ONKUL
世の中が大きく変わって、日常は戻ってきたけれど、まだまだ気軽に会いたい人には、会いにいけない。そんな世の中になったからこそ考える、本当に大切な人、自分が大事にしていきたいこと。
SNSで、気軽に想いを伝えられる時代。でもやっぱり、それだとなんだか味気なく感じてしまう。「あなたはわたしの大切な人です」という気持ちは、贈り物という形あるもので表現したくなるのです。
大切な人へ花束を贈るときのように「特別な気持ち」が伝わる。
今回は、私も大好きな地元宮崎のビールをご紹介します。
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こだわり抜いて行き着く、シンプルな世界
数年前、仕事もプライベートも線引きがなかったあの頃。
金曜日の夜は、オフィスの残業組に声をかけ、ふらりと夜の街へ立ち寄るのが定番コース。「一週間頑張ったご褒美に」と言い訳をして、何度目かもわからない乾杯をする。夜は更けていくのに、この楽しい時間は、いつまでも永遠に続くような気さえしていました。
そんな「自分へのご褒美」に選びたくなるクラフトビール「Novoru」。
白地に、琥珀色でホップとモルトのブーケが施されたラベルは、飾らずシンプル。なのに、ついつい目を奪われてしまいます。いつもの生ビールならジョッキでグイっといくところですが、「Novoru」を飲むときはきちんとグラスに。それだけで、普段とは違った特別感を演出することができます。
ゆっくりグラスに注ぐと、うっとり見とれるほど美しい淡い金色とご対面。真っ白な泡に向かって、小さな気泡たちがはじけています。
期待で高鳴る胸を抑えつつ、グラスに顔を近づけると、「本当にビール?」と思うほど上品で魅惑的な香り。コーヒーやワインを楽しむときのように、思わず息を深く吸い込んで確かめたくなります。
ビールが口に入るまでのその一瞬の間に、シトラスとフローラルの香りが目の前いっぱいに広がっていく。これが、ホップの香りです。
「僕のつくったビールが、その人の人生で初めて飲むクラフトビールだったらどうだろう?ということを常に考えています」と、Novoru Brewing代表の長田 崚さん。
「もしそれが、その人にとって美味しくないものだったら、その人のクラフトビール人生が始まらないかもしれないから。どんな人が飲んでも美味しいと思うゾーンをできるだけ広げてあげることが、僕たちの仕事。僕のビールをきっかけに、いろいろなクラフトビールと出会って欲しいんです」
「Novoru」は4.5%と低めのアルコール度数で、ライトボディーなのどごしが特徴のセッションIPA(インディアペールエール)スタイルのビール。その飲みやすさに驚くと同時に、雑味のないフレーバーには感動さえ覚えます。
ホップの香り、キレのあるのどごし、スッと消えていく苦み。すべてのバランスが1ミリのズレもなくぴったり計られたように整っていて、一口飲むと、またすぐに一口飲みたくなる。シンプルな味わいのビールなのに、どうしてこんなにも惹かれるんだろう?と、不思議です。
「本質的に、シンプルなものにこだわっているんです」と長田さんはいいます。
「ビール好きな人は、ホップの香りや苦みが好きな人もいるし、キレやのどごしが好きという人もいる。僕がつくるビールは、そのどちらも楽しんでもらいたいと思っています。だからこそ、バランスが大事です。ものづくりの世界では、こだわって、こだわって、一度複雑になって、そこを抜けるとシンプルな世界が待っている。『Novoru』は、めちゃめちゃこだわっているからこそ、あのシンプルさが出せているんです」
自分が見た世界を、身近な人たちにも見せてあげたい
長田さんがクラフトビールの世界にのめり込んだのは、学生時代、留学先のカナダで飲んだ一杯のビールがきっかけでした。これまで体感したことのなかったホップの爽やかな香りと、舌に残らない「きれいな苦み」に衝撃を受けます。
「カナダでは、パブのメニューにもスーパーにも、ズラリと数十種類ものビールが並んでいるんです。ビールってこんなに種類があるの?というのも、驚きでした。そこから自分好みのビールを見つけていくのも面白かった」
カナダのクラフトビール文化に触れ、長田さんは自身が体験した感動や、広がった世界を身近な人たちに伝えていきたいと思うようになったといいます。
「いいものって、家族や友達に教えたくなるじゃないですか。僕のビールづくりは、“こんな美味いビールあるんだよ!”とまわりに教えたいという気持ちが原点でした。知らない世界を見せてあげたい、なんていうのは大げさですけど。僕が体験したことを、みんなにもプレゼントしたかった。それを仕事に、そして生まれ育った宮崎で実現できるなら、最高だなって」
留学先で生涯の夢を見つけた長田さんは、帰国後、日本各地の醸造所で約5年間の修業を積みます。そして2022年、念願のブルワリーを地元宮崎で立ち上げたのです。
△ 2022年8月に宮崎駅前で開催されたクラフトビールのイベントでの一コマ
みんなに親しまれる、自然と愛されるビールをつくる
「Novoru」の初回製造分は、販売から間もなく完売となるほどの反響がありました。そのときのInstagramの投稿に、長田さんはこう綴ります。
―― 流行り廃りの激しいものではない、長く愛されるビールをつくりたい。だからこそ、分かる人にだけ分かればいいとは思っていません。シンプルに美味いビールを目指します。
この一文には、長田さんのビールづくりにかける信念が込められていました。
クラフトビールは、たくさんの種類があるからこそ面白い世界。飲みやすいものから、尖ったほど個性的なものまで様々です。その中から、自分好みの銘柄を見つけていくのも楽しみの一つ。
だからこそ、フラッグシップビールである「Novoru」には「個性を出して、インパクトはつけながらも、“ちゃんと”ビールとして美味しい」というブレない軸があるといいます。
「Novoru」をどんな風に楽しんでほしいですか?と尋ねると、「どんなシチュエーションにも合うビールをご用意するので、あとはみなさんの好きなときに、好きなように楽しんでもらえれば」と長田さん。
「一人でも、仲間と一緒でも。昼でも、夜でも。ハッピーなときも、落ち込んでいるときも。どんなときでも選んでもらえるようなビールをつくっていきます」と語ってくれました。
流れていく日常に寄り添ってくれる、ちょっとだけ特別なビール
家族が増えて、子どもが中心の生活になった今。
金曜日の夜を過ごす場所は、賑やかな繁華街から、静かになったダイニングになりました。ちょっといいおつまみと、グラスには「Novoru」。向かいに座るパートナーと、まるで内緒話かのように小声で「乾杯」とつぶやいて、小さな怪獣が起きてしまわないように最大限の注意を払いながら、それぞれに思い思いの時間を堪能します。
何も考えずに、ただぼんやりするだけの、わたしが「わたし」でいられる時間。
あの頃のような華やかさはもうないけれど、何かを我慢しているわけでもない。誰かに制限されているわけでもない。それは、ごく自然に訪れた生活の変化であり、何よりわたし自身の選択でした。
「僕たちのビールを飲むことで、少しでも心が豊かになってほしい」
長田さんの思いとこだわりが詰まった「Novoru」は、日常の中のささやかで愛おしい時間にも寄り添い、「特別感」で彩ってくれるのです。
Novoru Brewing
online shop: https://shop.novorubrewing.com/
Instagram: @novorubrewing
text|Mai Nagao
宮崎県在住の会社員。夫と娘の3人暮らし。好きなものは、キャンプと青空の下で飲む昼ビール。
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