル・サイレンス」展。

濃厚すぎるこの展覧会、あまりにもオススメなので、今回は前編・後編と2回に分けてご紹介。

 

金沢21世紀美術館「ダブル・サイレンス」展

ミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダース。

国際的に活躍するアーティストのふたりだそうだが、正直その名前は聞いたことがなかった。

 

けれどフライヤーを一目見た時から、絶対観にいくと決めていた。

漏れ出るほどの、この圧倒的“ただごとでない”感。

これはきっとすごいぞお、と、自分の直感を信じて、いざ金沢。

 

金沢21世紀美術館に着くと、この日はちょうど金沢市民無料開放日だったこともあり、エントランスホールには地元市民と観光客がごった返して長蛇の列。

 

チケットを手にした人々が一斉に向かう先は、SNSでお馴染み、レアンドロ・エルリッヒの 《スイミング・プール》。

© Leandro ERLICH 撮影:渡邉修

 

プールの下に入るためには2時間待ちとのこと。

「映え」の概念に愛憎入り混じる、いわゆる「こじらせ」タイプのわたしはディズニーのアトラクションばりの行列を横目に「ダブル・サイレンス」展へ直行。

 

静寂と不穏、押し黙る作品たち

「ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダース|ダブル・サイレンス」(金沢21世紀美術館、2020-21年)での展示風景  撮影:木奥惠三

 

プールに並ぶ賑やかな行列から少し離れた展示室は、まるで別空間。

まず飛び込んでくるのはマンダースの立体作品、《4つの黄色い縦のコンポジション》。

マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》2017–2019 Photo: EPW STUDIO Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp & Tanya Bonakdar Gallery, New York

 

大きな4つの人間の顔。

乾いた粘土のように見える脆い質感の肌には無数に亀裂が入り、所々ひび割れ、展示室の床にまでぼろぼろと崩れてしまっている。

彼らの左目から左頬にかけてめりこんだ黄色の木片が、い、痛そう…。とわたしたちは思わず顔を歪めるけれど、作品たちの表情は眠るような穏やかだ。

 

ミヒャエル・ボレマンス《天使》2013 Photo: Peter Cox Courtesy: Zeno X Gallery,Antwerp

 

「ボレマンスのモナリザ」とも呼ばれるこの作品のインパクトもかなり強烈。

《天使》と題された、約3mある大きな絵画作品。

そこには顔を黒く塗られ、俯きがちに佇む大きな人。誰かに着させられたようなピンクの薄っぺらいドレスの袖からは、異様に筋肉質でたくましい腕がだらりと伸びている。

 

これが《天使》って…。

観れば観るほど意味深な作品に、胸がざわざわする。

 

Michaël Borremans“Red Hand, Green Hand” 2010 Photographer:Peter Cox Courtesy:Zeno X Gallery Antwerp

 

ボレマンスとマンダースの作品が混在するように展示されるこの展覧会。

耳鳴りに似た無音と胸のざわつきがずっと止まらなくて、不穏を孕んだ静けさに、自然と呼吸が浅くなっていく。

 

何か取り返しのつかないことが起こる直前の、静かな「溜め」。

『ジョーズ(Jaws)』で大鮫が出てくる直前の、「ダーダ ダーダ」ってところがずっと続く感じ。

こんなに心臓に悪い展覧会、ある?

 

めちゃくちゃ面白いけど、これわたしの体が持つかしら。

無理矢理に深呼吸を繰り返し、次の展示室へ。

 

【予告】いよいよ「沈黙」が最高潮へ。「ダブル・サイレンス展」後半戦。

展示室を進むにつれて高まっていく「沈黙」の純度。

マンダース作品に関するさらなる衝撃の事実と、2人の天才が仕掛ける息苦しさ抜群の傑作とは。

 

わたしの心臓、お願いだから最後までもってくれ!

(後編に続く)

 

カトートシ

1991年生まれ

大学時代は文学批評を専攻。

書店員や美術館スタッフ、カナダでのライター経験を経た後、

2018年よりカトートシとして活動を開始。

現在は大学で働く傍ら、カルチャー関連のエッセイ等を執筆。

カトートシという名前は、俳人である祖父に由来するもの。

Instagram:@toshi_kato_z

 

 

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