CULTURE & LIFE
去年の9月、フランス映画のお仕事の依頼をいただきました。
私が書いたカリグラフィーに偶然目を留めてくださった映画監督さんから、その場での直接オファーでした。
“オルセー美術館で開催される、ジェームス ティソのエクスポジションに合わせて作る映画の中でカリグラフィーを書いて欲しい”とのご依頼で、後日私のお店の2階で撮影がありました。
※ジェームス ティソ … 1800年代に活躍したフランスの画家、版画家。ジャポニズムをいち早く取り入れたことでも知られる。
私の夫が手作りしたアルバム(和紙を表紙に装丁したもの)を使い、映画の各章のタイトルをフランス語とドイツ語で、カリグラフィーで書いていきました。
撮影当日にフランス人の女性監督から 「ティソは日本のプリンスの弟に絵を教えていたのよ」とお聞きしてビックリ!
調べてみると、江戸幕府が長い歴史に終止符を打つこととなった1867年、最後の将軍徳川慶喜の弟である徳川昭武は、兄慶喜の名代としてパリ万博博覧会の為にヨーロッパ派遣を命じられ、渡仏していたのだとか。
そして、ティソはその翌年の1868年には徳川昭武の画家教師をしていたそう。
ティソは1853年の日本開国から数年後の1864年、「浴室のラ ジャポネーズ」という作品を描いています。
きらびやかな着物を羽織ったヨーロッパの女性は、いち早く浮世絵や日本のオブジェをコレクションしていたティソ自身の中の、東洋の神秘的なイメージの投影なのかもしれません。
1871年、イギリスに定住したティソはテムズ川や海水リゾート地に惹かれて、イギリスの物語風の作品を描き、広めました。
彼は外国人ならではの鋭い視点を持ってヴィクトリア朝の社会、物憂さを作品に表現しました。
絵の中の生き生きとした色の使い方、社交界の女性が着ている布やドレスの細かい描写はため息が出るほど素晴らしく、当時のエレガントな装いを窺い知ることができます。
ティソの両親が高級織物を扱う店を経営していたことが影響して彼の審美眼が磨かれたのだ、と個人的に思います。
パリに戻ってからは「パリの女」をテーマにした15枚の作品を発表。モダンで洗練されたパリジェンヌの表情や美しさを主題に選び成功を収めました。
19世期後半、日本人との関わりがあったジェームス ティソ。
現代を生きる私もティソと関わることができて幸せでした。
撮影した映画はこちらから。私が担当したカリグラフィーは最初から最後まで所々で観ることができます。
text:竹内 仁海
パリ在住8年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。
Instagram:@melodiesgraphiques
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