クリエイティブチームDo it Theater（ドゥイット・シアター）がテーマごとにおすすめの映画を３作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第３０回目のテーマは「脳内トリップに出かけたくなる映画」です。

 

Do it Theaterの阪実莉です。この連載はDo it Theater 女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
第３０回目のテーマは「脳内トリップに出かけたくなる映画」ということで、『ホノカアボーイ』『恋する惑星』『エリザベスタウン』の３作品をご紹介します。

夏も間も無く終わりが近づいて来ますね。今年の夏休みは、お出かけできなかった方も多いのではないでしょうか。
せめて映画の中だけは…！と、来年の夏の計画も目論見ながらご覧ください。

 

ハワイ島の小さな町ホノカアでの穏やかな日々

Illustration_MARU

title：『ホノカアボーイ』

【story】
大学生レオは、恋人カオルとハワイを観光していた。伝説の月の虹が見たいとごねるカオルのため、レオは必死で行き方を調べるも上手くいかず、カオルとの関係は冷め、帰国後別れることに…。半年後、レオはホノカアで暮らしていた。映画館で働きながら、風変わりだが心優しい町の人たちと交流を重ね、優しく穏やかな日々に身を委ねていくのだった。

* * * * * * * * * * * * * * * *

ロールキャベツ、マラサダなど、映画館の近くに住む倍賞千恵子演じるビーが作る、やさしくてほっこりする美味しそうなごはん。そして、ハワイローカルな日系移民の歴史をもつホノカアのゆったりとした島時間が日々の都会の喧騒を忘れさせてくれる作品です。そんな本作の見どころは、時間が止まったようなハワイの古い建物。映画の舞台となるホノカア・ピープルズ・シアターは実在する建物で、古く日本人が移民でこの地を開拓した頃から残っているのだそう！（Googlemap旅行しちゃいました（笑）。）
主人公のレオは、ホノカアの風変わりだけど心優しい人たちと交流する中で、大切なものを見つけ、そして、大切なものを失い、大人になっていきます。しかし、人は大切なものを失いながら、それでもまた、性懲りもなく大切なものを見つけ、大事にしながら生きていくのだと、自分と照らし合わせながら観てしまいました。大人になるって大変ですね。（何歳になっても子供でいたい）

 

香港の街角で恋のはじまり

©1994, 2008 Block 2 Pictures Inc. All Rights Reserved.

title：『恋する惑星』

【story】
香港のとある雑踏。警官223号は、金髪の女性麻薬ディーラーとすれ違う。長年付き合った彼女にフラれた警官223号は、元恋人のことが忘れられずにいた。一方、女性ディーラーは九龍の雑居ビル「重慶大厦」で麻薬密売の準備をし、空港へ向かっていた。57時間後、酒を飲んでいた警官223号のいるバーに女性ディーラーがやってくる…。
香港の街角にある飲食店「ミッドナイト・エキスプレス」で働く女性店員フェイの元へ、恋人と別れたばかりの刑事633号がやってくる。ある日、刑事633号の元彼女が店に来て、刑事633号に渡してほしいと、手紙を預ける。預かった手紙をこっそり開けてしまうフェイ。中には手紙と合鍵が入っていた。

* * * * * * * * * * * * * * * *

香港は人口密度が高く、ギュッと詰まった部屋やいくつも建ち並んでいる高層ビルや高層マンションが有名です。MONDO GROSSO　の「ラビリンス」のMVを思い浮かべてください。刑事663号の部屋は高層マンションが密集する丘の一角にあり、部屋のすぐ隣を丘の上に住む住人のために作られた長い長〜いエスカレーターが走っています。また、雑居ビル「重慶大厦」内は、屋内なのに露店がひしめきあい、人がごった返していて、日本では考えられないような建築物や人々の熱量に驚かされます。
そして、ぜひ注目して欲しいのは、90年代前半の香港の街並みと文化です！中国へ返還される前の英国領の時代に作られた作品ということもあり、挨拶が「ハロー」だったり、アジアと洋風の建物が混ざっていたりします。どこか欧州の匂いを漂わせているところがちぐはぐで、妙に可愛らしくてたまりません。
また、ポケベルにメッセージが来ていないかを確認したり、常連のお店に手紙と鍵を預けたみたりと、便利ではない分（その時代では最先端でしたが）、想像を膨らませて色々な想いが募り、気持ちがすれ違ってしまうなど、そういうのも良いなあ…とほっこりします。『恋する惑星』は、夏の高揚感も相まって、街角ですれ違った人と恋に落ちるかもしれない…という出来事に期待してしまうような作品です。

 

昔ながらのアメリカの風景と旅を彩る音楽

©2005 by PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.TM,(R) & Copyright (C)2006 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

title：『エリザベスタウン』

【story】
デザイナーとして勤めていた会社を大損させ解雇されたドリューは、自ら死を選ぼうとしていた矢先、父が死んだという知らせを受ける。生きる希望を失いながらも父の故郷であるエリザベスタウンへ向かうと、無慈悲なビジネス社会とは対照的に、町の人たちは温かく受け入れてくれているように感じるのだった。思い出とともに明るく父のことを送り出そうと計画する親戚たちに心を洗われ、道中で知り合った客室乗務員のクレアと語り合い、ドリューはかすかに生きる希望を見出していく…。

* * * * * * * * * * * * * * * *

人生のどん底を味わったドリューが、父の死と、素敵でチャーミングな女性クレアとの出会いをきっかけに、旅をしながら自分自身を見つめ直すという本作は、私的ベスト3に入るほどお気に入りです。クレアはドリューと連絡を取り合う中で、分厚い旅のしおりをプレゼントするのですが、その内容が最高なんです。地図はもちろん、パンフレットや旅の楽しみ方、ぴったりのBGMなど。これ以上は観てからのお楽しみですが、好きな人が自分のために計画してくれる旅行プランは、とても素敵なもの。失意の中で様々な出来事と向き合いながらも、人は決して一人で生きているのではなく大失敗をしても次があることを教えてくれるという、力強くも優しい作品です。
そして、元ローリングストーン紙の記者だったキャメロン・クロウ監督だからこそのBGMチョイスも最高で、夏のドライブにもってこいです！我が家ではヘビロテプレイリストにしています。実は、Do it Theaterのプロジェクト、ドライブインシアター2020でお客様にお送りしていた『ドライブインシアターのしおり』はこの作品から着想しているのです。家を出た瞬間から旅は楽しみたいですよね。

 

今回は「脳内トリップに出かけたくなる映画」というテーマで、ついつい旅へ出たくなるような作品をセレクトしました。
旅は思い出ができるのはもちろん、自分自身の成長にもつながりますよね。私も20歳の時、友人とアメリカ横断旅行をしたのを思い出しました。困ったことは溢れるほどたくさんありましたが、一皮向けて帰ってくることができました（笑）。
今はなかなか旅行に行きづらい時期ですが、不自由なく旅行に行ける少し先の未来に期待をしつつ、計画をたててみましょう！

 

• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
• 
•