CULTURE & LIFE
クリエイティブチーム Do it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。
第122回目のテーマは、「20代におすすめの恋愛映画3選」です。
Do it Theaterの郡司恵(ぐんじ めぐみ)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
ついに梅雨も明け、夏がやってきましたね!今年はすでに各地で猛暑を観測するなど、なんだか年々暑くなっていっているように感じます・・くれぐれも熱中症には気をつけてお過ごしください。今回は『花束みたいな恋をした』『余命十年』『青春18×2 君へと続く道』と、20代の「今」を大切にしたくなる恋愛映画をご紹介します。
Index
大人になる過程での温かな痛み
Illustration_skpn
title:『花束みたいな恋をした』
【story】
東京・京王線の明大前駅で終電を逃した日、偶然出会った山音麦と八谷絹。2人とも大学生で、お互い大のサブカルチャー好き。共通の趣味である音楽や映画、お笑いの話をするうち2人は恋に落ちていく。大学卒業後、フリーターをしながら同棲をスタートさせた麦と絹は、日常でどんなことが起こっても、幸せな日々の現状維持を目標に就職活動を続けるが……。
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大人気ドラマ『東京ラブストーリー』『カルテット』の脚本家、坂本裕二のオリジナル脚本を菅田将暉と有村架純の主演で映画化した大ヒット作。序盤から坂元裕二らしい特徴的なセリフ回しが面白く、一気にのめり込める作品です。作品の舞台が2015年から2020年の設定で、「ゼルダの伝説」「ゴールデンカムイ」「きのこ帝国」などなど、音楽や映画、小説、マンガ、お笑いなどのサブカルチャーに関する固有名詞がたくさん登場するのも印象的です。20代のサブカル好きは「それ流行ってたわ〜!」と、思わず懐かしくて“ミゾミゾ”してしまうはず・・!
20代におすすめしたいポイントは、大学から社会人の環境の変化で変わっていく2人の関係がリアルに描かれているところです。
好きな彼女とお金の心配なく暮らしていくために、イラストの仕事を諦めて就職した麦は、仕事に人生を支配され、大好きだった絵を書くことも、2人の共通の話題だった本やマンガ、ゲームも楽しめなくなっていく。いつしか、本や漫画を読む心の余裕もなくなった麦の「パズドラしかやる気しないの」というセリフはものすごく刺さります・・・
だんだんとすれ違っていく2人の描写のリアルさに、「カップルでみると別れる」と話題にもなりました。映画のストーリーと自分たちの境遇をリンクさせてしまう人が多かったのでしょう。何かを得て、成長していくことは何かを失っていくことでもある。「大人になる過程での痛み」を見事に描ききった作品だと思います。
公開当時、映画館でこの作品をみた友人によると、エンドロールで隣に座っていた50代のマダムがボロ泣きしていて、自分が感動するよりもそちらの方が気になってしまったそう・・・かつての大恋愛を思い出してのことだったのでしょうか。切ないストーリーではありますが、こんな恋愛をしたい、恋をすることって素敵なんだと思わせてもくれる作品です。
また、20代前半で観るのと、20代の後半になってから観るのではまた違う印象になるかも? というのも、恋愛の経験や、同棲を経験しているかいないかでこの映画に描かれているリアルさの受け取り方が変わるからです。観たことのある人も、改めて観てみると自分の成長や、心の変化を感じられるかもしれないのでおすすめです!
今、生きていることは奇跡
Illustration_skpn
title:『余命10年』
【story】
20歳、大学生の茉莉は、数万人に1人という不治の病におかされ余命10年を宣告された。
生きることに執着しないよう、恋だけはしないことを心に決めていた。ところがある日、地元の同窓会で和人と出会い恋に落ちたことで、彼女の最後の10年は大きく変わっていく。
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SNSを中心に反響を呼んだ小坂流加の同名恋愛小説を、『新聞記者』の藤井道人監督が、小松菜奈と坂口健太郎のW主演で映画化した作品です。さらに、『君の名は。』『天気の子』など、新海誠監督のアニメーション映画で音楽を手がけてきた人気ロックバンドのRADWIMPSが、劇伴音楽の制作を担当しています。実写映画では今回が初だそう。じんわりと作品に溶け込んでいて作品の奥深さを表現していました。
ストーリーが刺さったこともさながら、映画館で観た人はみんなボロ泣きしたのでは・・?と思えるほど映像・音楽・演出の全てがマッチしていてとても素敵な作品でした。個人的に、恋愛映画という括りではかなり上位の作品に入ります。
その理由は、この作品が実話をもとにしているところにあります。映画のラスト、エンドロール前に「小坂流加に捧ぐ」とクレジットがあるのですが、原作者の小坂流加さんは大学卒業後に難病を患いながら執筆活動を行い、2007年に作家デビューしたのち、2017年に病状が悪化してこの世を去ったそうです。
みなさんは、もしも生きられる時間が決まっていたら、どう過ごしますか?私も、もし自分が茉莉と同じだったら、残りの時間をどう過ごすだろう・・と考えながら観ていました。10年間という時間で何を残したいと思うのか。「奇跡」ばかりが映画ではなく、「奇跡が起こらない結末」にこそリアリティーが溢れていて、等身大のストーリーに素直に寄り添えるのだと思います。
20代の人へのおすすめポイントをまとめると、まず「今、生きているだけで奇跡なんだ」ということを感じられること。そして、主人公がひたむきに生きる姿をみて「今を大切にしたい」と思えるところです。
環境の変化やライフイベントの多い20代に悩みはつきもの。日々に疲れてしまうこともあると思います。そんな中で、生きていられることに感謝をすることはあんまりないですよね。
この映画はそんな時に少し立ち止まって振り返るのにおすすめです。きっと観終わった時には自分の「今」に集中できるはず。
人生という名の旅
©2024「青春 18×2」Film Partners
title:『青春18×2 君へと続く道』
【story】
18年前の台湾。高校3年生のジミーはアルバイト先のカラオケショップで4歳上の日本人バックパッカー、アミと出会い、天真爛漫でどこかミステリアスな彼女に恋心を抱く。しかし突然アミの帰国が決まり、意気消沈するジミーにアミはある約束を提案する。
現在。IT会社の社長として成功した36歳のジミーは、仲間から社長の座を追われて挫折する。久々に帰郷したジミーは、かつてアミから受け取ったハガキを見つける。最後の仕事で東京への出張が決まっていたジミーは、アミとの約束を果たすべく東京から鎌倉・長野・新潟、そしてアミの故郷・福島へと向かうのだが…
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こちらは先ほどご紹介した『余命10年』の藤井道人が監督・脚本を手がけた日台合作のラブストーリー。ジミー・ライの紀行エッセイ「青春18×2 日本漫車流浪記」を映画化したもので、18年前の台湾と現在の日本を舞台に、国境と時を超えてつながる純度100%の青春恋愛映画です。
原作は、JRの「青春18きっぷ」での列車旅を台湾人の著者が綴った紀行本とのこと。かく言う私も、青春18きっぷを使って西日本を一周する10日間の旅に出たことがあり、初めての一人旅、初めて触れる知らない街のローカル線の雰囲気に心をうずかせていたなあ・・と本作に登場する台湾や日本の美しい風景も相まってノスタルジックな気持ちになりました。
若い学生の一人旅はよく、自分探しの旅と言われますが、何か新しいものに出会うための旅もあれば、心を癒すための旅だったり、人に会うための旅なんかもありますよね。
この作品では主人公のジミーが「この旅は自分探しではなく、自分の生きてきた道を確かめることだ」と話していて、「過去と向き合い、次に進む力を得る旅」というのも良いものだな、と思わされます。20代の皆さんは振り返るにはまだ早いかもしれないけれど、前に進む力がなくなったり、立ち止まってしまったりしたら、一度旅に出ることをおすすめします。
作中に出てくる「一休みは、次の長い旅に出るためのものだ」という言葉の通り、焦らずにゆっくりすることも大切。遠くには行けなくとも、日常から離れてプチ旅行をしてみるのも良いかもしれません。
今回は、「20代におすすめの恋愛映画」をテーマに3作品をご紹介しました。
恋愛映画と言いつつも、生をテーマにしていたり、一期一会の旅がテーマであったりと、どれも観終わった時に「今」を大切にしようと思える作品ばかりです。
それから、書いていて思ったのですが、自分が実際に旅に出ずとも、2時間という短い時間で様々な感情を生み出してくれる映画って、やっぱりすごく大きな力を持っているなと。1人でも多くの人に作品が届くと嬉しいなと思います。20代の皆さん、「今」という時間に向き合って素敵な人生を送っていきましょう!
『花束みたいな恋をした』
出演:菅田将暉、有村架純、清原果耶
Prime Videoで配信中
『余命十年』
『青春18×2 君へと続く道』
2024年 日本・台湾合作 123分
全国公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
郡司 恵(ぐんじ めぐみ)
学生時代にミニシアターでアルバイトをしていました。新卒でマネージャーとして映画館に勤めたのち、
現在はDo it Theaterでシアタープロデュースに携わっています。『あん』『人生フルーツ』『パターソン』など、日常にある幸せを思い出させてくれる作品が好き。
ついに、ナルトの全巻セットを買いました。青春すぎる。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
edit_Takehara Shizuka
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