第15話:セッション/ ターコさんと白ヤギさんの話 連載【誰かの話】 | 誰かの話 | カルチャー & ライフ | FUDGE.jp

CULTURE & LIFE

 

外山夏緒さんの物語の連載【誰かの話】15話めは、「ターコさんと白ヤギさんの話」のお話です。

 

 

15. セッション

 

生ビール、サワー、焼酎、日本酒を駆け抜けて、

ターコさんはいま、ゴールデン街の光をバッグに、

ユラユラと直立している。

一人ではない。「白ヤギさん」と一緒である。

 

・・・

 

「えー、こちらの方はぁ、

先ほどそこの赤提灯の飲み屋さんで友だちになりました、

白ヤギのメェちゃんですぅ」

 

メェ メェ

 

「こうやって抱っこするとぉ、

とってもあったかいんですぅ」

 

メェ メェ

 

「一緒に飲んでくれてぇ、

今まで誰にも言えなかった私の愚痴をぉ、

メェちゃんはメェメェと聞いてくれたのですぅ」

 

メェ メェ

 

・・・

 

真面目なターコさんは

人生で一度たりとも誰にも漏らしたことのなかった

「愚痴」というものを

たまたま隣に居合わせた白ヤギさんに全て吐き出した。

 

白ヤギさんは横でターコさんの愚痴を聞きながら、

それを一字一句漏らさず丁寧にノートに書き取った。

ノートはみるみる真っ黒になった。

 

白ヤギさんは酒の肴に、

真っ黒になったページを一枚ずつ破っては、

ニコニコしながらそれをムシャムシャと食べた。

 

ターコさんの生まれて初めて吐き出す愚痴は止まることなかった。

なのでそれを書き取る白ヤギさんのノートは

次から次に真っ黒になった。

 

そして白ヤギさんは、真っ黒になったページを

口に運んではムシャムシャと食べてるうちに、

 

 

ついに白ヤギさんから「黒ヤギさん」になってしまった。

 

 

愚痴を一滴残らず吐き出してスッキリしたターコさんも、

黒ヤギさんになった白ヤギさんも、今、

ゴールデン街の光をバッグに

ユラユラと夜風に当たっているところだ。

 

明日からまた生きていくのだ。

 

 

 

 

絵をはじめ、詩や物語の制作、それらで展開したインスタレーションを行うなど、多岐にわたって活動をしている、gungulparmanの外山夏緒さん。この連載は、彼女が自身のWEBで発表していた「誰かの話」を「ラジオと火星人とコーヒーフロート篇」として、新たにグラフィック作品を加えてお届けしていきます。この世界のどこかにいるかもしれない「誰か」の日常を切り取ったお話を、お楽しみください!

 

Text & Illust_Toyama Natsuo

 

外山夏緒

2015年より、絵や詩、物語で展開したインスタレーションなどの美術活動をスタート。他、イラストレーション、空間装飾、グラフィックデザインなどで活動中。その他、自身のプロダクトブランドgungulparmanでの商品制作やアートワークなども行う。

WEB:gungulparman.com

Instagram:@gungulparman

 

 

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