CULTURE & LIFE
クリエイティブチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第5回目のテーマは「夏の終わりが恋しい映画」。夏を思い出し、切なく甘酸っぱい気持ちになる映画をご紹介します。
Do it Theaterの阪実莉です。この連載はDo it Theater 女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。第5回目のテーマは「夏の終わりが恋しい映画」ということで、『胸騒ぎのシチリア』『色即ぜねれいしょん』『グッバイ・サマー』の3作品をセレクトしました。元恋人とのひと夏の恋、旅先での恋、少年たちの夢、さまざまな世代で体感できる”夏だからこそのヒリヒリ感”を感じられるはず!
Index
愛と美しさと狂気と
title:『胸騒ぎのシチリア』
【story】
世界的ロックスターのマリアンは痛めた声帯と心を癒すため、年下の恋人ポールとシチリアのパンテッレリーア島を訪れていた。しかしそこへ、マリアンの元彼の音楽プロデューサーハリーが魅力的な娘ペンを連れて現れる。関係を戻したいハリーはマリアンへ詰め寄り、ポールとの間で揺れ始める。一方でペンは誠実なポールに心惹かれ、事件が起きる…。
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「こんなこと…ある?!」というくらいのシチリアでの優雅セレブライフが印象的。鑑賞後には湖で泥パックデートをしたくなることでしょう…。作中に登場する青空レストランや、夜のカラオケパーティー、手作りのリコッタチーズ など大人っぽすぎず、かっこよすぎず。どこか油断してしまう抜け感があり、それさえも憧れ対象に入るような美しさが、鑑賞者を作品に引き込んでくれます。衣装デザインはDiorのアーティスティック・ディレクターでもあった、ラフ・シモンズというのも注目ポイント。また、本作は四角関係ならぬX関係。元彼と今彼で悩む主人公、元彼の子供は今彼にアタック、と主人公を囲み多くの感情が交差していてかなりドロドロ恋愛です。そんな恋愛模様が相まって起こる事件は、一夏の恋レベルを遥かに超えています…。情熱的な恋愛は、夏っぽいし、一度は体験してみたいな〜なんて思っていましたが、家で見ていたら一時再生停止しちゃうくらい驚きますので、心のご準備を。
この夏、一皮むけさせてください!
title:『色即ぜねれいしょん』
【story】
京都の仏教系男子校に通う、平凡な高校生・乾純(渡辺大知)はボブ・ディランを敬愛し、ロックな生き方を探していた。が、日常は穏やかそのもの。物足りなさを感じていたある日、純は友人に誘われ、隠岐島へ夏休み旅行に行くことに。そこでオリーブと名乗る美少女(臼田あさ美)に一目惚れするが…。
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10代の頃ってかっこよくないことにすごくシリアスで、”かっこいい”という曖昧なことが神格化される時代だと思っています。自分を表現できていないけど、変な人扱いされるもの嫌。練習していたギターも、下手なうちは弾きたくない。特に文化系は馬鹿にされやすい….。これ、すっごくわかります。文化系って体育会系のように“見られること”に慣れていないので、勇気を出してみても、失敗したら人生終わりくらいの感覚なんですよ。主人公は夏休み中にした旅で、さまざまな人と出会い、失敗を経験します。しかし、それを糧に挑戦をする覚悟を持ち、音楽を武器にして、大きな成長を遂げていくんです。そんな少年の成長が夏休みの間にぎゅっと詰まっています!また、作中のキーマンとなる、峯田和伸(銀杏BOYZ)と岸田繁(くるり)は、渡辺大知演じる乾純にあたたかく教えを授けます。ここは音楽好きとしても観ていて心が熱くなるシーン。そして本作の主題歌も3人で歌っているので、必見です。
子供でもないし、大人でもない。
title:『グッバイ、サマー』
【story】
見た目が女の子らしい14歳のダニエルは、男子にはミクロ(チビ)とからかわれ、恋心を寄せるローラには男として見られていない。加えて母は過剰な心配性で兄はパンク野郎。誰も理解してくれないと悩んでいるある日、目立ちたがり屋のテオが転校してくる。テオの趣味は機械いじり。浮いたもの同士の二人はいつしか意気投合し、うんざりするような日常から抜け出すため、“ある計画”を立て、夏休みに旅へ出る。
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成長というものはいつ何時もしているものだと思うのですが、過去を振り返ってみると、夏の時期の思い出が、一番ヒリヒリして残っているものです。ただ遊んでいるだけでも、夏は特別。一年に一度のゴールデンタイム。自分たちで集めた部品でタイニーハウスを作り、旅に出て、警察から逃げたり、変な人に遭遇したりするけれど、多くのことを学んだ彼らにとって、その経験はとても大きな思い出なったのではないかと思います。勇敢。(家で勉強しているよりも学べること100万倍くらいあります。)ご覧になるときは、自分の14歳の夏休みを思い出しながら、観てみてください。既に本作を観た方にはわかると思いますが、30年後に笑い話にできるかどうかも、ポイントです..!そして、何よりも彼らが愛らしく、若さゆえの美しさが画面いっぱいに、これでもかというほど出てきます。「ミシェル・ゴンドリー監督が子供の話?」と感じる方もいるかもしれませんが、自伝的要素も多く、みずみずしい作品となっています。是非ご覧ください
今回は「夏の終わりが恋しい映画」というテーマでしたが、「夏だーーー!」と叫びたくなる映画ではなく、心がキュっとなる夏の映画を3作品セレクトしてみました。やりたいのに、できない。頑張りたいけど、勇気が出ない。大人になると、自分の好きなことで無理をしてみるだとか、頑張ってみることが減ってきてしまいます。そろそろ夏も後半戦。終わりに近づいてきましたが、是非この作品たちを見て、夏の思い出作りを、まだまだ続けてもらえると嬉しいです。夏のヒリヒリ感はその場では感じられませんが、日焼けが引いた頃にじわっと感じられると幸せですよね。
©2015 FRENESY FILM COMPANY. ALL RIGHTS RESERVED
『胸騒ぎのシチリア』
©2009色即ぜねれいしょんズ
『色即ぜねれいしょん』
©PARTIZAN FILMS – STUDIOCANAL 2015
『グッバイ、サマー』
text : 阪実莉(Do it Theater)
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュースチーム。今年も10月26、27日に開催する「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」では2年連続で野外シアターを上映!また 累計4万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫とマリンアンドウォークヨコハマの2会場同時開催の「シーサイドシネマ」、 ロックバンドSuchmosとタッグを組んだ「DRIVE IN THEATER Suchmos」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
Illustration_MARU
edit_Takehara Shizuka
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