CULTURE & LIFE
クリエイティブチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第102回目のテーマは「大人も楽しめる、夏に想いを馳せる映画」です。
Do it Theaterの洲崎真紀子(すさきまきこ)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
今回のテーマは「大人も楽しめる、夏に想いを馳せる映画」ということで、『いけちゃんとぼく』『藍色夏恋』『クリクリのいた夏』の3作品をセレクトしました。まだまだ暑い日が続きそうですが、8月に入って夏も後半戦。映画を観ながら夏の思い出に浸ってみるのも、いいものです。ぜひ、チェックしてみてください。
Index
子どもでいられた最後の夏を、覚えていますか?
Illustration_skpn
title:『いけちゃんとぼく』
【story】
小学生のヨシオのそばには、いつも“いけちゃん”がいた。いけちゃんは、色も形も変幻自在の不思議な生き物で、ヨシオにしか見えない。お父さんが亡くなった時やいじめっ子と喧嘩して負けた時、どんな時もヨシオの気持ちに寄り添い、支えてくれた。ある夏、少年から青年へとたくましく成長したヨシオは、いけちゃんの姿が徐々に見えなくなってくる。
* * * * * * * * * * * * * * * *
漫画家・西原理恵子の同名絵本を実写映画化した本作。ひと夏の出来事によって成長する少年の物語なのですが、過ぎてゆく子ども時代と夏という季節がマッチしていて、グッときます。子どもが子どもでいられる時間は案外短くて、あっという間に大人になっていくんですね。主人公ヨシオに自分の幼少期を重ねて観るのはもちろん、ヨシオを見守る母親やいけちゃんの目線で観るのもおすすめです。あっという間に終わってしまう夏休みのように、駆け足で大人になっていく子ども。その成長をいつも見守ってくれている大きな愛に気づいて、きっと涙が溢れるはず。
さすがの表現力でCGのいけちゃんに命を吹き込んでいるのは、蒼井優。なんとも愛くるしい不思議な生き物に、感動させられますよ。
台湾青春映画のマスターピース
Illustration_skpn
title:『藍色夏恋』
【story】
女子高生のモンは、親友のユエチェンから恋愛相談を受けていた。ある日、モンはユエチェンに頼まれて、彼女が想いを寄せている水泳部のチャンにラブレターを渡す。しかし、チャンが好きになったのは、ユエチェンではなくモンだった。最初は相手にしないようにしていたモンだが、どんなに突き放してもひたむきに想いを伝えてくるチャンに、次第に心を開いていく。けれど、モンには秘密があって…。
* * * * * * * * * * * * * * * *
続いては、2002年に台湾で製作・公開され、大ヒットを記録した青春ラブストーリーをご紹介します。日本でも多くのファンを生んだ作品で、2018年にはデジタルリマスター版でリバイバル上映もされました。
高校生男女が繰り広げる恋模様に、季節は夏ということで、やっぱり外せないのが「自転車」と「夜のプール」ですよね!ひと気がない夜のプールに忍び込んで、キラキラ揺れる水面を一緒に見たら恋がはじまるし、自転車に乗って風を切れば、好きが加速するもの!(個人の見解です。笑) 恋にまっすぐで、不器用だけど一生懸命な姿が、眩しくてたまりません。その一方で、思春期の複雑で繊細な心情が、丁寧かつリアルに描かれているのもポイントです。ちょっと心がチクっとするあの感じこそ、青春という気がします。
切ないながらも、爽やかさがギュっと詰め込まれたラストシーンも見逃せません。個人的には、夏に自転車を漕いでいると思い出す神シーンとなっています。
あの頃の夏は、永遠。
Illustration_skpn
title:『クリクリのいた夏』
【story】
1930年代初頭。フランス郊外の沼地に住むガリスと隣人のリトンは、その日暮らしの生活をしていた。大酒飲みで厄介者のリトンは、面倒見が良く誠実なガリスにいつも助けられてばかり。リトンの末娘クリクリも、ガリスによく懐いていた。お金はなくても、満ち足りた日々を過ごしていた彼らだったが、リトンが起こした事件のせいで幸せな日々に不穏な影が忍び寄る。
* * * * * * * * * * * * * * * *
最後にご紹介するのは、フランスの田舎の沼地で暮らす人々の交流を描いた、ヒューマンドラマ。かつてそこにあった豊かな暮らしが、大人になったクリクリの視点で語られます。
見どころは、ワイン片手に自由を謳歌する大人たちです。作中たびたび登場する、沼地の住人と友人たちがテーブルを囲んで乾杯するシーン。何気ない日常の一コマなのですが、みんな楽園にいるかのように幸せそうなのです。作中に描かれているのは四季折々のエピソードですが、春から夏にかけてのシーンが特に美しくて、降り注ぐ強い陽射し、小鳥のさえずりに草木の擦れる音、気の置けない友人とのおしゃべりに笑い合う声…インドア派の筆者も「あぁ、こんなバカンスに憧れる!」と、うっとり夢心地になりました。
幸せな夏の記憶を永遠に脳内再生させたくなるような、ポエティックなエンディングも心に響きます。まだまだ夏の余韻に浸っていたい方に、おすすめですよ。
今回は「大人も楽しめる、夏に想いを馳せる映画」をテーマに、『いけちゃんとぼく』『藍色夏恋』『クリクリのいた夏』をご紹介しました。どれも「どこか懐かしくて、幸せな夏」を思い出させてくれる作品です。夏の終わりに、ノスタルジーに浸ることができるのも、大人ならでは。夏の思い出とともに、チェックしてみてください。
『いけちゃんとぼく』
『クリクリのいた夏』
1999年 フランス 115分
text :洲崎真紀子(すさきまきこ)
これまで興行会社やNPOで映画関連事業に携わる。現在は小さな娘と一緒に映画を楽しむ方法を模索する日々。
ウェス・アンダーソン監督の新作『アステロイド・シティ』(2023年9月1日公開)が楽しみです〜。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
edit_Takehara Shizuka
PICK UP !
-
( FASHION )そろそろアウターの出番?《ミルクフェド》のボアベストやキ...
-
( FASHION )重ねるだけで可愛い《ミー イッセイ ミヤケ》のボーダーニッ...
-
( FASHION )【FUDGE FRIEND】オフィシャルガールが2周年!個性豊かな4人...
-
( FASHION )【ルミネ・ニュウマン】センスの良い冬服が見つかるニューシ...
-
( FASHION )秋のお手本ジャケットスタイル3選。《ロペピクニック》の金ボ...
-
( FASHION )本日発売!『FUDGE』2024年11月号は『保存版!パリ大特集。 E...
-
( FASHION )パーカの中にも上にもシャツ!? 上級者な冬の重ね着スタイル【...
-
( FASHION )白T×ベイカーパンツを手抜きに見せないコツは?【FUDGE FRIEN...
RANKING
FUDGE CHOICE
人気のキーワード
PRESENT & EVENT
5月にスタートした、FUDGE.jpの読者限定イベント「オトナの部活動【ランニング部】」。スポーツの秋!ランニングの秋!ということで11月30日(土)に第4回目の開催決定。今回は〈 アロー 中目黒 〉を拠点に開催します。 […]
編集部から配信されるメールマガジンやプレミアム会員限定プレゼント、スペシャルイベントへの応募など特典が満載です。
無料でご登録いただけます。