CULTURE & LIFE
インディーズのギター&ボーカルデュオ「ハルレオ」として活動するハル(門脇麦)とレオ(小松菜奈)のふたり。冒頭、「最後の全国ツアーを終えたら解散する」という答えを出した彼女たちは、ローディ兼マネージャーであるシマ(成田凌)と3人で、ライブをしながら浜松、大阪、新潟、北海道などを巡る別れのロードトリップへと出発する。バラバラになってしまったハルとレオ、そしてその間でどうにかバランスを取ろうとするシマ。そんな彼らを繋いでいるのは音楽だけじゃなく、決して言葉にすることのできないお互いへの感情だった。さまざまな波乱とそれぞれの複雑な思いに満ちた旅の終わり、3人がたどり着いた場所とは?
『黄泉がえり』や『どろろ』を手がけてきた塩田明彦監督による『さよならくちびる』で、初めての共演を果たした小松菜奈と門脇麦。彼女たちは秦基博とあいみょんによって生まれた「ハルレオ」の曲を映画のなかで一緒に歌い、ただの友情でもただの恋でもない、複雑な感情をぶつけあっていた。ステージに並んで立つふたりの姿を見ていると、それぞれの魅力がより際立つような不思議な引力を感じて、目が離せなくなる。主題歌と挿入歌でのCDデビューも決まった彼女たちに、お互いの役のこと、歌うこと、そして作品を通して感じたことについて、率直な言葉で語りあってもらった。
―ハルとレオという役を演じるなかで、考えたことや意識したことは?
門脇:仲の良いシーンがほとんどなく、喧嘩のシーンがすごく多かったんです。なので、ふたりが出会った最初のシーンだったり、喧嘩をしながらもハルがレオに向けているのは優しい眼差しになるように、とか。そういう部分はすごく気をつけましたね。
小松:今回は本当に自由奔放な役だったので、もうそのままやろうっていう感じでした。キャラクターそれぞれのしたいことや方向性がバラバラだから、作り込むというよりは、その場その場で自由に動いていって、本当に感じたことを遊ぶように出していくみたいな。
―ふたりの関係性が、仲間なのか友達なのか恋愛なのか、すごく曖昧で揺れているところが、作品の魅力になっていますよね。そういうことについては話し合ったりしましたか?
門脇:作品についてそうやって話すっていうのはなかったよね。
小松:うん、3人でいるときもそういう話は全然しなかったです。とにかくシマが一番振り回されていて、でもちゃんと掴まえていてくれるというか。その男性の優しさみたいなものがハルとレオを支えていて、それがないときっと崩壊すると思うんです。
―ハルとレオは女でシマは男だけど、それぞれのセクシュアリティは結構自由ですよね。男女だけじゃなく、同性間の恋愛や憧れとかも描いているし、多様性があるのが当たり前で、それが今っぽいというか。そういうことは演じていて感じましたか?
門脇:恋愛感情を抜きにして、本当に深いところで通じ合っていないとこの人たちは一緒にいられないだろうなっていうのは感じました。恋愛感情だけで一緒にいてしまうと、狭くなっちゃうので。やっぱりどこか憧れというか、レオはハルになりたくて、ハルはレオになりたくて、そこにシマがいることでなんとかバランスを保っている。そういう色んな矢印を作ることはきっと大事なんだろうなって思いました。自分にない要素があるからこそ、男女の枠を超えて人としても憧れていて、そこに恋愛感情もあって。すごく複合的な色んな感情が絡み合ってどうしようもなくなって、一人が欠けると全部バラバラになってしまう。その上での喧嘩やぶつかり合いなので、そういう意味では確かに男女っていう垣根は超えていたかもしれないです。
―すごく絶妙なバランスで成り立っている3人ですよね。お互い言いたいことを言っているようで、実は本心を口に出せなかったり。本当に思っていることは言葉にしていない。
門脇:それをハルは全部歌詞に書いてるんです。
小松:レオは逆で、行動で表現してる。
門脇:そうだね。なんか、本当はこう言いたいけどもういいやっていう感じとか、どこで感情を出していいのかわからないっていう不器用な部分がそれぞれあって。
―それが言えないっていうのは、やっぱりそれだけ相手に対する強い感情があるからですよね。それが音楽を通してなんとなく伝わってきたり、はっきりと言葉にしてないからこそ見ている人が想像できたりして、いいなと思いました。
門脇:すごく嬉しい感想だね。
小松:うん、そう言ってくださるのが一番嬉しいですね。
―今回は実際にステージに立って歌うシーンも多くて、普段の映画とは少し違ったのかなと思います。やってみてどうでしたか?
門脇:練習は大変だったよね。
小松:3曲あったから、一ヶ月くらいはやってましたね。
門脇:一ヶ月後にはちゃんと形にしなくちゃいけない、というのはやはりそもそもハードルが高く、圧倒的に練習時間が足りなくて。プロで何年もギターを触っている人たちに見えなくてはいけない。でも当然短期間の練習ではそこには追いつけないわけで、その部分とどう折り合いをつけるのか、自分の中ですごく難しかったです。不安でやってると絶対それが出ちゃうし、吹っ切ってやろうと思いながら、なかなかその感覚がつかめなくて。でも、いざライブシーンでお客さんを前にしたら、エキストラの方もわーってあたたかく迎えてくださったりして、ステージに立って初めて何かが吹っ切れた感じはありました。つなぎの衣装にもすごく助けられて、スイッチオンオフじゃないですけど、気持ちを乗せてくれる大切なアイテムでした。
―その未完成さというのも、物語に合っていてリアルに感じました。決して完成されたふたりじゃないから、それがそのまま画面に出ているのがよかった。
門脇:そうですね、成長物語じゃないですけど、ちょっとドキュメンタリーっぽいというか。
小松:撮影も物語に沿った順番で撮ってくださっていたので、最初の商店街のなかで歌っているときはもう私はガチガチで(笑)。
門脇:初めて歌うシーンだったもんね。
小松:そうそうそう! みんなの前で初めて歌うっていうシーンだったから、そういう自分自身の状況とか心情ともちゃんと当てはまっていて。呼吸するタイミングとかもわからないまま、とにかく精一杯歌って、緊張とかもそのまま表現できたらなって思いながらやりました。そういう意味では、撮影の流れとか衣装とかも含めてありがたかったです。
―等身大のふたりがそのまま歌っている感じが、上手い下手を超えてすごく魅力的でした。衣装は伊賀大介さんが担当されていましたが、つなぎとかルーズなデニムとか、ハルとレオのラフなファッションも見所ですね。Tシャツの首元のビロビロ感とかもすごくリアルでした(笑)。
小松:あんまり役でそういう衣装を着ることはなかったので、今回はキャラクター的にも、そういう部分がすごく助けになったと思います。
門脇:つなぎとかは、これ着てれば大丈夫みたいな、もう防具みたいな感覚でした(笑)。衣装を着ることでちょっと自信が持てるというか、支えになってましたね。やっぱり衣装って自分の服ではないので、慣れるまで違和感を感じたりとか、こそばゆい気持ちになったりするんですけど、今回はまったくそれがなかった。衣装っていう感じが全然なくて、自然と着ることができました。
―最後に、完成した映画を観て、自分が一番魅力を感じた部分を教えてください。マニアックな部分でもいいし、個人的に好きなところとか。
小松:それぞれがぶつかり合ったりするけど、人間ってそうだし、私たちもそうだし、すごくリアルな部分が描かれているんです。でも結局みんなが戻る場所は、本当に自分たちが好きな音楽っていうのがちゃんとそこにあって。それがあるから自然とまた集まってくるというか。喧嘩してもみんな車に戻ってきて、一緒にいなきゃいけないっていう。
―それがホームみたいになってますよね。
小松:やっぱり、嫌になったりとか、楽しかったときもあったり、また喧嘩したり、それが人間じゃないですか。そういう家族みたいな関係の3人が愛おしくもあり、なんか可愛いなって(笑)。結局みんな戻ってくるんじゃんっていう感じが、私はすごく好きでした。全然違うもの同士なんだけど、芯の部分では似ている部分もあって、だからこそ居心地がいいのかな。
門脇:最初に台本を読んだときに感じたのは、「解散」っていうところからスタートするっていうのもあって、ポジティブではない始まりなんですよね。基本的にふたりともずっとふてくされてるし、喧嘩ばっかりしてるし。でも、観終わってからの後味はすごく爽やかな映画だと思うんです。三角関係だったりとか、そういうちょっと湿度があるワードが映画のあらすじには入ってくるんですが、完成したものを観たら自分の想像以上にすごく爽やかな青春映画になっていて。ロードムービー的な要素も含めて、それがこの映画の一番の魅力になっていると思います。
Komatsu Nana:シースルーパーカー¥125000/ダウェイ(ヴィア バスストップ ミュージアム TEL03-5459-1567)、中に着たオールインワン¥25000/ラインヴァンド(エムエイティティ TEL03-5766-3104)、パイソン柄ローファー¥54000/キッズ ラブ ゲイト(ビームス ウィメン 原宿 TEL03-5413-6415)
Kadowaki Mugi:シャツ¥38000/UNDERCOVER(TEL03-3407-1232)、パンツ¥5900/Kastane(カスタネ 原宿店 TEL03-3486-5113)、ピアス¥26000/CALL MOON(ハルミ ショールーム TEL03-6433-5395)、ミュール¥29000/någonstans(TEL03-6730-9191)
photograph_Azuma Kyosuke(tokyojork)
styling_Takahashi Fumie (Komatsu Nana), Ito Nobuko (Kadowaki Mugi)
hair&make-up_Aika Yuko (Komatsu Nana), Ishikawa Naoki (Kadowaki Mugi)
interview & text_Sakazaki Mayu
映画『さよならくちびる』
公開日:2019年5月31日(金)
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督・脚本・原案:塩田明彦
キャスト:小松菜奈、門脇麦、成田凌、篠山輝信、松本まりか、新谷ゆづみ、日髙麻鈴、青柳尊哉、松浦祐也、篠原ゆき子、マキタスポーツ
主題歌『さよならくちびる』プロデュース:秦基博
挿入歌『誰にだって訳がある』『たちまち嵐』作詞、作曲:あいみょん
EP『さよならくちびる』1,200円+税
発売日:5月22日(水)
<収録内容>
M1. さよならくちびる
M2. 誰にだって訳がある
M3. たちまち嵐
M4. さよならくちびる -映画ver.-
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