CULTURE & LIFE
シアタープロデュースチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第18回目のテーマは「たまには刹那的な恋に溺れる」です。
Do it Theaterの阪実莉です。この連載はDo it Theater 女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。第18回目のテーマは「たまには刹那的な恋に溺れる」ということで、『her/世界でひとつの彼女』『愛がなんだ』『アデル、ブルーは熱い色』の 3作品をご紹介します。
なんだか刺激が足りない時、愛されたい時、無性に現実逃避したい時、、、そう、いつ何時も恋愛映画は見たくなるものです!今回は数多くある恋愛映画から、毛色が違う作品たちをセレクトしました。
Index
物質への焦燥
title:『her/ 世界でひとつの彼女』
【story】
近未来のロサンゼルス。セオドアは、他人の代わりに想いを伝える手紙を書く“代筆ライター”。長年一緒に暮らした妻に別れを告げられるも、想いを断ち切れず、傷心の日々を過ごしていた。
そんなある日、人工知能型OSの“サマンサ”に出会う。実体をもたない彼女は、コンピューターや携帯画面の奥から発せられる“声”でしかない。けれど“彼女”は、驚くほど個性的で、繊細で、セクシーで、クレバー。セオドアは次第に“彼女”と仲良くなっていき、イヤホンで“彼女”と会話をする時間を誰と一緒にいるより自然に、幸せに感じるようになる。サマンサにとってもセオドアを通じて見る世界は新鮮で刺激的で、やがて二人は恋に落ちるが……。
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学生時代、SNSで出会い、直接会った事はないけれど付き合っている、というのをちらほら周りで聞いていたことを思い出しました。会えないことによって、無駄な雑情報が減ったり、ミステリアスさにドキドキするのかもしれません。そして、なぜ今直接恋愛をすることに良さを感じているのか、感情のやり取りだけで十分なのでは?と思うこともあります。
この作品は悲しいイメージがつきがちですが、自分の恋愛観を一度洗ってくれるような前向きになれる作品です。
恋愛もので主演が男性、というのも心に余白を作って考えられるポイントかもしれません。また、落ち込むセオドアがAIのサマンサと話す中で、『僕は一生で味わう感情を味わってしまい 新しい感情はもう湧かないかも』という台詞がありました。代筆家らしい言葉選びなのでしょうか。ハッとさせられます。
一人の相手と長く関係を続け、いろんなことを学ばせてもらった後、また新しい人に出会っても、正直なところ過去の感情の劣化版に楽しみはなく、「またここからか…」というめんどくさささえ芽生えてしまいます。また一から自己紹介をして、少し猫をかぶって、緊張してデートをする、というのはじれったいものですね。恋愛記録をセーブして、途中からはじめることはできないものでしょうか。技術の進歩に期待しつつ(笑)、自分の恋愛を一度見直したい方は是非ともご覧になってください!そして、言わずもがなインテリアとカラートーンが恐ろしくキュートなので、そちらも必見です。
現代の恋愛群像劇
title:『愛がなんだ』
【story】
28 歳のテルコの生活はすべてマモちゃんを中心に動いている。仕事中でも、真夜中でも、マモちゃんからの電話が常に最優先。仕事を失いかけても、親友に冷たい目で見られても、マモちゃんがいてくれるならテルコはこの上なく幸せなのだ。けれど、マモちゃんにとっては、テルコはただ都合の良い女でしかなかった。ある日、朝方まで飲んでマモちゃん家にお泊まりしたことから、2人は急接近。恋人に昇格できる!と有頂天になったテルコは、頼まれてもいないのに家事やお世話に勤しみ、その結果、マモちゃんからの連絡が突然途絶えてしまう…。それから3ヶ月が経ったころ、マモちゃんからひょっこり電話がかかってくる。会いにいくと、マモちゃんの隣には年上の女性、すみれさんがいた…。
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昨年公開されたこの作品。口コミで広まり、劇場で見た方も多いのではないでしょうか。
好きが強すぎる”テルコ”と、受け入れるばかりの保守的な”葉子”という正反対の女性二人。それに相対するように、愛をうざがる”マモちゃん”と好きすぎて拗らせている”中原くん”。まず…これめちゃくちゃに共感できませんか!?どれにも当てはまらない人なんているんでしょうか….。自分と重ねて考えて見ると、相手によって”テルコ”になることも”葉子”になることもありますよね。ちなみに私は、どちらも楽しいのですが、傷つくのが嫌なのでついつい葉子になりがちです。
だけど、”テルコ”の気持ちもすごくわかります。恋愛って“好き”から、“知りたい”となり、そのあとは“求められたい”、に変わっていってしまうんですよね。貪欲極まりない。エスカレートする気持ちをうまく止められたら良いのですけれど。また、成田凌さん、若葉竜也さんの胸キュンセリフはもちろんのこと、終始「あー!これこれ・・」となるような共感ポイントが沢山あり、各登場人物の役を深掘りして観察しながら見るのも楽しいですよ。
”好き”の延命措置も見どころです!未見の方は是非ご覧になってください。
前進あるのみ
title:『アデル、ブルーは熱い色』
【story】
高校生のアデルは、道ですれ違ったブルーの髪の女に、一瞬で心を奪われる。夢に見るほど彼女を追い求めていたその時、偶然同性愛者限定のバーで再会を果たす。彼女の名はエマ、画家を志す美学生。アデルはエマのミステリアスな雰囲気と、豊かな知性と感性に魅了される。やがて初めて知った愛の歓びに、身も心も一途にのめり込んで行くアデル。数年後、教師になる夢を叶えたアデルは、画家になったエマのモデルをつとめながら彼女と暮らし、幸せな日々を送っていた。ところが、エマが絵の披露をかねて友人たちを招いたパーティの後、急に彼女の態度が変わってしまう。淋しさに耐えかねたアデルは、同僚の男性教師の誘いに乗ってしまう。
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第66回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しているこの作品。性格も年齢も違う女性2人がふとした瞬間に出会って、惹かれ激情を描いています。私も高校生の時にこの作品を見て、強烈な美に圧倒されました…。
近年、LGBTQというワードをよく聞きますが、その言葉が頭に浮かぶ前に、没頭してしまうような作品です。哲学と美学、愛と欲求。人を愛し愛されることはこんなにも難しいものなのかと思わされます。また、本作は長めで3時間ほどあるのですが、リアルな恋愛模様を見ているようで、上映時間の長さは全く苦になりません。アデルとエマが本当に実在しているかのように感じられますが、撮影時は自然な印象を出すために、アドリブも多く使用され、主演の二人はほぼノーメイクで挑んだそうです。エマのような知性のある女性は魅力的ですよね。セクシーというか。文学的で物腰が柔らかく、見た目は強めな女性大好きです。
青髪のレア・セドゥ、瞳の色も相まって美しすぎますので、そちらも必見。
一人でゆったりとお休みの日に見るのをお勧めします。
「たまには刹那的な恋に溺れる」というテーマで、今回は印象が異なる3作品をセレクトしてみました。
どうしようもない恋愛に憧れたり、そんな自分自身に溺れてしまったりと、恋愛って難しいです。映画の世界でいくら予習しても、現実ではなかなかうまくいかないものですよね。今回セレクトした3作品は恋愛に限らず、自身に行き詰まってしまった時、何かを教えてくれる作品たちだと思います。
ぜひご覧になってみてください。
©2013 Untitled Rick Howard Company LLC. All Rights Reserved. Photo courtesy of Warner Bros. Pictures
『her/ 世界でひとつの彼女 』
発売元:アスミック・エース、ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
Blu-ray:¥2381/ DVD:¥1429
©2019映画「愛がなんだ」製作委員会
『愛がなんだ』
© 2013- WILD BUNCH – QUAT’ SOUS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – SCOPE PICTURES – RTBF(Télévision belge) – VERTIGO FILMS
『アデル、ブルーは熱い色』
販売元 : NBCユニバーサル・エンターテイメント
text : 阪実莉(Do it Theater)
学生時代は、ドキュメンタリーと心理学を専攻。野外上映・空間演出の分野で活動したのち、現在はDo it Theaterにてカルチャーの創造を目論み奮闘中。人生のバイブル映画は『あの頃ペニー・レインと』『下妻物語』。
最近はK-POPカルチャーが気になっています。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュースチーム。今年も開催した「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」では2年連続で野外シアターを上映!また 累計4万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫とマリンアンドウォークヨコハマの2会場同時開催の「シーサイドシネマ」、 ロックバンドSuchmosとタッグを組んだ「DRIVE IN THEATER Suchmos」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
Illustration_MARU
edit_Takehara Shizuka
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