FUDGENA

なぜわたしたちは靴を愛せずにはいられないのか

1㎡もない玄関に溢れかえる、カラフルな双子たち。

わたしとしては履かずとも見ているだけで胸が踊るそれらを原因にして、
一緒に暮らしている菩薩のように優しい恋人をこれまでに何度キレさせたことであろうか。

仕事から帰宅した恋人が玄関からわたしのところまで一直線にどんどこ近づいてきて、
「ただいま」よりも早い第一声。

ク・ツ・カ・タ・ヅ・ケ・ロ

 

何度も言われた呪文のようなこの言葉。

そんなこと言われたって無理。
玄関の壁面に備え付けられたシューズボックスだって、もうとっくに定員オーバーなのだ。

靴が多すぎる、それに尽きる。

 

思えば実家にいた時からそうだった。

玄関には常にビッグダディのお宅ばりに靴が並んでいたけれど、いえいえウチは5人家族。
今日は親戚の集まりですかと言わんばかりに、冠婚葬祭レベルで敷き詰められた靴たちに出迎えられるのが日常の光景。

わたしのあまりの靴の多さ(&ガサツさ)に怒った父が「こんなにたくさんいらん、捨ててまえ!」と庭にぽいぽいと放り出し、
「履くもん!全部履くもん!」と泣く泣く拾い集めた、なあんてこともあったなあ。

ああ、なんで靴ってあんなに増えてしまうんだろう。
人間の足はどう見たって2本しかないのに。

 

現代アートの巨匠に学ぶ、“靴”への偏愛

そんなわれわれの“靴”愛を肯定かつスパークさせる、最高に可愛い画集がこれ。
アメリカの芸術家でポップアートの旗手と言われるアンディ・ウォーホルによる靴のイラスト集『Shoes, Shoes, Shoes』。

 

ウォーホルといえば、マリリン・モンローやキャンベル缶スープのシルクスクリーン作品、ブリロボックスなど。

誰もが必ず一度は目にしたことのある超有名作品を生み出した、もはや説明いらずの現代美術界のスーパースター。

 

そんな彼にも売れない時代ってのがあったわけで。

生活のためにイラストレーターや商業デザイナーとして働いていた時代に彼が手がけた靴の広告イラストが、そのままお部屋に飾ってもサマになるくらいに最高おしゃれなのです。

画集の中身はこんな感じ↓

か、

かわ…

かわいい…

(恍惚&ため息)

 

靴って一体なんなのよ

掠れたラインと滲んだインク。
ウォーホルの描くイラストってどれも可愛いんだけど(末尾参照)、
特に靴をモチーフにしたイラストは、見ているだけでワクワクが止まらない。

これって、あの感じに似ている。
玄関のシューズボックスに収まらないほど靴を集めて、
それでもなお、週末になれば街に繰り出して、靴を買ってしまうあの感じ。

 

彼は自身のアイコンイメージであった靴に関連してこんな言葉を残している。

I decided that being a shoe salesman is a really sexy job.
(靴のセールスマンほどセクシーな仕事はないね)

 

この本を眺めていると、靴には「足を守る」という役割以上の何かがふんだんにあるという彼の思想がびっしびし伝わってくる。

その靴を履く人間の個性や思考や魅力をあますところなく象徴し、単なるファッションアイテム以上に意味めくもの。

 

たしかに、わたしたちが靴を見る時に、純粋に靴だけを見るってこと、ほぼないね。

スニーカー、サンダル、ヒール、革靴。
「靴」と一口に言っても、考えてみればその種類はめちゃくちゃに豊富。

靴はTPOをかなり反映するアイテムであるので、
履きたい靴を考えるとき、必然的に付属する思考のあれこれ。

この靴を履いてどこに行くか
どんな道をゆくのか
隣には誰がいるのか
そして自分自身はどんな気分でいるのか

そんなことまで自然と想像してしまう。

靴、すなわちそれは「可能性」。
「不在」であり「これから」。

 

とかなんとか、たいそうなことを言ってしまいましたが、

つまり何が言いたかったかというと、次に引っ越す時にはシューズボックスの大きな家でお願いねってこと。

 

おまけ

実はウォーホル、この画集をシリーズで製作していて、
『Shoes, Shoes, Shoes』以外にも、
『Flower, Flower, Flower』『Love, Love, Love』など、どれもとってもかわいいのです。

可愛いあの子への、とっておきの贈り物に!

 

また、FUDGEのInstagram公式アカウント(@fudge_magazine)とFUDGE.jpでは、
「FUDGE足もと倶楽部」と称して、いろんな足もとコーデを紹介中!

おしゃれ欲とお出かけ欲が相乗効果で高まること必至です。ぜひ!

 

カトートシ

1991年生まれ

大学時代は文学批評を専攻。

書店員や美術館スタッフ、カナダでのライター経験を経た後、

2018年よりカトートシとして活動を開始。

現在は大学で働く傍ら、カルチャー関連のエッセイ等を執筆。

カトートシという名前は、俳人である祖父に由来するもの。

Instagram:@toshi_kato_z

 

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