CULTURE & LIFE
〈らんぶる〉のあの子。
地下へ続く階段を降りるにつれて、時間の流れるスピードがゆるやかに変わっていく不思議な感覚。グリーンのメロンソーダと赤いソファの鮮やかなコントラストはこの世で一番幸せな色の組み合わせだと、私は本気で思っている。今私が座るこの席には、かつてどんな人が座ってどんなことを語り合ったのだろう。優雅に流れるクラシック音楽に浸りながら、古き良き昭和のロマンに想いを馳せる。
シャツ¥15400/ORCIVAL(ビショップ)、パンツ¥17380/BEAMS BOY(ビームス ボーイ 原宿)、バッグ[ショルダーストラップ付き]¥42900/OSO(I スティーブン アラン トーキョー)、バッグにつけたスカーフ¥13200/manipuri(マニプリ)、時計¥20900/MAVEN WATCHES JAPAN(マベンウォッチズジャパン)、イヤカフ¥14300/Jouete(ジュエッテ)、シューズ¥69300/Paraboot(パラブーツ 青山)、ソックス/スタイリスト私物
らんぶる
昭和時代、クラシックレコードの美しい音色を目当てに、人々の憩いの場となった名曲喫茶。1950年に開店した「らんぶる」もその役割を担った1つで、地下へ下ると外観からは想像できない広さのダンスホールのような空間が広がる。1955年から使用され続けるベルベットのソファや天井を飾るシャンデリアなど、昭和の憧れが詰まった華やかな店内では、クラシック音楽と昔ながらの喫茶メニューが楽しめる。
創業時から変わらないレシピでつくられる「コーヒーゼリー(¥850)」。深煎りコーヒーを使ったゼリーの奥深い苦味を、香り豊かなバニラビーンズ入りのアイスクリーム、コーヒーフレッシュがまろやかに包み込む。「クリームソーダ(¥800)」や「メロンソーダ(¥700)」も昭和から愛され続ける人気メニュー。
東京都新宿区新宿3-31-3
03-3352-3361
9:30-18:00 無休
〈物豆奇〉のあの子。
チクタク、チクタク。そういえば、すっかりこの音を聞かなくなった。それに気づいたのは、初めてこの喫茶店を訪れた時。祖父の家を思い出す古時計の音は、おじいちゃんっ子だった私の心を妙に落ち着かせる。今や贅沢にさえ感じる、1秒1秒の時間の流れを味わう感覚。大先輩の古時計たちにならって、チクタク……と、大切に時を刻む。
シャツ¥30800/Uhr (ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ 渋谷公園通り店)、ベスト¥22000/Vas-y Lentement(ビューカリック&フロリック)、ジャケット¥59400、パンツ¥29150/ともにTELA(ジャーナル スタンダード 自由が丘店)、メガネ¥41800 / ayame(コンティニュエ)、バッグ¥27500/Creed(クリード プレスルーム)、シューズ¥52800/SANDERS×BEAMS BOY(ビームス ボーイ 原宿)、ソックス/スタイリスト私物
物豆奇
1975年に創業した西荻窪の老舗喫茶店「物豆奇」。壁にずらりと並ぶ古時計は、時間の止まったもの、動いているもの合わせて30台以上。マスターが欠かさずぜんまいを巻くことで動き続ける古時計の音はどこかやさしく、心をほっと落ち着かせてくれる。1時間毎に響く“ボーン”という音もまた味わい深い。創業当時からほとんど変わらないという店内で、古時計が見守る重厚な時の流れを堪能して。
ザクロのシロップを使った「ソーダフロート(¥550)」は、甘酸っぱいソーダにバニラアイスが溶ける爽やかな美味しさ。しっとりふわふわの食感がたまらない「シフォンケーキ(¥350)」は甘さ控えめで、パクパクと食べられてしまう。
東京都杉並区西荻北3-12-10
03-3395-9569
11:30-20:00 不定休
〈蔦珈琲店〉のあの子。
マスター!今日もコーヒー杯がもたらす幸福濃度は、飽和状態です。緑のお庭を介することで濾過されたように透き通った太陽の光、お店に入った瞬間から広がる珈琲の香り、それからマスターの変わらないあたたかさ。「今日もありがとうございます。」思わず感謝したくなるような、この満ち足りたひととき。これくらいの幸せがちょうどいい。そんなことを思いながら、コーヒーをおかわり。
セーター¥27500/Modele Particulier ARMEN(ビューカリック&フロリック)、シャツ¥19580/LOISIR(ロワズィール)、パンツ¥49500 /TOUJOURS(トゥジュー 代官山ストア)、サスペンダー¥8800/ARMEN(ビューカリック&フロリック)、バッグ¥53900/eb・a・gos(エバゴス)、シューズ¥25300/JVAM(ギャルリー・ヴィー 丸の内店)、ソックス/スタイリスト私物
蔦珈琲店
青山という変化の激しい街で、30年以上の間変わらずそこにある〈蔦珈琲店〉。大窓から望む緑豊かな庭が、都会にいることを忘れさせてくれる。空間や気分もコーヒーの美味しさをつくる大切な要因と考えるマスターが用意してくれるのは、1種類の豆にこだわるコーヒーと最大限の心地よい店内。世間話を楽しむもよし、1人の時間を過ごすもよし、あとは1人1人の気分にゆだねてくれる懐の広さが親しまれ続ける理由。
「コーヒー(¥700)」に使う豆は、ブラジルサントスNo.2の1種類。苦味が特徴の豆でありながらやわらかな甘みをしっかり感じられるのは、マスターの焙煎技術と丁寧なネルドリップがあってこそ。お店と同じ「自家製焙煎豆(100g¥550)」の購入も可能。
東京都港区南青山5-11-20 1F
03-3498-6888
火-金10:00-20:00 ※土日祝は12:00- 月休
photograph_Serizawa Shinji
styling_Takaue Mina
hair&make-up_Murakami Aya
model_Hana
edit_Shibata Moe〈KIP Inc.〉
FUDGE vol.219 2021年10月号より
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