ONKUL

「だって何にでもさ、ときめけるじゃん!」

インタビューをしている途中、サラリ。と言われた瞬間。
つやつやのネーブルオレンジに齧りついた時のような、鮮明な感覚が湧いてきた。

ニッ!と笑う彼女の瞳は、少女のように輝く。

東京都内を中心に活躍される、フラワー・アーティストのFumikaさんは、都内あちこちの、商業施設や飲食店、お祝い事の演出や企業広告の装花・装飾などを手がけている。
装花だけではなく、キャンドル製作や、フードコーディネートもするのだそう。

大きなバンに作品や道具をどっさり積み込み、自ら運転しながら都内を駆ける。
大ぶりの枝葉や花を、どん!と担いで、そのまま高層ビルのエレベーターにも乗り込む。
そんな彼女だ。そんじょそこらの、キレイなだけの、装花を造るわけがない。

 

「脳で考えたら終わるから(笑)」

元々は、花とは関わりの少ない仕事をしていたそうだ。

愛犬の散歩中、”スタッフ募集”の張り紙のある花屋の前を通りがかり「ふーん」と。
しかし、その翌日には履歴書を持って、応募していた。

「未経験だけど、何故か採用されてね。すっごく忙しいお店でさ。花の名前も知らない、技術も無いまま、ひたすらに花束を作る、ってところから始まったの。すぐに行列ができちゃうんだよ。だから最初から、自分の感覚のみで作っていくしかなくて。この色とあの色が可愛い…組み合わせちゃえ!っていう感覚と、花のカタチをみて、角度をつけて…っていう、見え方だけは意識して、どうしよう、って悩むヒマがなかったの」

無我夢中で。
元来、備わっていた感性を爆発させながら、ただひたすらに手を動かし花束を作る日々。
その中で、花の名前を覚え、活け方を覚え、あれよあれよと言う間に今に至る。

 

発言の通り、彼女が花を活ける時、手筋には一切の迷いがない。

スイスイ!スイスイ!と、呼吸のリズムに合わせて、躊躇うことなく、装飾を仕上げてゆく。2m近くある大作でも、ほんの数十分で仕上げてしまう。

「だって、脳で考えたら終わるし、怯むでしょ?できなかったらどうしよう、って。常に10件以上の装花の仕事があるから、じっくり考える時間はない。自分の感覚だけで、やる。ノリが大事!」

そう言って、彼女はまたニッ!と笑うのだけれど。

感性を仕事にすることに、悩んだり、苦しんだこともあるだろう。ただひたむきに、手を止めず、乗り越えてきたからこその理論であることが、言葉の端々からじんわりと伝わってくる。

潔く活けられた花々は、その体現。彼女そのもののように見えてくる。

 

「心を動かすことができたら、幸せなのよ」

Fumikaさんの作品は、素材の組み合わせや、挿し色の入れ方に特徴がある。
花を染めたり、帯で結ったり、ドライフラワーに原色の生花を当ててみたり。
カタチがカワイイから、と野菜の輪切りを忍ばせてみたり。

その発想は「毒感」とでも言おうか。

作品を観た人が、シャンパンを口にしたような、甘美な気持ちになったり。
鮮やかな色合わせに、花の間を泳いでいく小魚のような気分になったり。

「毒感」は絶妙なさじ加減で、観る者へ作用していく。

 

「心を動かすことができたなら、幸せなのよ。作品を観てさ、キレイ!とか、キモチワルイ!でも良いんだよ。その色やカタチを見て、感情が生まれている訳じゃん?それが、ときめきだから、ときめいてもらえることが嬉しいんだよね」

彼女自身は、空とか木々とかの自然が好きで、昆虫も大好きなのだと言う。
東京で、ほんの小さなそれらが目に止まる度に、いちいち「美しいなぁ」と、ときめいている。

作品に感じる「毒感」は、彼女の中で溜められ、じっくりと熟成された「ときめき」が原料になっているのではなかろうか。

 

「自分のことを信じられてるんだと思う」

 

「お花は、こだわって仕入れをしない。台風とかで用意が無い、とかもあるし。あえて面白いのは、馴染みの市場の人に、10万円分で私が好きそうな季節の花を用意して、って投げてみる。届いた花でやる笑。そうすると……すごい面白い!」

それが最も、「自分らしい作品」を産み出すことを知っているのだ。

「一所懸命デッサン描いてもさ、産地によって大きさ、色の違いがあるからその通りにはならないよ、だからその時間を取るのだったら、ヨガしたりだとか、良く寝て、自分を整える。そうすると運も整って強くなる。強運なんだと思っていれば、良い花が手元に来るから。例え良い花が来なかったとしても、作れるよ。雰囲気を作るんだよ!」

己を整えることに集中する。そして、場や花や素材と呼吸を合わせる。
そうしていれば、いつだって、どんなところであっても、彼女は彼女らしく創作をすることができるのだ。

 

 

Fumikaさんの作品をみたときは

東京の、特に都心ともなると情報が多すぎる。大きな広告、きらびやかな装飾、街ゆく人々は常態的にそれらを目にし、浴びている。「自分と向き合えるように」と、無機質なつくりのカフェやレストランが流行るのも、うなずける。

忙しない街中で、気づいて欲しい。
ひょんなところに「ずしり」と、素直な有機物として据えられた、Fumikaさんの作品に出会っていることに。

それを目にした時、私たちは考えず、感情を少しだけ、動かせば良い。
ときめきを含んだ毒感を、ヤバ。と、シンプルに楽しんで欲しい。

 

 

▶︎プロフィール

Fumika Nakazato.

・Instagtam: https://instagram.com/fumikagula?igshid=YmMyMTA2M2Y=

 

▶︎テキスト:小森さちこ

都内在住。散歩と郊外の低山登山がすき。銭湯とお蕎麦もすき。

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