CULTURE & LIFE
クリエイティブチームDo it Theater(ドゥイット・シアター)がテーマごとにおすすめの映画を3作品紹介する、連載《土曜日のシネマサロン》。第86回目のテーマは「年末こそ見たい、気持ちをデトックスさせる映画」です。
Do it Theaterの洲崎真紀子(すさきまきこ)です。この連載はDo it Theater女子部が様々な切り口のテーマで、おすすめ映画をリレー方式でご紹介しています。
2022年も残すところ、あとわずかとなりました。この時期になると、キラキラ光るイルミネーションに心ときめく一方で、あれもこれもやり残したような気がして焦ってしまったり、休日に家中掃除をしたり、年末年始の予定を考えたり…身も心もフル回転でせわしなくなりますよね。後悔や反省はそこそこに(ここが大事)、新しい年を前向きな気持ちで迎えたいものです。
さて今回は「年末こそ見たい、気持ちをデトックスさせる映画」をテーマに、『ワーキング・ガール』『星の旅人たち』『グランド・ブダペスト・ホテル』の3作品をセレクトしました。見たら自然と気持ちが前を向くような、心が軽くなる作品たちです。ぜひ年末に、チェックしてみてください。
Index
思わずガッツポーズ!待っているのは最高のラストシーン
Illustration_skpn
title:『ワーキング・ガール』
【story】
ニューヨークの証券会社で働くテスは、仕事はデキるのに学歴が原因で証券マンの養成コースから外されてしまい、悔しい思いをしていた。ボストンから転勤してきた上司キャサリンの秘書をすることになったある日、彼女にラジオ局買収の耳寄りな情報を提供して、買収の話がうまくいったら養成コースに入れてほしいと頼むテスだったが…
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まず最初にご紹介するのは、『卒業』『クローサー』の巨匠マイク・ニコルズ監督作品。仕事と恋を賭けた女性の闘いを描いた、サクセスストーリーです。
見た目は派手だけど、どことなく自信なさげで控えめな性格の主人公テス。でも実は人一倍努力家で、芯がしっかりした強い女性でもあります。信頼していた上司に裏切られた彼女が、目的のために少し大胆に行動を起こす姿に、勇気と感動をもらえるはず。
中でも、嫌な上司を打ち負かすシーンがとても痛快で、モヤモヤやイライラがたまった心をスッキリさせてくれます。スカッとする分、イラッとする場面もありますが、サクセスストーリーとして最高のエンディングが待っていますので、そこは存分にイラッとしていただきたいです(笑)。前半と後半でガラッと変わるテスのファッション、メイクや髪型も見逃せません。ぜひ注目して見てみてください。
亡き息子を想い歩く800キロ。
title:『星の旅人たち』
【story】
アメリカ人の眼科医トムは、ひとり息子のダニエルがピレネー山脈で嵐に遭遇して亡くなったと報せを受ける。キリスト教巡礼の地「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」を巡る旅を果たせなかった息子の弔いのため、ダニエルの遺品と遺灰を背負い、800キロの道を歩く決意をする。
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続いては、俳優でもある監督エミリオ・エステベスが、実父で名優のマーティン・シーンを主演に迎えて描くヒューマンドラマです。
亡くなった息子の弔いのためにはじめた旅。スタートした頃は、周りの巡礼者たちとどこか距離を置いて歩くトムの背中に、孤独と寂しさを感じずにはいられません。しかし、なんといってもロードムービー。仲間と出会い、ひょんなことから警察に捕まったり、荷物が盗まれるといったアクシデントにも見舞われます。そんな出来事を通して、トムの言動や表情が少しずつ柔らかく優しく変化していく様子に、心がスーッと浄化されるようなあたたかい気持ちにさせられるのです。
実際問題として800キロ歩くのは難しいけれど、映画で追体験するなら2時間ほど。スペイン北部ガリシア地方の牧歌的な風景や仲間とのあたたかな交流を見ているうちに、凝り固まってしまった心が解きほぐされます。頑張りすぎて、ちょっとお疲れ気味のときにおすすめの作品です。
どこもかしこも、おしゃれ!楽しい!面白い!
Illustration_skpn
title:『グランド・ブダペスト・ホテル』
【story】
ヨーロッパ随一の高級ホテルとして知られる「グランド・ブダペスト・ホテル」の名コンシェルジュ、グスタヴ・H。彼は究極のおもてなしを信条にしており、多くの客を虜にしていた。ある日、長年懇意にしていたマダムDが亡くなったことで、グスタヴとベルボーイのゼロは、彼女の莫大な遺産をめぐる争いに巻き込まれてしまう。
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最後にご紹介するのは、唯一無二のセンスで多くの映画ファンを魅了するウェス・アンダーソン監督が手がけた、ホテルが舞台のミステリーコメディです。
見どころは、なんといってもその世界観。色使いが印象的なホテルの内装や従業員の制服、ピンクと水色が可愛くて仕方ないケーキの箱など、小道具の細部までこだわって作り込まれています。加えてキャストも豪華なので(主演のレイフ・ファインズをはじめ、エドワード・ノートン、ジュード・ロウなど)、大好きな物が詰め込まれた宝箱みたいで、ずっと画面を眺めていたくなります。
ストーリー展開もウェス・アンダーソンワールド全開で、殺人事件にはじまり、刑務所からの大脱走に逃避行…と、一瞬たりとも観客を退屈させません。映画好きでもそうでなくても、きっと満足できる一作です。一年の締めくくり、「頑張った自分へのご褒美」に、心を満たしてしてくれる映画で自分を労ってみるのもいいかもしれませんよ。
今回は、スッキリ系の『ワーキング・ガール』、癒し系の『星の旅人たち』、ご褒美系の『グランド・ブダペスト・ホテル』と、それぞれ異なるアプローチで気持ちをデトックスさせてくれる映画をご紹介しました。やり残したことを考えるのもほどほどに、気持ちを切り替えて、前を向いて新たな年を迎えられますように。ぜひ年末に、チェックしてみてください。
発売元:アルバトロス株式会社
DVD¥3800
『グランド・ブダペスト・ホテル』
text :洲崎真紀子(すさきまきこ)(Do it Theater)
これまで興行会社やNPOで映画関連事業に携わる。現在は小さな娘と一緒に映画を楽しむ方法を模索する日々。2022年の映画納めを『THE FIRST SLAM DUNK』にしようと思います。
●Do it Theater(ドゥイット・シアター)
“あたらしいシーンは、Theaterからはじまる”をテーマに、シアター体験を作り出すプロデュース&クリエティブチーム。FUDGE主宰の「Holiday Circus(ホリデーサーカス)」ではコンテンツクリエイションとして参加。また 累計5万人以上が来場した野外シアター「品川オープンシアター」や横浜赤レンガ倉庫・マリンアンドウォークヨコハマなど5会場同時開催の「SEASIDE CINEMA」、ミニシアター支援を目的とし全国5箇所でキャラバン開催したクラウドファンディングプロジェクト「ドライブインシアター2020」など、映画を観るだけではない、総合演出された新しいスタイルのシアター体験を全国に作り出しているチームです。
www.ditjapan.com
design_Koinuma Kenichi
edit_Takehara Shizuka
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