FUDGENA

癒しを求めていざ箱根へ

最近とても疲れている、と感じる。

 

20代後半になり、体力が衰えているのだろうか。

いや、それにしても、だ。

ここ最近、気がつけば特に用事がない限り家から出ていない。

 

たしかに未知のウイルスのせいもあった。

けれど部屋の中でぬくぬくと天井を見上げながら、それを言い訳にしている自分もどこかにいる。

エネルギーが微塵も感じられず、いつもガス欠状態。

疲れないように、疲れないように、と何をやるにも省エネモード。

あと数年で20代も終わる。

これではいけない、ここらで一旦疲れをリセットしなくては。

 

疲れをとるといえば温泉、温泉といえば箱根。

マジカルバナナ方式(知らない人は各々検索!)で行き着いたのは、人生初の箱根の地。

 

新幹線の窓から見える富士山には目もくれないで温泉の効能について調べまくる、とにかく癒しに貪欲な旅のはじまり。

 

ある日曜の昼下がり、パジャマ姿のまま重力にめちゃくちゃ従順なわたし

 

癒されたい!!

箱根は日本が誇る最高の温泉地のひとつ、

ここの湯はさぞかし疲労によかろう。

疲労回復、筋肉痛、肩こり、冷え性、神経痛、リウマチ、美肌作用…。

まるで呪文のように効能をぶつぶつ唱えながら、

朝から晩、全身がふやけにふやけるまでずっと湯に浸かっていた。

宙に浮くように体が軽い、生まれ変わった明日のわたしを夢見て…。

 

しかし翌日、目を覚ますと全身がいつも以上に重い!

これはマッサージの翌日に体が痛む「揉み返し」の温泉版。

だるさが何層にもなって体の表面を覆っている感覚。

おまけに敏感肌なもんだから熱い湯が刺激となって肌が荒れてしまった。

 

癒されようと必死すぎて、逆に疲れてしまうという悲劇。まじなんなの。

 

 

箱根 彫刻の森美術館

チェックアウトを済ませたわたしにフロントのお姉さんがオススメしてくれたのが、宿から徒歩圏内にある屋外美術館、「箱根 彫刻の森美術館」。

パンフレットには箱根の山々をバックに彫刻作品がそびえ立つ。

 

帰りの新幹線まであと3時間。

なにこれ面白そうという気持ちと、え〜外とか寒そう疲れそうという気持ちが半々だったけど、その日は天気が良かったので僅差で前者の勝利。

重い体を引きずって、いざ。

 

 

コンクリートの入場ゲートを抜けると目の前に広がるのは、これでもかというほど雄大な箱根の大自然。

「空は高い」というシンプルな事実が、なんだかぐっとくる。

 

カール・ミレス『人とペガサス』: 館内展示だったら全然違う印象だろうな

 

ド初っ端から感極まる情緒不安定ぶりをみせながらも進んでいくと、次々と現れる規格外の彫刻作品たちに圧倒される。

まさに、天井のない美術館。

 

作品と作品に恣意的な関係性やストーリーが発生するのも、空間を最大限に生かした屋外美術館ならではの面白さ

 

「鑑賞」ではなく「冒険」

箱根 彫刻の森美術館の敷地面積は70,000㎡。

東京ドーム約1.5個分の広々とした緑の中を散策していると、彫刻作品が突如出現する。

 

ニキ・ド・サン・ファール『ミス・ブラック・パワー』

 

バリー・フラナガン『ボクシングをする2匹のうさぎ

 

進んでいくと次から次へと出くわす、不思議で面白いいきものたち。

これ、VRもARもなにも要らない、リアル「ポケモンGO」でないの。

平成初期生まれの心の原風景。人生最初の迷いと選択。

 

歩けば歩くほど面白いものに出会えるこの屋外美術館で味わえるのは

「鑑賞」というよりも「冒険」に近い、新しい美術体験。

 

「楽しい!」と「面白い!」だけでどこまででも行けそうで、疲労とか癒しとか考える暇なんかない。

ただ好奇心の赴くままに、夢中で敷地内を歩き回ってあっという間のタイムアップ。

 

ガブリエル・ロワール『幸せをよぶシンフォニー彫刻』:ステンドグラスでできた高い塔は映えを凌駕する圧倒的神秘

 

ガブリエルの塔の前にある足湯は温泉地の箱根ならでは。ポケモンでいうとジムトレーナーに挑む前に一旦セーブするあの感じ(わかります?)

 

旅の疲れの中で

帰りの新幹線の時間が迫る中、名残惜しさを噛み締めながらバカでかい彫刻作品を見上げる。

 

そこでやっと「ああ、そうか」と気付く。

大きな彫刻作品を見上げると、自然と空を見上げる姿勢になるということ。

なるべく体力を温存し、楽に生きようとしていた自分の狡さが青い空に溶けていくようだった。

 

動けば確かに疲れる。

休息はもちろん大切なんだけど、「なるべく疲れないように」と省エネモードで生きているからこそ、消費してしまう何かがあるような気もする。

 

土田隆生『風韻』 :前向きな人間が上を向くのではなく、上を向いたことで前向きな思考が生まれることもあるのだ

 

もっと外に出よう。

知らないコトやはじめましてのキモチに、自分からどんどん会いに行こう。

 

そんなことを考えながら乗った帰りの新幹線。

心地良い疲れの中で爆睡するわたしを、大きな富士山が見ていた。

 

今回訪れた美術館:箱根 彫刻の森美術館

 

 

カトートシ

1991年生まれ

大学時代は文学批評を専攻。

書店員や美術館スタッフ、カナダでのライター経験を経た後、

2018年よりカトートシとして活動を開始。

現在は大学で働く傍ら、カルチャー関連のエッセイ等を執筆。

カトートシという名前は、俳人である祖父に由来するもの。

Instagram:@toshi_kato_z

 

 

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