外山夏緒さんの物語の連載【誰かの話】17話めは、「トックリ家お正月恒例の家族旅行」のお話です。

 

 

17.　初夢ツアー・２０２０年の旅

 

 

毎年トックリ家が恒例にしているお正月の家族旅行ですが、

 

今年のトックリ家では

お父さんが旅行会社からオススメされたという

「タイムトラベル２０２０ツアー」に参加することになり

百年前の２０２０年に一家でやってきました。

 

父・母・兄・私のトックリ家は、一同「イカ」が大好物なので、

我々の時代では超高級食材となっている「イカ」の活き造りを

２０２０年ならまだ食べ放題できる場所があると聞き、

時空を超え、心踊らせでやってきました。

この時代の物価は少し高いけれど、「イカ」はまだとにかく安いのです。

 

一家で少し街を歩きました。

 

「牛丼屋」がこの時代にもあったことに驚き、

「ゲーセン」というものを一目拝めたことに感動して、

百年後と全く変わらぬ「街中の着ぐるみ」にはしゃぎ、

初めて見た「トイレットペーパー」を思い切って使い呆然として、

「横断歩道」の縞模様が新鮮でたまりませんでした。

 

あとそういえばこの間、こっちの時代で世界最高齢者となり

『長寿・繁栄の象徴』として表彰された、

「菅田将暉」の若かりし頃のお姿のポスターを見て

トックリ家一同心が踊ったりしました。

 

「たわし」をペットにして歩いている人はまだほとんど存在しておらず、

この時代は男性も女性もみんな背が高くかっこ良くてドキドキして、

それと意外にもこの時代の言葉がさっぱりわからなくて焦り、

あとは全く知らない景色でした。

 

 

私は、今年の冬休みに出された絵の宿題には、

このタイムトラベルでやってきた

２０２０年の旅行中の景色を描こうと思っています。

 

「この時代の写真や動画は

21世紀の終わりに世界から消失して資料が少ないから、

適当に絵を描いてもバレやしない」

と、お兄ちゃんは言っていましたが、

 

「でもこれから食べるイカの活き造りだけは心をこめて描け」

と、釘も刺されました。

 

 

百年後、ここはもう違う国になっているので、

やはりお土産には「JAPAN」という文字が入ったTシャツを

記念に買って帰りたいと思います。

 

明日は原宿あたりを歩くので、

同い年くらいの子と交流できたら嬉しいです。

 

 

 

絵をはじめ、詩や物語の制作、それらで展開したインスタレーションを行うなど、多岐にわたって活動をしている、gungulparmanの外山夏緒さん。この連載は、彼女が自身のWEBで発表していた「誰かの話」を「ラジオと火星人とコーヒーフロート篇」として、新たにグラフィック作品を加えてお届けしていきます。この世界のどこかにいるかもしれない「誰か」の日常を切り取ったお話を、お楽しみください！

 

Text & Illust_Toyama Natsuo

 

外山夏緒

2015年より、絵や詩、物語で展開したインスタレーションなどの美術活動をスタート。他、イラストレーション、空間装飾、グラフィックデザインなどで活動中。その他、自身のプロダクトブランドgungulparmanでの商品制作やアートワークなども行う。

WEB：gungulparman.com

Instagram：@gungulparman

 

 

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