CULTURE & LIFE
今年のヴァカンスはスイスのバーゼルにいってきました。
8月半ば、バーゼル市内では毎日屋外コンサートがありお祭りモード。
そして驚いたのは、バーゼル中心に流れるライン川ではたくさんの人が一方方向で泳いでいたこと。まるで流れるプール!
その中で白鳥もいたり、川の流れを利用した渡り船も行き来していたり、夏の風物詩となっているようです。
泳ぐための必需品といえば特製ビーチバッグ「ヴィッケルフィッシュ」だそうです。
脱いだ服を入れ、ふくらませてから巻いて閉めれば浮き袋のように使えます。流れ着いてから荷物を取りにまた戻らなくてもよいので、機能的なこのバッグを皆さん持っていました。
ちなみに川の水は透明で、飲めるくらい綺麗だそうです。
川岸にはトイレやシャワー、ビアガーデンも揃っていてとても考えられた街設計です。トップレスで日焼けしてる女性も多く自由。
最初に向かったのはバーゼル製紙印刷博物館。
大きい風車が博物館横にあり、製紙工場でもあります。
美術館に入ると紙漉きを体験できるコーナーがあります。ジーンズの布を潰したものが水と混ぜられ樽に入っていますが、それをA5サイズの長方形のザルに入れて水を切ります。それを型から外しプレスで圧をかけて乾かして、瞬く間に水色の紙が出来上がりです。
上の階に上がると絵の具作りの場所があります。
私が目で見て覚えた絵の具レシピはこちら。
ヨーグルト 大さじ 1
塩 ひとつまみ
ピグモン 小さじ1
イタリアの美術学校を出た夫も初めて聞いたと言っていました。昔はこうやって身近にあるもので絵の具を作っていたんですね。
テンペラ絵の具のレシピは卵の黄身をフォークで混ぜてからピグモンを入れて色を付けます。
ねっとりとした油絵に近いテクスチャーですが、すぐ渇きます。
それからカリグラフィーの部屋があり、机にはアンティカ体とドイツ草書体のお手本が置かれていて、子供たちが本物の羽根を使ってデッサンや文字を書いていました。
私も書くのに熱中しすぎて長居してしまい、気づいたら残り私1人になっていました(笑)
シーリングワックスを見せてくれたり、手動で印刷機械を動かすコーナーもあり、230度に溶かした真鍮を型に流し込んでシーリングスタンプを作る過程をみせてもらったり、大人も子供も色々体験できる楽しい博物館です。
そして、バーゼル美術館は有名な絵画だらけで驚きました!さすが、1671年に開設された世界最古の公共美術館なだけあります。
バーゼルは1年に1度世界最大級のアートフェアがあります。この小さな街に40ものミュージアムがあるそうで、流石アートの街です。
バイエラー財団は,美術商バイエラーが夫婦で集めた絵画と彫刻200点もの展示がされています。
モネの巨大な睡蓮の絵は一部屋にこの作品だけ、外には睡蓮が咲いていてゆったりした空間でのんびりできる美術館。
私たちが行った時はサマーフェスタ当日で、コンサートや催しがありました。モンドリアンの個展もやっていたのでお庭で働く人はモンドリアン柄の服を着ていて可愛かったです。
ヴァカンス中1日は少し足を伸ばして電車で2時間半、ザンクトガレンまで行ってきました。
ザンクトガレン大聖堂では、ミサ直前のパイプオルガンと声楽のコンサートを聴くことができました。
大聖堂に隣接している図書館は私が数年前から行きたかった場所、世界遺産です。
図書館では寄木細工の床を傷つけないように靴の上からフェルト製のスリッパを履いて図書館に入ります。
息を呑むほどの美しさを誇るバロック様式と唯一無二の写本のコレクションは、この図書館が世界で最も美しく歴史的な図書館の1つとして数えられる所以です。
残念ながら写真撮影は禁止でしたが、西暦700年から1000年の貴重なカリグラフィーを見ることができました。
バロック調の華やかな天井の漆喰の装飾、2階部分の手すりは木製の美しいカーブの調和が見事です。
ポストカードを買って日本へ送りました。
ちょうどその日はお祭りで、大道芸人が屋外でショーを見せてくれる日でした。10ヶ所以上でピエロや手品師がいて、コンサートやアクロバットショーが見れました。
その喧騒の中、スイス人のご夫婦から「あなた日本人?」と日本語で声をかけられました。
そうですと答えたら「わー、日本人!」と手を握って「あなたの写真も撮っていい?」と日本人が好きなご様子。
13年間日本に住んでいたそうで、個性的なマダムは最近日本のインテリアの雑誌でお見かけしたお顔。
「あなたの全ての願いが叶いますように」との言葉をいただいて、また世界のどこかでお会いできたらいいなと願うほど素敵な方でした。
思いがけず街中に壁に書かれたカリグラフィーをたくさん見つけました。
壁に可愛い文字を発見する喜び!楽しかったです。
バーゼルで感じたのは日本のような治安の良さ、安心して過ごせました。
街の魅力が写真で伝わると嬉しいです。
text:竹内 仁海
パリ在住11年目。
イタリア人の夫とパリ4区にあるカリグラフィー専門店 “メロディ グラフィック”を経営する傍らカリグラファーとして活躍。結婚式やパーティ、パリコレの招待状や宛名書き、メッセージの代筆、ロゴ制作、フランス映画・コマーシャルの演出アイテムとしてカリグラフィーを担当。
パリから“暮らしの美学”をお届けします。
Instagram:@melodiesgraphiques
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