CULTURE & LIFE
【2024年】30代・人生の転機で観たい、心に残る映画 -『世界の中心で、愛をさけぶ』『ヤング・アダルト・ニューヨーク』『キューティ・ブロンド』【土曜日のシネマサロン】
クリエイティブチーム Do it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。
第120回目のテーマは、「30代・人生の転機で観たい、心に残る映画」です。
Do it Theaterの阪実莉(さか みのり)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
今年30歳になります。周りと違っても、私は私で良いのでは? 枠にはまる必要なんてなし! なんて思いつつも、たまに落ち込むと友人たちを羨ましく思ってしまいます。歳をとって急に人生に差がついた感じがして、友人は幸せで、私は幸せではない、そんなことはないのに。あてのないこれからをじーっくり考えることが増えるものですね。
今回は、「30代・人生の転機で観たい、心に残る映画」をテーマに、様々な切り口で、自分の人生を考えるきっかけになる3作品、『世界の中心で、愛をさけぶ』『ヤング・アダルト・ニューヨーク』『キューティ・ブロンド』をご紹介します。
Index
人生をかけた大恋愛
Illustration_skpn
title:『世界の中心で、愛をさけぶ』
【story】
結婚を控えた朔太郎(大沢たかお)だが、ある日、婚約者の律子(柴咲コウ)が失踪した。行き先が四国だと分かった朔太郎は、自分の故郷でもある四国へ向かう。しかし、そこは彼の初恋の相手にして最愛の人・アキとの思い出が眠る場所でもあった。高校生の朔太郎=サク(森山未來)とアキ(長澤まさみ)は高校2年生の夏、もどかくしも淡い恋を育んでいた。声を録音しての交換日記や無人島への1泊旅行。ところが、約束されていたと思われた2人の明るい未来は、アキに降りかかった不治の病により一転してしまう。朔太郎が律子を探すために辿る四国での道程で、当時の思い出がまざまざと甦っていく。そこにはある「真実」が隠されていた…。
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片山恭一の同名ベストセラー小説を実写映画化し、2004年に公開するやいなや日本中に“セカチュー”ブームを巻き起こした本作。学生時代の初恋相手アキを亡くした朔太郎が、彼女との思い出と向き合いながらも、成人後には新たな未来へと踏み出している様子を描く、切ない純愛ラブストーリーです。
30代の方は、学生時代に観たことがある方も多いのではないでしょうか。
朔太郎の人生を賭けるほどの大恋愛を描く本作。私も小学生の時に観て、壮大で情熱的な彼らに憧れたものです。ただ、年齢を重ねていくと、いつしか憧れどころか彼らに自分を重ねられなくなってしまうものですね。以前連載でご紹介したNetflix作品の『First Love 初恋』もそうでした。
学生時代から大人ヘと跨ぐ大恋愛はしてこなかったし、大人になると、いつしか純粋な気持ちのみではパートナーと出会えなくなります。職業も、趣味も、どんな友人がいるのか、自宅は都会派?郊外派?なんて、思いつくだけでどんどん出てきてしまいます。自分にもそれが求められているところは一度棚に置いてしまうのですが(笑)。恋愛を始める前に、越えなければいけないハードルがいくつもある感覚でしょうか…。
でも、大人はそれが楽しいのです。パートナーは人生をシェアする相手で、価値観が違う相手だと、自分自身も変わっていける。ハードルを越えたいと思える相手を探す嗅覚も養える気がしています。
とはいえ憧れはずっと消えないもので、恋愛が人生の中心であってもよかったのでは?と、自分自身を思い返すこともあります。そんな気づきをくれる作品です。一度観たことがある方もぜひチェックしてみてください。
年齢が異なる2組の夫婦の価値観を描く
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title:『ヤング・アダルト・ニューヨーク』
【story】
ジョシュとコーネリアは、ミドルエイジの夫婦。ドキュメンタリー映画監督のジョシュは、8年も新作を完成しておらず、アートスクールの講師をしている。いつの間にか人生にも夫婦にも、何かが欠けてしまったと感じていた。
そんな時、20代のカップル、ジェイミーとダービーと知り合い、クリエイティブに生きる彼らから刺激を受ける。時代に乗り遅れたくないとSNSに縛られる自分たちと違って、レコードやビデオテープなどレトロなカルチャーを愛し、インスピレーションの沸くまま映像を撮ったりイベントを開催したりする彼らと付き合ううちに、2人は再びエネルギーを取り戻していく。しかし、ジェイミーの映画作りに巻き込まれ、ジョシュ自身の仕事はすっかり停滞。やがてジェイミーに利用されていると思い始めるジョシュはコーネリアとの夫婦関係もぎくしゃくし始める…。
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『フランシス・ハ』のノア・バームバック監督が、ニューヨーク・ブルックリンを舞台に、世代の異なる2組のカップルの交流と友情を描く作品。2組の差を描くのもそうですが、自分にとっての家族や人生のあり方を考えさせられる作品です。
ジェイミーとダービー、若い2人のバイタリティとアグレッシブさ。これは大人になるにつれて失ってしまったものかもしれません。日常だとついつい自分の生活ルーティンにこもってしまいます。挑戦よりも安定。
ただ、一方でアグレッシブさと交換に、ポジティブな「覚悟」を手にしている気がしています。何が起きても大丈夫、なんとかなる。なんなら話のネタにしてやろう! と。年齢を重ねるにつれて、心の安全性が担保されていくものです。ジョシュとコーネリアが若い2人に刺激されて、臆せず新たなカルチャーに踏み込む時もそんな覚悟を感じました。
若かりし頃と同じ環境でチャレンジをしなければいけない時、この映画をよく思い出します。ポジティブな「覚悟」を手に入れた30代、いっそ異なる環境に自分から飛び込んで人生を楽しむ、というのも良いですね。
シーンを選ばず気軽に観られる作品なので、気になった方はぜひご覧ください。ジェイミーとダービーの素敵なマインドにも共感しつつ、ジョシュとコーネリアに背中を押してもらえますよ。
自分の人生に勝ち続ける、憧れのキャリアウーマン
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title:『キューティ・ブロンド』
【story】
大学の社交クラブで会長を務めるブロンド美女のエルは、政治家志望の恋人ワーナーに「ブロンド女性は議員の妻にふさわしくない」という理由で振られてしまう。ワーナーがハーバード大学のロースクールに進学すると知ったエルは、同じロースクールに進学して認めてもらおうと一念発起。猛勉強の末に難関試験を突破する。しかし入学後もブロンドの髪や派手な服装のせいで周囲に冷たくされる彼女は、負けん気で困難を乗り越え弁護士を目指す。
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言わずと知れた、女子憧れ映画『キューティ・ブロンド』。恋に勉強に全力投球するサクセスストーリーです。エルの不屈な精神と、恋愛も仕事も常に妥協しない姿勢には感服します。
どんなことにも勝ちつづけようとする20代も楽しかったですが、大人になると負け越しも良いのでは、と思えます。わざと負けることはしたくないし、できる限り勝ち続けたいけれど、負けた時の挫折から学べることは勝つよりも大きい。本作を大人になってから観て、ふと気づきました。
取り繕いや、自分自身への過度な応援は不要。負けそうなときは、次に勝つために負けたらいい。エルは、わかりやすく「強さ」を体現してくれて、それにかつては憧れていましたが、負けて次に備える、「強さ」もあります。次の勝負への土台づくりをして、次で本質的に勝てればいいのです。
懐かしさはありますが、大人になってから観直すと新たな発見や自分自身を考えるきっかけになる作品ですよ。気分が上がることは間違いなしです!
今回は、「30代・人生の転機で観たい、心に残る映画」をテーマに、『世界の中心で、愛をさけぶ』『ヤング・アダルト・ニューヨーク』『キューティ・ブロンド』をご紹介しました。若い頃は歳をとることが億劫でしたが、実際に生きてみるとできることも増え、感受性も豊かになり、とても楽しいものですね。人生を楽しんでいるぞ! と1番感じられるのは今。今回ご紹介した作品等で気づきを得て背中を押してもらいながら、30代を楽しんでいきましょう!
『ヤング・アダルト・ニューヨーク』
2014年 アメリカ 97分
Blu-ray:5,170円(税込)
販売元:キノフィルムズ
『キューティ・ブロンド』
2001年 アメリカ 96分
U-NEXTで配信中
阪実莉(さか みのり)
北海道札幌市出身。学生時代は、ドキュメンタリーと心理学を専攻。
野外上映・空間演出の分野で活動したのち、現在はDo it Theaterでアートディレクター・プロデューサーをしています。
人生のバイブル作品は映画『あの頃ペニー・レインと』、漫画『NANA』。急に昨年からアグレッシブマインドになりました。
一度は生まれた国ではない場所に住んでみたい、と密かに思っています。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
edit_Takehara Shizuka
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