kiitos.
食べ物から得る栄養は、生きるために必要な活動力の源。食事が偏ると、エネルギー不足を引き起こし、疲労の根本の原因となることも。細胞の尺度から必要な栄養について見つめ直し、バイタリティを養う食べ方について考えてみよう。
エネルギー循環に関わる栄養素の中で、特に疲れに大きな影響を及ぼす4つの栄養素をピックアップ。 それぞれの役割と起こりうる症状を知り、自分の食生活と照らし合わせてみて。
Index
SPECIAL TEACHER
「みぞぐちクリニック」院長
溝口 徹先生
食事やサプリメントによって、細胞を構成し機能させる分子=栄養素のバランスを整え、人が本来持っている治癒力へアプローチする治療法・オーソモレキュラー栄養療法を実施。治療が難しいさまざまな疾患に対し多くの改善症例を持つ。
RECOMMENDED BOOKS
『「疲れ」がとれないのは 糖質が原因だった』
溝口 徹(青春出版社)
TYPE.1 糖質過多
◾️現代人はエネルギー生産を糖質に頼りすぎている
糖質・脂質・タンパク質は生命を維持する重要なエネルギー源として3大栄養素と言われています。身体や脳を動かすエネルギー源になるのはその中の脂質と糖質で、メインとして使われるのが最もパワーがある脂質。肝臓を経由することなく直接エネルギー源に。
3分の2程度をこれで担い、カバーしきれなくなった分を、残りの3分の1のエネルギーである糖質に頼るというのが本来の配分なのですが、糖質の多い食品にあふれた現代人の食生活では、エネルギー源を糖質が占める割合が高くなりやすい傾向に。疲れたとき、甘いものを摂ると元気になるという人は要注意。普段からエネルギー源を糖質に依存しすぎているために、糖質が足りなくなることで反動が起こっている可能性が考えられます。
✔︎3大栄養素の役割
①タンパク質
骨や筋肉、内臓など身体を構成し、ホルモンや酵素、脳の伝達物質として身体を働かせる。身体の材料を供給するのが本来の役割のため、もともとエネルギーとして使われることは想定されておらず、体内のエネルギーが不足した場合に補てんされる。
②糖質
非常時に使うエネルギー源。脂質からのエネルギー供給だけで追いつかなくなった場合に必要になる。燃えやすい性質のため体内で吸収されるスピードが速く、運動強度が高くなったときに貴重なエネルギーとして働き、瞬発力のある力を発生させる。
③脂質
通常時の活動に使う主なエネルギー。本来人の身体は脂質があれば十分に活動ができる。また、脂質由来のエネルギー・ケトン体は血中濃度が高くなると脳のエネルギー源として働く。一つひとつの細胞を仕切る細胞膜を形づくる役割も。
◾️糖化が疲労の原因に
血糖値が上がると身体の機能が低下し、疲れを引き起こします。これは糖化現象から証明することが可能。過剰に増えた糖は体内にあるタンパク質に取りつき、細胞を焦がして老化物質を生成。酵素やホルモンなどあらゆる機能を失わせることに。最終的には糖化の最終段階AGA(終末糖化産物)になる過程で活性酸素を発生させ、身体に大きな負担をかけてしまいます。
◾️糖質の過剰摂取が血糖値の乱れを招く
糖質を摂りすぎると起こる弊害のひとつに低血糖症(血糖値の乱高下)が挙げられます。糖質は肝臓や筋肉にグリコーゲンとしてエネルギーを貯蔵するのですが、糖質過多の食事を続けていると血糖中のブドウ糖が増え、食後の血糖値が跳ね上がりやすく。すると、膵臓からはインスリンが大量に分泌。この状態が続くと、インスリンは糖を脂肪に合成するため太りやすくなったり、少しの糖質を摂っただけでも血糖値が低い状態が続くというような現象も発生。
血糖値が安定している場合、脳に安定したブドウ糖が供給され、精神的にも安定する状態が続くのに対し、そのバランスが崩れると脳がエネルギー不足になります。そのため、自律神経を乱したり、強い疲労感を招くという症状も引き起こすことに……
TYPE.2 鉄不足
◾️酸素を運び、チトクローム酵素の活性に関わる
鉄は赤血球(ヘモグロビン)の構成成分で細胞に酸素を届けます。鉄が不足して赤血球の生成が妨げられると、めまい・倦怠感・力が出ないなどの貧血症状が現れ、疲労に深く関与。
ほかにもミトコンドリアの中でATPをつくるために必要なチトクローム酵素を働かせるときにも活躍。また、ビタミンCとともに脂肪の代謝に重要なカルニチンが体内で合成するうえでの材料にもなります。
鉄は代謝により1日あたり約1mg損失。これは成人男性が普通に食事をし、どうにかまかなわれる量です。月経によりさらに鉄を失う女性は必ず鉄不足の状態になってしまうため、肉や魚に含まれる吸収のよいヘム鉄を中心に摂取するよう心がけて。
✔︎TIPS 赤ちゃんと鉄の話
赤ちゃんは生後1年ほどの間、急速に身体が成長するため鉄が足りない状態に。母乳だけでは鉄をまかなえず、お腹の中にいる間にお母さんから鉄をもらい、十分に蓄えてから生まれてきます。しかし母体が鉄不足になると、胎児に必要な鉄が行き届かなくなってしまうのだそう。酸素を送るヘモグロビンが減少するため、酸素不足となり早産になる危険も。出産のみならず、女性のあらゆるライフステージにおいて、鉄は重要な栄養素であることを自覚しておきたいものです。
TYPE.3 ビタミンC不足
◾️脂肪を燃やす働きをするカルニチンの合成に必要
脳や身体を動かすための主要なエネルギー源である脂質を上手に使えないと、人は疲労を感じやすくなると言います。体内に蓄積された脂肪は脂肪分解酵素によって分解され、そのとき脂肪細胞から脂肪酸が出てきます。ビタミンCはこの脂肪酸を活用するために働くアミノ酸・カルニチンの合成を促進。ATPをつくるため脂肪酸をミトコンドリアに入れるとき、そのままの姿では通過することができず、カルニチンというバスに乗せるイメージです。ビタミンCはストレスによって失われる代表的なビタミンで忙しく働く女性に不足しがち。また、喫煙やハードな運動によって活性酸素が発生し、これを消去しようとビタミンCが消費されることも覚えておきましょう。
TYPE.4 ビタミンB群不足
◾️別名“代謝ビタミン”。エネルギーの生産に欠かせない
ビタミンB群を構成する栄養素は、あらゆる種類の酵素の補酵素(身体の中で起こるさまざまな化学反応によるエネルギーを減らし、スムーズに反応できるように整えるもの)として働きます。ビタミンB1は糖質の代謝に使われ、糖質過多になると失われていきます。ビタミンB2は脂質の代謝の補酵素。ビタミンB6はアミノ酸の吸収と代謝に利用され、パントテン酸はグリコースをエネルギーに変えるときに活躍します。ナイアシンは抗ストレスのはたらきを担うコルチゾールの合成に欠かせないなど、たくさんの役割が。ビタミンB群は動物性タンパクに多く含まれているため、菜食に傾きやすい人は不足しがちだと言います。肉と野菜はバランスよく摂取するよう意識しましょう。
illustration : Nao Oyama edit&text : Ai Watanabe re-edit:Yuri Iwata[press lab]
※kiitos. vol.21(2021年11月7発売)より抜粋。
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