CULTURE & LIFE
【2024年】自分らしいライフスタイルとは?自分と向き合える映画 -『ノマドランド』『TOMORROW パーマネントライフを探して』『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』【土曜日のシネマサロン】
クリエイティブチーム Do it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。
第112回目のテーマは、「自分らしいライフスタイルとは?自分と向き合える映画」です。
Do it Theaterの阪実莉(さか みのり)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
年が明けて少し時間が経ち、2024年にも慣れてきましたね。1月は本を読んだり、部屋の環境を整えたり、怒涛の12月よりもスローな生活を心がけている方も多いのではないでしょうか。今回は、「自分らしいライフスタイルとは?自分と向き合える映画」をテーマに、『ノマドランド』『TOMORROW パーマネントライフを探して』『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』の3作品をご紹介します。
Index
“現代のノマド”として路上に暮らす生活者たちの生き様を描く
Illustration_skpn
title:『ノマドランド』
【story】
ネバダ州の企業城下町エンパイアに暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックのあおりを受けて長年住んでいた家を失ってしまう。そんな彼女の選択は、キャンピングカーに全ての思い出を詰め込んで、車上生活者“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。その日暮らしを続けながら仲間たちと出会い、毎日を精一杯に生きながら、自由で誇り高い旅を続けていく。
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オスカー女優のフランシス・マクドーマンドが主演を務め、“現代のノマド(遊牧民)”としてアメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。第77回ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞、第45回トロント国際映画祭でも最高賞の観客賞を受賞しました。
正直、路上生活なんて…と思っていましたが、自由を求める「ノマド」と自分たちを称して生きる彼女たちの誇り高い信念を感じ、ガラッと考え方が変わりました。もはや、これがあるべき人間の姿なのでは、と思わせられてしまうくらい。一辺倒に人間の生き方への良し悪しなどなく、価値観を誰かに合わせる必要もない。ロマンを探し求めるパワフルさもありながら、悟っているような達観した彼女の生き様にグッときました。
また、ロードムービーならではの合間合間で登場する大自然の映像美も、昂った感情をさらに盛り上げてくれます。自身のライフスタイルを考えさせられる、自分探し旅行へ行ったような気持ちになれる作品です。金獅子賞を取ったのも納得の良作ですよ。
自分らしいライフスタイルを探して旅をする
title:『TOMORROW パーマネントライフを探して』
【story】
2012年、権威のある総合学術誌『ネイチャー』にて発表された21人の科学者たちによる論文が世界に衝撃を与えた。それは、現在のライフスタイルを続けた場合、遠くない将来に人類が絶滅する恐れがあるというもの。その警告に危機感を抱いたフランス人女優メラニー・ロランは、活動家・ジャーナリストのシリル・ディオンと共に、地球を守るために今の私たちができることを求めて、農業やエネルギー、経済、民主主義、教育といった分野で“持続可能な新しい暮らしを始めている人々”に会いに旅に出る。
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フランス人女優のメラニー・ロランが自身で監督を務め、旅をするドキュメンタリー作品。2012年の論文発表時、妊娠中だったロランは、息子の生活する時代に食料と水はあるのか?と考え、漠然と何かに行動を急がされ旅を始めます。近年よく耳にする「持続可能な暮らし」。それは実際にはどんな暮らしなのか、そもそも存在しうるのか? 等身大の私たちのような疑問をもちながら、様々な人々に出会い、驚き、触れる様子が描かれています。
思いもよらぬ新しい考えに影響を受け、少しずつ自身の考え方も変わっていく。ライフスタイルの変化といっても、信念が変わったり、一行動をまずは実践してみたりとそれは様々な粒度で存在するもので、必ずしも変わらなきゃいけないわけでもない。ただ、自分らしいスタイルの模索をすることにおいて、ヒントになりうる作品かなと思います。
自分の人生観や生き様を考えつつも、人間としての責務に触れるような力強さと、未来へのポジティブなエネルギーを感じる映画です。
NYファッションアイコンである世界最高齢のインフルエンサーを追う
Illustration_skpn
title:『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』
【story】
NYパークアベニューの自宅で、ハイブランドのジャケットに、ヴィンテージアクセサリーや民族衣装を合わせ、即興でコーディネイトを披露するアイリス・アプフェル。1950年代からインテリアデザイナーとして活躍し、夫と設立したテキスタイル会社も成功し、美術館やホワイトハウスの内装を任され、ジャクリーン・ケネディを顧客に持つキャリアの持ち主。2005年にメトロポリタン美術館で開催された彼女の膨大なクチュール・コレクションの集大成となる展示は大きな反響を呼び、ファッション誌など様々な出版物で特集された。展覧会や老舗百貨店であるバーグドルフ・グッドマンでのディスプレイ企画、売り切れ続出するテレビショッピングなどの舞台裏に潜入し、自由で楽しく生きることとサクセスを両立させたアイリスの魅力に迫る。
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ファッションアイコンとしてNYカルチャーシーンに影響を与え続ける最高齢のインフルエンサー、94歳のアイリス・アプフェルの成功の秘訣や魅力に迫ったドキュメンタリー。
自分が良い、と思ったものは素直に愛して楽しみ、自分のスタイルとして受け入れる。
人として、ましてや女性としての括りでもなく、あくまでも“自分自身”の幸せを大切にする彼女の姿勢に見習うべき部分が沢山ありました。人間力とでもいうのでしょうか? 彼女の芯の強さ、人間としての魅力の豊満さに惹かれました。
本作では名言も多数登場するのですが、特に『努力して魅力を身につける。いろんな事を学び、個性を磨く。味のある人間になれるし、歳をとっても変わらない。美人でなくて結構。』この言葉はしばらく心に響きそうです。ユーモラスで好奇心旺盛な彼女ならではの、ドラマティックな人生を知って、こんな生き方もあるのか・・・と圧倒されてしまいつつも、人生の主人公は常に自分。レジェンドとも称される彼女の生き様を全身に浴び、自身を考える際の一つの要素として心の引き出しにしまっておきたくなる作品です。
今回は「自分らしいライフスタイルとは?自分と向き合える映画」をテーマに、『ノマドランド』『TOMORROW パーマネントライフを探して』『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』の3作品を紹介しました。自身のライフスタイルを模索するきっかけになったり、はたまた他人の信念に触れられたりと、自分自身に向き合う際にヒントとなってくれそうな映画たちです。
私はこの年明け、海外に滞在していたのですが、普段は行かないところを訪れ、違う文化に触れることで、「いまの私、この生き方でいいのかな?」と自身に問いかける場面が何度かありました。一度しか出会えない、感じられない感情を素直に捉え、自分を見直してみても良いのかもと思いながらこの記事を書いています。変化に臆さず、しなやかな気持ちで2024年をスタートしたいですね。
『TOMORROW パーマネントライフを探して』
2015年 フランス 120分
発売元:ミッドシップ 販売元:紀伊國屋書店
DVD絶賛発売中&配信中
『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』
2014年 アメリカ 80分
阪実莉(さか みのり)
北海道札幌市出身。学生時代は、ドキュメンタリーと心理学を専攻。野外上映・空間演出の分野で活動したのち、現在はDo it Theaterでアートディレクター・
プロデューサーをしています。人生のバイブル作品は映画『あの頃ペニー・レインと』、漫画『NANA』。
人間国宝である106歳のタトゥーイストへ会いにフィリピンの山奥に行ってきました。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
edit_Takehara Shizuka
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