CULTURE & LIFE
この数年、毎年一度日本に帰国しています。
これはとても嬉しいことで、私にとっては年に一回の息抜き、日本びいきの娘にとっては年に一度のビッグホリデーになっているみたいです。
数年前、15年ぶりくらいに日本に帰国した時は、久しぶりの日本が本当に嬉しかったのを覚えています。
税関の方からは(マニュアル通りかもなんだけど)「お帰りなさい」と言ってもらえてうるうるし、スーツケースがぐるぐる回るベルトコンベアーの場所で、人が取りやすいようにとスーツケースの向きをいちいち変えている係りの人を見て「さすが!」と感動したりしました。
最近は、そこまで感情的にはならないんですけど、日本ならではのサービスや温かいおもてなしなどを見ては「ああ、かえってきた」とホッとします。
ところが、1年ぶりだろうが15年ぶりだろうが、最低3〜4日間の日本での生活を不備なくできるようにするためのリハビリ期間が私には必要です。それも、帰国のたびに毎回。
そのリハビリというのは、「あまり馴れ馴れしく知らない人に話しかけない」とか、「目があっただけでにっこりしたりして、他人さまをびっくりさせない」とかに始まって、「地下鉄の駅名を英語で追いかけない」「新幹線の乗り降りはさっさとする」「駅に着く前にsuicaなどのカードをちゃんと手に準備して、後ろに続く人にご迷惑をおかけしない」「公共交通機関の中でコーヒーを飲まない」「友達と一緒にいるときは、駅前などで自ら進んで広告入りのポケットティシューをいただきに行き、満足げににこにこしない」とか、そういった小さなことです。
混雑しているところを通り過ぎようとするとき、例えば満員電車の下車、道を教えて欲しいとき、お店でウエイターの注意を引きたい時など。 (ちなみにレストランでは通常、ウエイターやウエイトレスさんを遠くの方から大声で「すみませーん」と呼んだりしないで、彼らが近くを通った時に「エクスキューズミー」と声をかけて、注意を引きます)
人の邪魔になった時や軽く謝るときもエクスキューズミー、そして、本当はこんなことないといいのですが、嫌なことを言われたり(⾔われてそうだったり)した時には、強いトーンでエクスキューズミー?と言ったりもします。この場合は「ちょっとごめんなさいよ、なんだって?」と、強く聞き返す感じです。
それから、こちらでは知らない人でも目が合うとニッコリされちゃうことが多いです。そういうときはにっこりし返すか、できるだけ優しげな顔をしましょう。ささっと目をそらしたり、「え?だれ?」って顔をしちゃうと、何気ににっこりしたイギリス人をちょっとだけがっかりさせちゃうんです。(でもこの場合は、いやらしい人や場所では別です)(気をつけてね!)
特にイギリスの人は、お天気が良い⽇はかなりテンションが上がり、ニコニコしたり、Helloだの Good morning だのと声をかけてくることが多いです。
男性の方はとくになのですが、基本(あくまでも基本)イギリスはいわゆるレディーファーストの国なので、いろんな場所で女性を優先するということを気にかけておくといいと思います。 それができて普通、できてないと恥ずかしいです。
ということは、女性は譲られることへの心の準備もしておくといいかもです。その時は軽くにっこりするか、サンキューと小声でしてくれたことへの認識を伝えましょう。
それに付随すると思うのですが、自動ドアではないところが多いので注意したほうがいいこととして、ドアを開けたら必ず後ろに続く人がいないかチェックします。誰かがいたらその人の手に開けたドアを渡すようにします。2−3歩遅れたところに続く人がいる時はとくにドアを開けたままちょっと待ってあげます。そして反対に、こちらの人にドアをあけて待ってもらったら、先ほどのようににっこりするか、小声でサンキューです。これすごく基本的なマナー(らしい) です。
そのほか小さなことですが、コーヒーを持って飲みながらとか、お腹が空いちゃったからサンドイッチを食べながら歩くとかも基本的に人様に迷惑をかけなければ問題なしです。
ちなみに風邪をひいたり花粉症の場合でも、マスクをするとちょっとびっくりされます。それと同時に、 鼻をすするよりは⼈前でも堂々とティッシュを出して鼻をかんだりする方が「普通」です。
当たり前ですが、ハンドバッグを椅子の背にかけたり、ちょっと離れたところに置くことはもちろん、携帯なんかを置いて、テーブルを離れたりすることは論外。と同時に、日本のように床にバッグをじかに置かないようにとバスケットを用意してくれるところはほぼ皆無ですので、 念のため。(そうそう、なので日本に帰って平気で床にハンドバッグを置いてしまう私は、縁起の悪い原始人になったような気がします)
基本的にイギリスでは自分の責任下においてなら割となんでもありです。私もお腹が空いた時のために、エナジーバーやバナナをハンドバッグの中に入れて持ち歩いているし、仕事の移動は必ずアイスコーヒー⽚手です。
イギリスでは、ファッションにしても、ライフスタイルにしても、個性を大切にします。突拍子もないスタイルであっても、本人がハッピーで世間様にご迷惑をかけていなければなんでもありで、そういう人たちに対して寛容なのがイギリス人なのです。だからストリートファッションが発展しているんでしょうね。
私の友人でロンドンに留学をして数年暮らし、現在日本に暮らしている彼⼥は、ロンドンに遊びに来るとき「日本では着られない可愛い服」を着てロンドンを歩くのを楽しみにしています。
“ Mrs Brown says that in London everyone is different, and that means anyone can fit in. I think she must be right – because although I don’t look like anyone else, I really do feel at home. I’ll never be like other people, but that’s alright, because I’m a bear. A bear called Paddington.
ー ミセスブラウンは「ロンドンはいろんな違いのある人が暮らしてて、誰もがそこにフィットできるのよ」と言った。僕もその通りだと思う。僕は他の人とルックスも違う、でもロンドンが自分のホームタウンだって気がする。僕はこれからも「人とは違うまま」 だと思うんだ。でもそれでいいんだ。僕は、クマなんだ。パディントンという名前の熊でいればそれでいいんだ。 ”
これは映画パディントンで、小さな奇妙な熊のパディントンが言ったセリフです(注: 翻訳は私の意訳ね)。そこにはもちろん守らなければならないマナーも規則もあるけれど、人間として他⼈を尊重するというルールを守っていればロンドンでは自分のままでいることができる、といったことが描かれています。
誰もが奇妙なくまのパディントンで居られるロンドンが、私は、⼤大大好きです。
yukari sweeney
◆こだわり女子のモノコトWebマガジン「PeLuLu」より
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