CULTURE & LIFE
「おしゃれな人のルームツアー」企画では、FUDGEにまつわる素敵なあの人の部屋にお邪魔して、ルームツアーを開催!「部屋」はその人の好や性格を表す場所でもあり、普段見ることのできない場所だからこそ気になるところ。インテリアのこだわりや収納術、生活のアイデアなどをぜひ参考にして、あなたも自分だけの心地よい暮らしを叶えて!

第15回目では、FUDGEのスナップ企画にも参加してくれているアパレルディレクターのhinaさんの住まいを拝見。現在デンマークに留学中の彼女が住んでいるのはどんなお部屋?
Index
きっかけは旅行での出会い。大人も学べるデンマークの留学事情は?

今年の8月末からデンマークのユトランド半島で留学をしているhinaさん。そのきっかけは2年前のデンマーク&スウェーデン旅行のようです。
「旅行で訪れた際に、現地の人々の穏やかな空気感や街並みに感銘を受けたんです。日本での生活との間に大きなギャップを感じ『この国の人々の価値観や文化をもっと自分の中に取り入れたい』と思いました」
その後、友人から北欧独自の“大人のための”教育機関「フォルケホイスコーレ」を教えてもらったそう。北欧の文化や価値観について本やウェブで調べるうちに今の学校に出会ったといいます。
「フォルケホイスコーレにはさまざまな分野の学校がある上、農業やマインドフルネスなど、多様なコースもあります。私は日本に帰ってからも活かせるスキルを学びたくて、昔から好きだった手工芸に特化したデンマークのスカルス手工芸学校を選びました」

留学は12月末までを予定しているものの、毎日が楽しすぎて、延長も検討しているとのこと。そんな彼女は今、学生寮で生活を送っています。
“暮らしと学びが地続き”な寮生活が心地いい。
「通っている学校が全寮制のため、自然と学校附属の寮に入ることになりました。約6畳のワンルームで一人暮らしをしています。校舎の2階が生活スペースになっていて、夜遅くまで作業したり荷物を取りに授業の合間に部屋へ戻ったりと、とても自由に過ごせています。“暮らしと学びが地続き”な感覚が心地いいですね」

机や椅子など、部屋の家具はすべて備え付け。「学校の備品なのでブランドを特定することは難しいのですが、おそらく〈ハンス・ウェグナー〉や〈シカ・デザイン〉のものを採用していると思います。中でもお気に入りは2脚の椅子と照明、刺繍のモチーフが飾られた小さな額縁。デンマークらしいシンプルで上品なデザインのドアも可愛らしいですし、入寮した瞬間から『私好みの部屋だ……!』と思いました。」
制限された空間で作る北欧らしいお部屋
寮という制限された空間ながら、こだわりを持ってお部屋づくりを楽しんでいるhinaさん。デンマークでよく見かけるシンプルで洗練された部屋の空気感を取り入れることを意識しているようです。
「『ルイジアナ美術館』で購入したポストカードやデザインミュージアムで見つけたファッションの専門誌、授業で作った作品などがこの部屋を彩ってくれています。ただ、ものは増やしすぎずに温かみのある色味で自分が愛着を持てるアイテムだけを並べるようにしていますね。色のトーンも抑えめにして、自然の色合いと調和するような落ち着いた雰囲気にしたいんです」

キャビネット上のディスプレイスペースは色やラインを揃えてすっきりと見せるのがマイルール。手描きのイラストなど、ちょっとした遊び心も加えているのがキュンとくるポイントです。ベッドサイドに飾ってあるハンドバックやキャビネットの柳のバスケットはhinaさんが自身で手掛けた作品だそう。

「レザーのワークショップで作ったハンドバックは最近完成したんです。革を切るところからすべて自分で制作したのですが、その過程が面白く夢中になれた時間でした。柳のバスケットはかなり根気のいる作業を経て出来上がったもので、クッキーや果物入れにもちょうどいいサイズ。もうひとつ気に入っている作品は、刺繍した布で本を製本する“ブックバインディング”というワークショップで作った本です。中古で見つけたモビールの本をベースに、表紙には好きな洋服の生地を散りばめ、裏表紙には目次や写真を切り抜いて刺繍しました。時間がかかった分、思入れのある一冊です」
いいものを長く大切に。デンマーク流の家具選び。
「寮暮らしだと家具を買うことはないけれど……」と話すhinaさんですが、街の古道具屋にはよく訪れているようです。
「デンマークで暮らす方々の多くはセカンドハンドショップで質のいい中古家具やインテリアを手に入れていると思います。素敵なアイテムが驚くほど手頃な価格で並んでいて、訪れるたびにワクワクしてしまいますね」

続けて、生活する中で感じたデンマークの方々の家具へのこだわりを教えてくれました。
「照明は長い冬を心地よく過ごすために柔らかく温かい光のものが多かったりと、家での時間を豊かにしようとするこだわりを随所に感じます。どの家庭を訪れても、そして学校の寮でさえも、丁寧に選ばれた質のよいインテリアが揃っているんですよね。それはきっと、デンマークの家具が長く使い続けることを前提に作られているから。“いいものを長く大切に使い続ける”という文化が根付いているのを感じます」
お気に入りの本ベスト3

そして今回は、部屋での一人時間では本を読むこともあるというhinaさんが大切にしている本を紹介してくれました。
①Fashionpedia(ファッション ペディア)

香港のファッション系出版社「Fashionary」によるもの。「デンマークのデザインミュージアムで購入しました。服の種類や歴史、素材まで詳しく載っていて、まるでファッション図鑑のよう。困った時に読み返して、何度も助けられています」
②COPENHAGEN(コペンハーゲン)

「コペンハーゲンを旅した方々の旅行記です。旅の前にこの本を読みながら訪れたい場所を決めました。写真も美しいんですよ」
③PSEUDOWORK(シュードワーク)〜忙しいのに退化する人たち やってはいけない働き方〜

デンマーク出身の文化人類学者、デニス・ノルマークと哲学者のアナス・フォウ・イェンスンによる人生の指南書。「デンマークの働き方に興味を持っていたとき、日本で購入しました。なぜデンマークの方々は生産性や充実度に優れた働き方ができるのか、その理由が少しわかった気がします。唯一日本から持ってきた大切な一冊です」
寮のリビングは“ヒュッゲ”スポット
そして今回は特別に、ルームツアーだけでなくデンマークでの生活についても教えてもらいました。
「寮にはみんなが集まるダイニングとリビングがあります。ダイニングは学校のキッチンで作られたご飯を食べる場所で、学生だけでなく先生や短期コースの生徒、ときには家族も一緒に食卓を囲みます。テーブルごとに飾られた庭の花を見るのがささやかな楽しみです。そしてリビングはみんなで“ヒュッゲタイム”を過ごす場所になっています」

ヒュッゲとは、デンマーク語で「居心地がいい空間」を指す言葉のこと。家族や友人とリラックスしたり、一人でゆったり過ごしたり。幸福感や満足感を感じられる心地よい時間がヒュッゲタイムと呼ばれています。
「夜になるとジブリ映画やドラマを観ながら編み物をしたりお菓子を食べたりと、それぞれの時間を楽しんでいますよ」

また、生活の中で特に印象的なエピソードを聞くと「ティータイムの多さには驚きました」との返答が。
「授業は9:00〜15:00までなのですが、10:00と14:15はティータイム、12:00〜13:00まではしっかりランチ休憩があります。授業は集中して行い、休憩時間には思いきりリラックスする。日本にはない切り替え方法が最初はとても新鮮に思えました。金曜日になると『フライデースナック!』とクラスメートがお菓子を持ってきてくれることもあったりと、自由で温かい空気感が漂っていますね。年齢や国籍問わず、みんなが自分の意見を伝えたり助け合う文化も好きです。授業以外にもワークショップやイベントが多く想像以上に忙しい毎日ですが、その分成長を実感できる充実した時間を過ごしています」
授業の合間のティータイムは食堂で。時間によって内容は異なり、10:00にはフルーツなどの軽くつまめるもの、14:15には手作りケーキやパン、ヨーグルトやクリームチーズを使ったお菓子など、甘いものが並ぶことが多いとか。
「コーヒーやホワイトティーなど、そこにある飲み物は自由に飲むことができるんです。とても温かい時間で、毎日の楽しみになっています」
留学生活で見つけた、将来の夢
「今後も授業やワークショップで作る作品で自分の部屋が彩られていくのが楽しみです」とhinaさん。編み物や織物、洋服作りなど今学んでいることを活かして自身の作品を届けたりワークショップを開催したり、セレクトショップにも挑戦したいとのこと。
「将来的には小さなハーブガーデンと体験工房を持つことが夢。そこに向けて少しずつ小さな目標を叶えていきたいです」

想像以上に充実している寮生活を目の当たりにして、留学を夢見た方も多いのでは? 忙しい日々も楽しみながら努力を重ねて夢を追いかけるhinaさんの今後に期待が高まります。デンマークでの生活もぜひまた覗かせてください……!

hina
学生、アパレルディレクター
手工芸を学ぶため、2025年8月よりデンマークに留学中。セレクトショップ「daisy」のディレクターも務めている。
Instagram:@hinamiru
text_Hasagawa Nozomi
edit_Yanase Rei
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